雷光の将
「フィナリア。お前、こんな量の仕事を一人でこなしていたのか?」
軽はずみに手伝うと口にした俺を待っていたのは山積みされた書類の山だった。
フィナリアの仕事を手伝うと言ったのはいいが、慣れない事務仕事に俺はグロッキー寸前だ。
元の世界と違ってパソコンがないので全て、アナログなのがなおキツイ。
「これでも皆さんが協力してくれているのでだいぶ楽になっていますよ。クウヤさんも計算が早いので助かります」
根を上げそうになる俺に、フィナリアはそんなことを言った。
一応一般教養を一通り収めている俺の学力はこの世界でいえばかなり高い水準に入るらしく、書類仕事が出来るというだけで重宝されるのだとか。
「以前はこういった事務仕事はカーナイル様が行っていてくれたのですが、マトワール領を得たあたりでは私がする必要がありましたし、兵の編成や兵站の確保、作戦立案も担当しなければならなかったので」
「……そう言えばそうだったな」
現状、俺の仕事は軍備や兵糧に関する計算と、フィナリアが認可した案件に印を押すだけなので問題はない。
だが、その書類の量が膨大なので頭が痛くなっているのだ。
「クウヤさん。もう少しだけ協力をお願いします。後6日もすればカーナイル様がこちらにいらっしゃいますので」
「ん? カーナイルさんがここへ?」
俺の疑問に、フィナリアは仕事の手を止めずに話を続けた。
「はい。わたしたちは名目上カーナイル様の配下に当たりますので。現在この王城はカーナイル様のものとなっておりますから」
「あ、そういえばそうか」
最近あれこれありすぎてカーナイルのことをさっぱり忘れていた。
あれで事務仕事に関しては無類の才覚を発揮するそうなので、そうなればこの辺の仕事は全てお任せしてしまえるということだ。
「カーナイルさんが来たら、俺たちは何をすることになるんだ?」
「少なくとも私は帝国と魔族に備えて軍備の強化に努めることになりますね。今はサルラに任せていますし」
そう言ってフィナリアは書類の仕分けを続けていた。
サルラというのはマトワール領の獣人で、現在フィナリアの副官を務めていた獣人の女性である。
「帝国軍はいつごろ攻めてくると思う?」
「…何とも言えませんが、速ければ数日以内に攻めてくる可能性もありますね」
「そんなに早く!?」
フィナリアの言葉に、俺はそんな驚愕の声をあげた。
しかしフィナリアは当然とばかりに頷く。
「戦とは拙速を貴びます。優秀な指揮官ほど行動は迅速です。そうですね…もしドルガー将軍がその気になっていればとうにここへ攻め込んできていることかと思います」
「…あのオッサンか」
トリストスを正面からねじ伏せたドルガー将軍のことを思い出し、俺はそんなことを口にした。
そんな俺の一言に、フィナリアが仕事の手を止めて小さく吹きだした。
「どうかした?」
「いえ、ドルガー将軍のことをそんなふうに呼ぶのはクウヤさん位のものですので」
「そうなのか?」
フィナリアの一言に、俺は目を瞬かせる。
すぐに仕事を再開し、フィナリアは話を続ける。
「はい。ドルガー将軍は人間界の武人で知らぬ者なしと言われるほどの猛将です。それはクウヤさんもご存じなのでは?」
「…まあ、そこは否定できないな」
トリストスを圧倒してのけたドルガーの剣技は出鱈目の一言だった。
並みの魔族が相手でもあの人の敵ではないだろう。
「なら、なんであのオッサンは攻めてこないんだ?」
俺の質問に、フィナリアはしばし考えた後に口を開いた。
「…ドルガー将軍が軍の実権を握り切っていないため思うように動けないのか、未だに私たちを全力で倒すべき敵だと見定めていないかのどちらかでしょうか」
「なるほど」
要塞都市ヴァルシアで見た限りだと、オルバール皇帝はもとより他の連中もかなり腐った権力者という感じがした。
「あ!?」
オルバールのことを思い出して、俺は今更なことに気が付いた。
「どうかされましたか?」
「帝国って、今もフィナリアを狙っているんじゃあないのか?」
俺の指摘に、フィナリアは首を縦に振った。
「はい。間違いなく私を標的にしているでしょうね」
「なら、フィナリアが軍事を担当するのはまずいんじゃないか?」
フィナリアはこれからも指揮官として前線に赴くつもり満々だった。
しかしそれでは敵の火に油を注ぐような物である。
もし万が一フィナリアが捕虜にでもなったら…考えるのも嫌だった。
しかしそんな俺の懸念を、フィナリアは一蹴する。
「むしろ、私がここにいるからこそ囮として絶好なのです」
「…囮?」
フィナリアの言葉に、俺はおうむ返しにそう返答する。
それに対しフィナリアは首肯する。
「現在、父上がフォルシアンに連合軍参加を促しています」
「へ?」
突然フィナリアから言われたことに、俺は目を点にした。
そんな俺に対し、フィナリアは仕事の手を止めぬまま話を進める。
「いつまでも帝国とにらみ合いを続けていては、魔族が襲撃してきた際に対応することができません。いずれはこちらら帝国へ攻め込まなければならないのです。そのために必要なことなのです」
「…なるほど。フォルシアンが味方に付けば、帝国を三方向から攻められる」
フォルシアンを連合軍に抱き込んだ場合、帝国は北、西、南の三方向を囲まれることとなる。
戦略的なことに疎い俺でも、その有利はよく分かる。
「本来であれば、魔族に備えて人間界が一つにならなければならない状況なので、フォルシアンは遅かれ早かれ説得しなければなりません。そのためには、帝国の目がこちらに向いてくれている現状がいいのです。フォルシアンはこれまで我々人族との関わりを絶ってきた国家。恐らく時間がかかるため、私たちが帝国の的となり時間を稼ぐ必要があるのです」
「なるほど…」
フィナリアの説明を受け、俺は深く納得する。
フォルシアンは鎖国まがいのことをしている独立国。
簡単には連合に加わってはもらえないということか。
「でも、フィナリアが危ないことに変わりはないな」
「でしたら、クウヤさんが私を守ってください」
突然、悪戯っぽくフィナリアは俺に向かってそんなことを言った。
「……わかった」
驚き目を点にしながら、俺はそんな返答をした。
フィナリアがノーストンの王女だと知ってから、フィナリアはちょくちょくこんな悪戯を仕掛けてくる。
案外アルザスの言っていたお転婆というのも当たっているかもしれない。
「……クウヤさん。何か失礼なことを考えていませんか?」
「え、いや、別に」
そう言って俺は印を押す仕事に戻る。
フィナリアの視線が妙に痛い気がするのは気のせいだということにしておこう。
「さて、とりあえずこの書類の山を片付けるか」
「どうかされましたか? 突然やる気になりましたね」
「おう。まあな」
書類仕事に向かい合って誤魔化す俺を見て、フィナリアは怪訝な目をやめた。
その一週間後、王都へ到着したカーナイルに書類仕事を引き継ぎ、俺たちはリスタコメントス軍の面倒を見ることとなる。
そんな日々を半月程続けたある日、帝国の国境警備兵がリスタコメントスへ向かって進軍を始めたという報告が入って来た。
「国境警備軍?」
軍の訓練に立ち会っていた俺とフィナリアは、突然カーナイルの執務室に呼び出され、帝国軍がこちらへ向かって進軍しているとの報告を受ける。
その際に耳慣れない単語が出てきたので、俺はそんなことを口にしたのだ。
「国境警備軍というのは、帝国軍の一部隊のことですよクウヤ殿」
そう言って、カーナイルはフィナリアの方を向く。
カーナイルもその手の事は一通り把握しているのだが、フィナリアの方が俺のとの付き合いが長いため、フィナリアが説明した方が速いと考えたのだろう。
カーナイルの視線を受け、フィナリアは一度頷いて説明してくれた。
「国境警備軍というのは、過疎地になりやすい国境付近の魔物や盗賊を討伐し、国境近辺の安全を確保することを主な任務とする軍隊です」
「…そんな軍があったんだな」
帝国の国境は幾度か横断しているが、そのほとんどがファーレンベルクを用いて突破しているのでそんな部隊があることなど全く知らなかった。
そんな俺を尻目に、フィナリアは説明を続ける。
「帝都の方では辺境軍とも揶揄される彼らですが、その特性上、権力者の介入が張りにくく、常に魔物などの脅威と対峙しています。そのため、帝国軍の中ではとても実践経験の豊富な部隊といってもいいでしょう」
「……それはつまり、精鋭ってことか?」
俺の質問に、フィナリア、カーナイルの二人が揃って首肯する。
「本土から離れているため貴族たちも興味を示さないこの軍は、地位や身分を持ちこめません。あるのは徹底した実力主義のみです」
「そんな軍隊が、こちらを目指して進軍してきたとの情報が入ったのですよ」
「それは、何人くらいが、ですか?」
「報告によれば、およそ1万ですね」
カーナイルからもたらされた情報に、俺は内心で安堵のため息を吐く。
一応俺たちはリスタコメントス軍10万や帝国軍5万を相手にしたことがある。
その当時の俺たちの兵力は2万程度だったが、現在では6万以上に膨れ上がっている。
いくら精鋭とはいえ、1万程度であればどうにでもなると思っていた俺は、隣で厳しい表情を浮かべているフィナリアを見て眉をひそめた。
「フィナリア。どうかしたのか?」
そんな俺の質問に、フィナリアは顎に手を当てたまま難しそうに眉を寄せていた。
「カーナイル様。相手の指揮官はどなたか分かりますか?」
突然飛び出したそんな質問に、カーナイルは頷いた。
「そのことなのですが、敵の指揮官は南方方面部隊長のシルディア・グランガイス殿である可能性が高いとの報告が挙がっております」
「!!!」
カーナイルの一言に、フィナリアが驚愕の表情を浮かべる。
しかし俺にはなんでそんなに驚いているのかが全く分からなかった。
「その人は、有名人か何かなのか?」
そんな俺に、フィナリアは厳しい表情を浮かべたままこちらを向いた。
「シルディア様の名グランガイスというのは、ドルガー・グランガイス将軍の家名です。つまり、シルディエ殿は…」
「ドルガーの娘だってことか!?」
俺の一言に、再び二人が首肯する。
その事実に、俺は二人が何を気にしているのかを察した。
ドルガー将軍は単独でトリストスを真正面から打ち破り、ファーレンベルクの攻撃を真正面から受け止めるような武勇を持つような文字通りの怪物だ。
その娘であるというだけでも驚くには十分すぎる。
「…辺境軍に身を置いているってことは」
「はい。シルディエ様は、私と同じ女性の身でありながら、辺境軍の隊長まで上り詰めています。当然それはドルガー将軍の娘というだけで上り詰められるようなものではありません」
「そもそも将軍の威光を使いたければ辺境軍ではなく帝国の正規軍に所属すればいいだけの話です。シルディエ殿であればそれは十分に可能だったはずなのですが、彼女は辺境軍に所属しています。つまりは…」
「自分から望んで辺境軍に入って、実力でのし上がったと」
俺の答えに、再度二人が首肯する。
その肯定が示す意味を察し、俺はなぜ二人が悩んでいるのかを理解した。
「正直、シルディエ様率いる国境警備軍1万は、帝国軍5万をはるかに上回る脅威になるでしょう。恐らく、これまで以上に厳しい戦いになるかと思われます」
「…そんなにかよ」
「はい。シルディエ様は雷光の将と呼ばれ、雷魔法という稀有な魔法を扱う方です。リスタコメントスに来た時から私があこがれた…おそらくこの人間界最強の女性騎士です」
フィナリアはエルリオット軍10万と丸二日にわたって対峙しているし、まがいなりにも神児バストラングとも切り結んでいる。
そんなフィナリアが下した評価に、俺は恐ろしいものを感じた。
「ん? ちょっと待った。カーナイルさん。先ほど指揮官はシルディエの可能性が高いって言ってませんでしたか?」
カーナイルにしては曖昧な物言いだと思い、俺はそんな質問を口にした。
その質問に対し、カーナイルは頷いた。
「実は、敵軍の中にエベルス将軍の旗印を見たという報告が挙がっておりまして」
「……エベルス将軍が?」
先ほどまでの険しい表情から一転、今度はフィナリアが怪訝な表情を浮かべる。
その名前は俺も聞いたことがある。
というか、帝都で俺に濡れ衣を着せようとした張本人だ。
「はい。何かの策の可能性も否定できませんが、敵部隊の中には国境警備軍のものとは思えないほどに煌びやかな一団が混じっていたので、可能性は高いかと思われるそうです」
カーナイルの一言に、フィナリアは思案する。
「その、エベルス将軍が国境警備軍と合流しているとなると、最高指揮権は…」
俺の疑問にフィナリアが答える。
「通常であれば将軍が指揮を執ることになるでしょう。ですが、おそらくそれはまずあり得ません」
「なんでだ?」
「エベルス将軍は、腐敗貴族の典型です。あの方はドルガー将軍とは違って、武勲ではなく貢物などで皇帝陛下に気に入られて取り入ったというのは有名な話です。あの方が直接指揮を執った話など聞いたことがありません」
「……将軍失格じゃねーかよ」
俺の一言に、フィナリアとカーナイルは苦笑していた。
「ですが、一つ納得がいったことがあります」
苦笑しながら、フィナリアがそんなことを口走る。
「なにがだ?」
「シルディエ殿であれば、数日もあればこのリスタコメントスに攻撃を仕掛ける用意を整えられると思ったのですが、エベルス将軍が合流するために行動に移れなかったのかもしれないと思ったのです」
「……なるほど」
エベルスってやつが機敏に動くところは想像できない。
それはおそらく行軍の時でも変わらないだろう。
俺とトリストスはノスタリアから帝都まで10日ほどかかったが、それは馬車を使った場合だ。
軍を率いるとなれば当然時間がかかるし、それがエベルスのような将軍の指揮する部隊であればなおの事遅くなるだろう。
「となると、エベルスがいるのは確実だと?」
「それはまだ何とも言えません。ですが国境からの進軍速度を見ればそれは判断できると思います」
「つまり、速ければエベルスがいない。遅ければいるってことだな?」
「はい。ですが、どちらにしてもこちらのするべきことは変わりません。恐らく、指揮を執るのはシルディエ殿になると思いますので」
フィナリアの言葉に、俺は頷いた。
結局エベルスという将軍がいようといまいとやるべきことは変わらないということだ。
「…では、フィナリア様はどの程度の兵力で向かわれますか?」
「敵が1万であるのであれば、こちらも1万で迎え撃ちましょう。念のためその後方に5000を配備しておくとして、1万5000名が必要かと思います」
「分かりました。すぐに手配しましょう。お二人の健闘をお祈りしています」
「はい」
「ありがとうございます」
こうして、俺たちの新たな戦いの火ぶたが切って落とされようとしていた。
クウヤ達が出陣の準備を始めた頃、リスタコメントスとトルデリシア帝国の間の国境で、エベルス軍がシルディア軍に合流を果たしていた。
その一角で、国境警備軍の隊長であるシルディエ・グランガイスは側近の前で憤慨をあらわにしていた。
「……エベスル将軍の合流を待たなければ、とうにリスタコメントスへと攻め込めたというのに、全く呑気なものね」
「確かに、しかし隊長、本人たちの前では決して口にしてはいけませんよ?」
そのように配下に諌められるシルディエは、燃えるような赤い長髪を後ろで束ねており、その整った顔立ちの中にある双眸からは鋭い眼光が飛んでいた。
「分かっているわ。エベルス将軍は私の父と同様に帝国軍の実権を握られる方。その方の前でこんな言葉を使うほど分別がいないわけではないわ」
「でしたら構いません」
副官の男にそう窘められ、シルディエはこの場に訪れるはずの人物の到着を待つ。
シルディエが先ほど言ったように、エベルス軍との合流を待たなければ、国境警備軍はとうの昔にリスタコメントスへと進軍することはできた。
しかしドルガー将軍からの出陣要請を受けた直後にエベルスの同行が決まってしまったため、シルディエはこうしてエベルス軍の到着を待っていたのだ。
その行軍の速度は遅く、自分たちなら半分の時間で踏破できたと考えるシルディエの前に、ようやくエベルスが配下を数名連れてやってきた。
「お待たせいたしましたなシルディエ隊長。何しろ道が荒れており、そのせいで時間がかかってしまいまてな」
「いえ。エベルス将軍が援軍に駆けつけてくれたおかげで、こちらも心強い限りです」
弛んだ腹を揺らしながらこちらに歩み寄るエベルス将軍に向かって頭を下げながら、シルディエはそんなことを口にした。
内心を表に出すようではどのような場所にあってもプラスに働くことは無い。
「ははは。ドルガー卿のご息女にそのように評価していただけるとは。しかし、すでに聞き及んでいるだろうが、今回総指揮を務めるのは、わしではなくそなたであるということは理解しているかな?」
下衆びた笑みを浮かべながら、エベルスはそんなことを口走る。
シルディエは盗賊たちからそのような下劣な視線を向けられる事はあったが、自分より立場が上の人物からそんな目で見られたのは初めてなので、内心では大いに自分の得物である槍で刺し貫いてやりたいと思いながらも、それをおくびも出さずにいた。
「その件に関してですが、私が指揮権を預かるに当たり将軍に一つお願いがございます」
「ほう。よい。なんでも申して見せよ」
総指揮という立場から、シルディエはあることをエベルスに提案する。
「エベルス将軍の配下から、魔導師部隊をお借りしたいのです」
「ふむ。して、その魔導師部隊をなんに使う?」
「リスタコメントス軍を打ち滅ぼすために」
シルディアの解答に、エベルスはその口元を歪める。
「気に入った。よかろう。存分にやって見せろ。わしは後方からお前の戦いを監視させてもらう」
「は、ありがたき幸せに存じます。長旅でお疲れでしょう。宴の用意をさせておりますので、どうぞ戦の前までは羽を休めてください」
「ほう、殊勝な心がけだな。感謝するぞ」
そう言って、エベルスはその場から立ち去って行った。
足音が遠ざかっていくのを聞いて、シルディエは大きくため息を吐く。
「お疲れ様でした」
「いえ、あなたもありがとう」
そう言って、シルディエは腰を掛ける。
戦場であれば万の敵を相手にしても戦いぬける自信を持つ彼女だが、あのような息の詰まるようなやり取りは慣れていない。
というより、そのようなやり取りが嫌いで辺境軍とも呼ばれる国境警備軍を志願したのだ。
エベルスと合流するという話を聞いたとき、シルディエはこれから戦うリスタコメントス軍よりも、エベルスの方により強く警戒していた。
エベルスという戦闘経験が皆無の将軍にかき乱され、戦が出来なくなる可能性さえも考慮していた。
宴に誘うことで事なきを得たのは、自分の副官の進言によるものだったが、それが功を奏したのでシルディエは先ほどお礼を言ったのだ。
「これで、ようやく戦いに挑めるわね」
「ええ。しかし、油断はできませんね」
副官の言葉に、シルディエは眉をひそめる。
「それはどちらに対して?」
「どちらもですよ」
副官の一言に、再びシルディエは大きくため息を吐いた。




