その6「命を賭けて」
「とりあえず二人で連携しよう」
それが俺らの出した答えだった。敵は一人、軍の中でもガラの悪い、チンピラのようなやつだ。若干だが、太り気味といったところだ。一方俺らは、俺とアーサーの二人である。人数的には勝っているものの、相手はレベル5。俺らは二人ともレベル1。油断はできない戦いだ。むしろ、負ける可能性も高い。
キンッ!キンッ!と、森の中では鋭い金属音が響き、俺ら二人では、まるで歯が立たない相手ということがわかった。一方相手もこちらにダメージを与えられていない。なぜなら俺らは命を最優先としている。剣で受け流せそうな攻撃に対しても過剰なまでに回避に徹している。
それは、敵の力が計り知れないからである。だが、このままではらちがあかない。そうしている間にも、時間は刻々と進んでいるのである。
ここで俺は作戦を思いつく。今までは俺とアーサーで交互に攻撃し、また敵の攻撃を回避していた。
ここは二人同時に攻撃すればどうだろうか。また、この回避しまくるチキン戦法ではどうにもならなそうなので、多少の怪我は覚悟して、打って出るべきではなかろうか、と思った。
「少し距離をとるぞ!アーサーッ!」
「ハイッ!」
「猫と雑魚が…何しようとも俺ァの敵じゃァねェぜ!」
流石にカチンときた。雑魚なんて言われたからだ。だが、ここはその気持ちを抑える。
アーサーは猫との跳躍力で、後方に飛び上がった。俺は全力で駆けた。ヤツとは20メートルほど離れられただろうか。
ここで俺は簡単に作戦を説明した。敵に同時に攻撃を仕掛けること、多少の怪我も覚悟すること、だ。そしてヤツが迫ってくる。
「今だッ!」
俺は右、アーサーは左の地面を思い切り蹴り上げた。そしてヤツを挟むように位置どった。どうだろうか。
「ハッハッー!そんな挟み撃ち、通用すると思ったかァ!」
ヤツは叫ぶと同時に剣を持ち替えた。どうやら俺らが近づいたときに大振りするらしい。
だが、俺は走るスピードをゆるめなかった。大振り一回切られても、大振りにはスキが生まれる。その間に俺かアーサーが敵を倒せれば勝ちである。
俺は目を疑った。作戦は俺とアーサーが、同じスピードで、敵に突っ込む感じの挟み撃ちだったハズだ。それをアーサーは全速力で、敵に突っ込んだ。いや、正しくは敵の剣に。
「グハッ」
アーサーは血を吹いた。腹の中心に深々と剣が突き刺さっている。
「なんだ?コイツ。剣に突っ込んでくるとか、バカなのかァ!」
ヤバい。アーサーは死んでしまうだろう。どうすれば、俺は戸惑った。すると、
「天睛さん…今のうちに…コイツを。」
どうやらアーサーは、敵の剣を封じる為に敵の剣に突っ込み、自分の体に深々と突き刺したようだ。
「アーサー!お前のその『勇気』を!俺は無駄にしないッ!」
俺は今まで自分の命の安全を視野に入れた上で戦っていた。だが、アーサーは命を賭けた。俺は弱い。心も体も。だが、俺は変わりたい。持てる力を出し切って! 命を賭けて!
気づけば俺は「スキル」を発動していた。
「なんだ貴様ァ!体が!赤いぞッ!」
俺はスキル『剣技の鬼』を発動した。すると体が赤く、とても赤く変化した。名付けるなら、そう。〈鬼人モード〉といったところ。体からドンドン力が湧いてくる。変わりにHPは1なのだが。
俺の命を賭けた行動が合ってのことか、また剣は輝き出した。
−到達予想時間、残り???分−
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