第22話 兄と弟
ルートヴィヒ回。この子、好きになってもらえると嬉しい。
アレクシスは、弟に会いに行った。
第二王子ルートヴィヒ。十五歳。三つ下の弟。
兄弟仲は、冷えていた。母親が違う。ルートヴィヒの母——第二妃は宰相派の貴族の娘で、弟は生まれた時から宰相の影にいた。
「兄上。珍しいですね、お訪ねいただくなんて」
ルートヴィヒの声は、ひんやりしていた。整った顔の下に、薄い陰が差している。
「話がある。二人で」
侍従を下がらせた。
「ルートヴィヒ。宰相から、何を吹き込まれている」
「何のことですか」
「隠すな。お前と宰相が定期的に会っているのは、調べがついている」
ルートヴィヒの目が、光った。
「兄上こそ。元婚約者と密会していらっしゃるそうで」
「それと、これは——」
「同じことでしょう。兄上には兄上の味方。僕には僕の味方。それだけのこと」
「宰相は、味方ではない。お前を利用しているだけだ」
「利用」
「俺を排除した後、お前を傀儡の王にするつもりだ」
ルートヴィヒが、笑った。冷たい笑い方だった。
「知っていますよ」
「……知っているのか」
「ええ。宰相が僕を使おうとしていることは。——でも、僕も宰相を使うつもりです。兄上を排除したあとで、宰相を切り捨て、実権を握る。それが、僕の計画です」
アレクシスは、絶句した。
「十五歳で、そんなことを」
「兄上は、十七歳で何をお考えでした? 婚約者に守られながら、何も知らずに、安穏と過ごしていらした」
その一言が、深く刺さった。
「……否定できない」
「でしょう。兄上は恵まれていた。だから甘い。——僕は、母上を通じて宰相の顔色を窺いながら育ちました。甘さは、とうに消えました」
アレクシスは、弟を見つめた。冷たい目の奥に、何かがある。怒り。それから——寂しさ。
「ルートヴィヒ。一つ、聞く」
「何ですか」
「宰相の計画が成って、俺が死んだとする。お前が王になった。宰相を切り捨てた。——その後、お前は何をしたい」
ルートヴィヒは、答えなかった。
長い沈黙。
やがて、初めて、十五歳の顔が覗いた。
「……わかりません」
「だろうな」
「兄上」
「ああ」
「僕は、本当は——王になりたくない」
声が、震えていた。
「でも、宰相はそうしろと言う。母上もそう言う。周りもそう言う。——僕の意志なんて、最初から、誰も聞いていない」
アレクシスは、弟の肩に手を置いた。
「……悪かった。俺は、兄として、お前のことを何も見ていなかった」
「今更ですよ」
「ああ、今更だ。——でも、今からでも遅くないと、ある人に教わった」
ルートヴィヒが、顔を上げた。
「リーゼロッテ嬢、ですか」
「……なぜ、わかる」
「兄上を変えられる人間は、あの方しかいません。宰相もそう言っていました。——だから、排除しようとしている」
アレクシスの血が、冷えた。
「ルートヴィヒ。頼む。宰相の計画には——」
「乗りません」
静かな声だった。
「兄上を殺してまで得る王座に、価値はない。——そう思えるくらいには、僕は、まだ壊れていないつもりです」
兄弟は、初めて、向き合った。
本当の意味で。
ルートヴィヒ、書いてるうちにどんどん好きになったキャラ。15歳で「兄上を殺してまで得る王座に、価値はない」って言える子。
今日は洗濯物干し忘れて生乾き。リーゼなら未来視で回避してた。




