第33話 王子の手紙
手紙回。
アレクシスから、手紙が届いた。
マリアが読み上げた。
『リーゼロッテへ。
宰相の裁判が、終わった。終身禁固刑。反逆罪として、国内最高の厳罰だ。
セレナの処遇について、相談がある。養女として連座の可能性はあるが、彼女は計画の阻止に協力した。——俺は、罰するべきではないと思っている。
お前の判断を、聞きたい。
それから、一つだけ。
お前の目のこと、記憶のこと、考えない日はない。俺が動かなかった八年の代償を、お前が払っている。その事実が、毎日、俺の胸を刺している。
もし、俺にできることがあるなら。——何でもする。
ただの王子の約束ではなく。——アレクシスとして。
追伸。ハインリッヒを、辺境から呼び戻した。騎士団長に復帰させた。遅かったが、できることをしている。
アレクシス』
マリアが読み終えて、しばらく、沈黙。
「リーゼロッテ様。お返事は」
「書いてちょうだい。口述するわ」
「はい」
リーゼは、深く息を吸った。
『アレクシス殿下。
セレナ嬢については、無罪を主張してください。彼女は被害者であり、協力者です。連座は不当です。もし宮廷に居場所がないなら、ヴェルナー領で引き受けます。以前、そう約束したので。
私の目と記憶のことは、殿下が気に病む必要は、ありません。これは、私が選んだ道の結果です。殿下のせいでは、ない。
——少しだけは、殿下のせいかもしれません。もう少し早く気づいていただけたら、もう少し、楽だったかもしれない。今更ですが。
殿下にできること。一つだけ、お願いが。
良い王に、なってください。
私が八年守った命を、この国のために使ってください。——それが、私にとって、一番の報いです。
リーゼロッテ・フォン・ヴェルナー
追伸。ハインリッヒ様の復帰、よかったですわ。遅くても、やらないよりはまし。——殿下にしては、上出来です』
「以上。——最後、少し意地悪かしら」
「いいえ。リーゼロッテ様らしくて、よいと思います」
マリアが、少し笑った。
ペンを置く音が、静かな部屋に落ちた。
「殿下にしては上出来です」、こういう一言で関係性わかる。もう恋愛じゃない、戦友。
ハインリッヒ復帰!言ったでしょ、戻ってくるって。




