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女王の華咲く日~新しい女王は六人の王配に愛されて華開く~  作者: リラックス夢土


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第168話 光主と氷室の寝不足の理由



「あら、この音は……?」



 美雨が就寝しようと準備をしていた時に宿泊している家の小窓に小さく何かが当たるような音が聞こえた。

 気になった美雨は小窓に近付き窓の外を見てみる。


 すると窓の外では小雨が降り出していた。

 どうやら小さな音は小粒の雨が窓に当たる音だったようだ。



「まあ、見て、野乃! 外は雨が降っているみたいよ!」


「え? 雨ですか? あら、本当に小雨が降っていますね」



 美雨に促されて窓の外を見た野乃も小雨が降っているのを確認した。



「王樹様は雨不足だと言っていたけどこの雨が続いて土族の水不足も解消されるといいわね」



 野乃には王樹から聞いた水不足の話はしてある。

 侍女である彼女は口が堅いので美雨も各部族に関することを野乃に話すようにしていた。


 美雨が悩んでいたことも野乃に相談して解決できたこともあったからだ。

 それだけ美雨は野乃を信頼しているので今回も土族の水不足問題について隠さずに伝えた。



「そうですね。しかしこの雨が降り続く保証はありませんから油断は禁物だと思いますが」



 美雨は小雨が降っていることを手放しに喜ぶが野乃は慎重な態度を崩さない。

 物事を冷静に見極めることができるのも優秀な侍女の証拠だ。


 野乃の言う通りだとは思うのだが美雨は少しでもこの雨が土族にとって恵みの雨になって欲しいと願う。

 水不足問題が解決すれば華天国の食糧危機を回避できるのだから。



「それにしても田畑に影響が出始めるほど雨不足だったのに美雨様が土族に来た初日に雨が降るなんて美雨様はまるで恵みの女神様のようですね」


「ええ! この雨は私が降らせた訳じゃないわ。きっとラーマ神様のおかげよ」



 小雨を降らせたのが己の光と水の王配だとは夢にも思わない美雨だ。



(きっとそうよ。ラーマ神様は華天国の全ての神様でもあるもの。氷室様だって雨雲は作れないって言ってたし。そういえば氷室様は水の気配を感じることができるって言ってたけど、同じ水族の野乃はこの雨の気配に気付かなかったのかしら……?)



「ねえ、野乃。ちょっと訊きたいことがあるのだけど」


「何でしょうか? 美雨様」


「水族って水の気配を感じることができるの? 氷室はできるみたいなんだけど、水族なら誰でも感じることができるのかなって思って」


「それは氷室様が霊力の強い方だから可能なんだと思いますよ。確かに他の部族の民よりは水族の者は水に関連する霊力を持つため水の気配に敏感かもしれませんが少なくとも私はこの雨が降る前兆は感じませんでしたわ」


「そうなのね」



(やっぱり氷室様の霊力が高いから起こる現象なのね。それに氷室様は海龍神を宿しているからそれぐらいできて当たり前なのかも)



「それより美雨様。そろそろ寝ませんと明日の土族の王配候補者たちとの顔合わせに寝不足のむくんだ顔で挑むことになってしまいますよ」


「分かったわ。もう寝るわよ」



 美雨は自分のベッドに横になり眠る前にラーマ神への感謝の祈りを捧げる。



(ラーマ神様。雨を降らせてくれて感謝いたします。明日は土の王配候補者たちとの顔合わせです。良き出会いがありますように)



 そう祈った美雨の脳裏に美しい女性の姿の道麻が浮かぶ。

 道麻も王配候補者なのだから明日の顔合わせで再会できるはずだ。



(道麻様が道麻さんだったなんて驚いたけど……もう一度、道麻様には会いたかったからちょっと嬉しいかも。道麻様って本当に美しい人だったなあ。氷室様も美しいけど氷室様とは違った美しさなのよね……)



 ベッドに入った美雨だったが道麻の姿が頭にチラつき完全に眠りにつくまで少し時間がかかってしまった。






『ねえ、アタシってどこか変なのかしら』


『フフフッ、貴方は変じゃないわよ。少し人と感性が違うだけ。だから貴方を私の……にしたんだもの』


『ありがとう。アタシは永遠に貴女の……よ』



「美雨様。朝ですよ。起きてください」



 野乃の声で美雨は目を覚ます。



「う~ん、もう朝なの……今のは……夢……?」



 何か夢を見ていた気がしたが思い出せない。



(なんか懐かしいような夢だったけど……)



「早く起きて支度してください、美雨様。朝食後に土の王配候補者との顔合わせがあるのですから」


「そうだったわね。きちんと準備しないとだわ」



 美雨は思い出せない夢の内容を思い出そうとすることを止めて野乃に手伝ってもらい準備をする。

 服装は朝食後にすぐに土の王配候補者との顔合わせがあるので「巫女服」を選んだ。


 そして族長の家に向かおうと家の扉を開けると昨夜の雨は上がり晴れていた。

 もう少し雨が降り続くことを願っていた美雨は少し残念な気持ちになる。



「美雨! おはよう!」


「おはようございます、美雨」



 自分の名前を呼ばれてそちらを見ると同じく族長の家に朝食を食べに行く途中の光主と氷室の二人がいた。

 しかし、美雨はすぐに二人の異変を感じる。二人ともなぜか疲れたような顔をしていたのだ。



「おはようございます、光主、氷室。あの、なんか疲れたような顔してますがよく眠れなかったのですか?」



 美雨が心配してそう声をかけると光主と氷室はお互いの顔を見合わせる。



「美雨。よくぞ聞いてくれました。この筋肉馬鹿が寝返りを打つ度にベッドから落ちるのでその音がうるさくて寝不足なのです」



 氷室は美雨に悲痛な表情で訴えてきた。



(ええ!? 光主様ってそんなに寝相が悪いの? 寝返りする度にベッドから落ちるってすごいことよね。氷室様が寝不足なのも仕方ないかも……)



「美雨。俺の話を聞いてくれよ。氷室の奴は寝ると歯ぎしりが酷くておかげで俺は熟睡できなくて寝不足なんだ」



(ええ!? 氷室様が酷い歯ぎしりで光主様は熟睡できなかったの? 氷室様が歯ぎしりする姿が想像できないんだけど……)



「私はそんな歯ぎしりなんかしませんよ、光主」


「そりゃ、寝てる本人は気付かないもんさ。それに俺だって寝返りの度にベッドから落ちるほど寝相は悪くねえよ」


「貴方だって本人の記憶が飛んでるだけでしょうが。まあ、そういうわけで美雨。私も光主も少し寝不足ですがそのうち慣れますので気にしないでください」



 二人の説明を聞きとりあえず美雨は二人が少し寝不足なことだけは理解した。

 そういう理由なら光主と氷室にそれぞれ一人部屋を与えたいが美雨の権限でできることではない。



「どうしてもというなら王樹様にもうひとつ家をお借りできないかご相談してみますけど……」


「いえ、土族にこれ以上我儘は言えませんから大丈夫ですよ、美雨」


「ああ、俺も氷室もお互いに慣れるから大丈夫さ、美雨」



 二人が必要ないというならきっと大丈夫なのだろうと美雨は判断した。

 氷室の言葉通り美雨もあまり土族に我儘は言いたくない。



「それならみんなで朝食を食べに族長様の家に行きましょう」



 美雨が歩き出すとその後ろを二人の王配がついて行く。

 そして美雨に聞こえない小さい言葉で罵り合う。



「雨を降らせるための作業で寝不足なのを美雨に誤魔化すことには賛成しますが私が歯ぎしりが酷いなんて言い過ぎではありませんか」


「氷室こそ俺が寝返りの度にベッドから落ちるほど寝相が悪いなんて言い過ぎだろうが」



 不毛な二人の王配たちの罵り合いに美雨が気付くことはない。




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