第27話 森の死闘
アクション回。自分との戦いだった。
エルヴィンは、見張りの暗殺者を、音もなく制した。
喉を突いて意識を奪い、木に縛る。ランベルト騎士団の鍛錬は、伊達ではない。
「次は」
「北東に二百歩。泉のほとりに三人。合図役よ」
「了解」
エルヴィンが走り、リーゼは追った。走れない。歩くのがやっとだ。未来視で三秒先を視続けながら、どうにか進む。
泉のほとり。剣戟の音。短い悲鳴。木の葉が、落ちる。
リーゼには何も見えない。未来視の映像だけが、脳裏で動いている。
「左! 左から短剣!」
リーゼの声に、エルヴィンが反応する。振り返りざまに剣を薙いで、短剣を弾いた。
「ありがとう——視えているんですね、未来視で」
「ええ。あなたの、三秒先。——次、右後ろから蹴り!」
エルヴィンが、膝を落としてかわし、反撃。三人目が、倒れた。
「制圧、完了」
「合図は、出させなかった。本隊はまだ動いていない」
「位置は」
「北の尾根の手前。十五人。弓五、剣士七、——魔術師が、三」
「十五——僕一人では、無理です」
「残りを呼んで。東の林道で、待機しているはず」
エルヴィンが口笛を鳴らした。森に、独特の音が通る。
数分で、七人の騎士が合流した。
「エルヴィン様」
「これから尾根に行く。敵は十五。弓と、魔術師がいる。正面からの突入は——」
「不要ですわ」
リーゼが、割り込んだ。
「正面は矢の雨。迂回して背後も、読まれています。魔術師が感知の術を張っているから」
「どうします」
「上から」
「上?」
「尾根の崖の上。弓の射程外、感知も届かない。崖を降りれば、本隊の真ん中に落ちます」
エルヴィンが、地形を思い描いた。
「……なるほど。だが、崖を降りるのは」
「危険。でも、エルヴィン様なら」
「買い被りすぎです」
「八年、暗殺者を分析してきた私が言うのですから、信じなさい」
エルヴィンが、笑った。緊張の中で、ふっと緩んだ笑い方。
「了解。行きます」
* * *
一方。
狩猟祭のメインルートでは、アレクシスとルートヴィヒが、罠に気づいていた。
「兄上。森の奥から、煙」
「陽動だ。あの方向に誘い込んで、伏兵で仕留める算段」
「行かないんですね」
「当然。——宰相本人は、どこだ」
「後方の馬車。指揮を取るため」
「よし。——ルートヴィヒ、頼みがある」
「何ですか」
「宰相の馬車へ行け。『計画は、うまくいっています』と、報告しろ」
「僕が? 裏切り者の演技を?」
「演技ではない。宰相は、お前が俺の側についたことを、まだ知らない。お前は、宰相の駒のはずだ。——もう少しだけ、その演技を続けてほしい」
ルートヴィヒは、少し考えて、頷いた。
「兄上。——僕は、演技が得意です。十五年、ずっとやってきましたから」
兄弟は、別れた。
それぞれの持ち場に、散った。
目見えないリーゼが未来視で3秒先を視てエルヴィンに指示出すの、冷静に考えると二人三脚バトル。
小説でアクション書くの、映像より100倍むずい。「わかりやすかった」って感想もらえたら泣きます。




