バトルロイヤル 21 ルビーVSマリア E
(あと一撃。)
その言葉が、互いの脳裏に刻まれていた。
足元のガラス片を踏む音さえ、いまは聞こえない。意識が研ぎ澄まされ、痛みも、恐怖も、ただ一点、敵の動きだけに集中している。
マリアは利き肩を撃ち抜かれた痛みに歯を食いしばりながら、ショットガンを背にしまい、ハンドガンを逆手に持ち直した。
「やるわね、ルビー」
思わず口に出た。ただ、相手の戦術と冷静さに対する、静かな尊敬だった。
ルビーもまた、脇に転がったままのハンドガンを取り直す。
(距離が、詰まっている。)
約五メートル。撃てば当たる。だがそれは相手も同じ。
この距離で先に撃ったほうが、後の反撃を受ける。
(だったら、撃たせる。)
マリアは崩れかけた壁を蹴って、右方向へ跳躍。ルビーは即座に左へ移動し、真横からの挟撃を避ける。
そして同時に、撃つ。
パンッ! パンッ!
弾丸は交差し、空気を裂きながら外れる。マリアの頬に弾痕がかすめ、血が一筋流れる。ルビーの肩にも火花が散るように痛みが走った。
その瞬間、両者が直線距離で息を殺してにらみ合う。
そして、マリアが踏み出す。
銃を構えながら、真正面から接近する。その姿は、まるで「撃て」と言っているようだった。
ルビーは迷った。
(このまま撃てば……殺せる。)
撃てば、確実に急所を狙える。
しかし再びルビーがためらった。次の瞬間マリアが突っ込んだ。
体当たりのような接近戦。互いの体がぶつかり合い、銃がこぼれ落ち、二人は地面に転がる。
拳と拳、膝と腹、頭突きさえ交えながら、野性のような格闘が始まる。銃ではなく、意思と肉体のぶつかり合い。まるで、感情そのものをぶつけているかのようだった。
「なぜ撃たなかった!?」
マリアが、叫ぶように吠える。
「撃てるはずないじゃない……!」
ルビーが叫ぶ。
その目には涙が溢れていた。




