↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/133

シェルビエント攻防戦6 烈将と剣士

 魔法。


 一口にそう言っても、その種類は多岐に及ぶ。

 風弾、炎弾、水弾、土弾のように単純に魔力をぶつけるだけの初級魔法。

 壁を作ったり、刃を生み出したりといったように形状を変える中級魔法。

 風鳴閃、雷鳴閃、水鳴閃のように魔力を極限まで圧縮して用いる上級魔法。

 

 そして、今ジェクト将軍が用いている氷竜弾は、極大の魔力を極限まで圧縮して放たれる超高等魔法に該当する。

 並みの魔導師では扱うことさえままならぬ膨大な魔力を、一片の狂いもなく制御してのける技量がなければ扱うことのできない魔法である。


 しかし魔法に対する練度には個人差があるように、この超常の魔法にも当然練度の差が存在する。

 例えばフィナリアの風龍弾は直進させることしかできないが、ジェクト将軍の場合は氷龍弾を自在に操ることが出来る。

 

 また、魔力の圧縮率そのものにも差があるため、フィナリアの風龍弾とジェクト将軍の氷龍弾が正面からぶつかり合えば、間違いなくジェクト将軍の氷龍弾がフィナリアの風龍弾を飲み込んでしまう。

 数年後には分からないが、今現在であればフィナリアの風龍弾はジェクト将軍に及ばないのだ。

 

 にもかかわらず。


 パアアアアアアアン!!!!!


 はじけるような音が響き、ジェクト将軍の氷龍弾が蒸発する。

 同様に、シャクトの放った獄炎弾も消えてなくなった。

 つまり、ジェクト将軍の放った氷龍弾と、シャクトの放った獄炎弾は互角の威力を誇っているということになる。


「凄まじい魔法だな。氷の龍か」


 黙したまま状況を精査するジェクト将軍に対し、炎将シャクトはそう告げた。

 

「今のはそこの砦を破壊した魔法だったのだが、こうも見事に相殺されるとはな」


「……なるほど。砦を破壊されたのはあなたでしたか。あれだけの魔力があれば、なるほど砦が破壊されるのも不思議はありませんね」


 そう言って、ジェクトは手にしていた杖を構えた。

 見立てでは目の前の魔族の持つ魔法の技量は自分と同等。

 ゆえにこのまま魔法の打ち合いを続けても双方が疲弊するだけ。

 である以上、この先は近接戦も交えなければ膠着状態が続いてしまうこととなる。


 そう分析し近接戦を用いようとしたジェクト将軍だったが、目の前の魔族はそれに対して突如明後日の方向を向いた。

 

「……?」


 突如取ったその行動の意味を測り兼ね、ジェクト将軍は眉をひそめる。

 よそ見しているように見えてその実ほとんど隙を見せていないために迂闊に飛び込むことはできないが、それにしてもよそ見をする意味はない。


 そう思った直後、北の方で何かがはじけるような音が幾度か響いた。

 直後、炎将シャクトは、未だ魔族たちが戦うシェルビエントの砦の方を向いて口を開いた。


「ライオス! ゴライアス!」


 突如二人の魔族の名を口にしたシャクトの元に、しばし後にその二人がやってきた。

 片方は雷光のような速度で、もう片方はその巨漢で跳躍したのか、上空から地面に飛び降り、大きな地震を引き起こして着地した。


「ジェクト将軍!」


「……」


 そんな二人の魔族を追いかけるかのようにシルディエとバストラングがジェクトの元へと駆け寄ってきた。


「今度は三対三と言うことですか?」


 状況からそう分析したジェクトに対し、しかしシャクトは首を横に振った。


「時間切れだ。我々の出る幕は終わった」


「時間切れ?」


 シャクトの言葉にシルディエがそう問いなおしたとき、突如ジェクト、シルディエ、バストラングの三人に悪寒が走った。


「北側の襲撃が失敗したらしい。俺たち魔将を使って、ちまちま戦いをしている場合じゃあなくなったってことだ」


「……」


 トリストス達が上手くやったのと同義の情報が入ったにもかかわらず、ジェクト将軍はそのことを喜べなかった。

 なぜなら、自分たちに悪寒を与えている張本人がこちらに歩み寄ってきているからである。








 カカカカカカカカカカカカ!!!!!!


 金属がぶつかり合うような音が大山脈の麓に響き渡る。

 音の主は長刀を振るうトリストス。

 原因はその手にした長刀が、迫りくる数多の風の刃を撃ち落しているためである。


「ハ!」


 迫りくる風の刃を一通り叩き落としたのち、トリストスは烈将セネルに接近してその長刀を振るう。

 しかしセネルはまるでその太刀筋を読んでいたかのごとくあっさりと回避し、直後再び牽制のためにと風の刃を生み出し、トリストスに叩き付けた。


「……参ったな。俺の太刀筋をここまできれいに読み切るとは」


「遠距離攻撃を行う私に、近づければ勝てるとでも思った?

 残念。魔界で生き残るということは、そんな生易しいことではないの」


 トリストスにそう告げると、セネルは再び数十の風の刃を生み出した。

 その光景に、トリストスはただ淡々と分析をする。


「なるほど。それだけの魔力コントロールが出来れば、あれだけの距離を正確に打ち抜くこともできるってこと、か!」


 話終わると同時にトリストスは長刀を手にセネルに切りかかる。

 その突進を、セネルは無数の風の刃にて迎撃する。

 鋭く研ぎ澄まされた風の刃はまともに受ければ魔族であっても一刀両断できるだけの威力がある。


 それが無数に迫り来れば、通常の使い手であれば成すすべなく肉片にされてしまうだろう。

 

 しかし、それはまともな相手の話。


「セイ!」

 

 短い気合と共に風の刃がすべて叩き落とされる。

 トリストスが一瞬で迫りくる風の刃を全て叩き落とし…ではなく叩き切ったのである。


「ハ!」


 直後、一瞬で間合いを詰め、トリストスはセネルに対して刃をふり下ろす。

 だが、セネルはその一刀を見切っていたかのように無造作に回避してのける。


 トリストスも刃を回避されたことに対して全く動じないままトリストスはそのまま刀身を煌かせた。

 

『八閃!』


「ッ!」


 一瞬のうちに放たれた八の刃がセネルを襲い、その全てが狂いなく振り抜かれ、二人の位置がすれ違う……が。


「手応えなし。全部回避されるとはな」


 そう言って自分に対して背を向けたセネルに対し、トリストスは刃を振るった。

 その背後からの強襲をセネルはいともたやすく回避しながら振り向いた。


「なるほど。俺の太刀筋をここまで見切られるのは初めてだ。魔界の中で生き延びてきたと豪語するあんたは、相応の修羅場を潜り抜けてきたってことか」


「……」


 軽くそう言ってのけるトリストスに対し、しかしセネルの眼差しは鋭さを増していた。

 その纏っていたローブのあちこちが浅く切り裂かれているからである。


「なるほど。それがベヘルの言っていた人間界特有の武器と戦闘方法。

 確かに魔界では考えられない鋭さを持っている」


「……そういや魔界には剣もないんだったな。もっとも、それだけの魔法の技量があれば、武器が必要ないのもうなずけるか」


 そう言ってトリストスは再び剣を構えた。

 同時に発動することのできる魔法の数は、そのまま魔導師としての技量を示している。

 魔導師としての能力のないトリストスだが、戦闘経験が豊富なため目の前の魔族が尋常ならざる魔導師であるということは見当がつく。


「だが、それだけであんな長距離射撃は成功しない。お前、何か特殊な探知力を持っているな?」


 無数の風の刃を前に、トリストスはそんな問いを口にした。

 目の前の魔族は、魔力の精密操作にかけては特出したものを持っているが、それだけではセレスティーナのような長距離射撃は成功しない。

 

 地平の先にいる敵の位置を何らかの方法で正確に察知できなければ敵を射抜くことなどできないからである。

 セレスティーナは精霊と感覚を共有しているためにある程度の物理的制約を越えて物事を捉えることが出来ると言っていた。

 

 ならば、目の前の魔族は何をしているのかと言えば。


「……風、だな?」


「……」


 トリストスの一言に、セネルは無言で風の刃を放つことで応じる。

 その全てを手にした長刀で叩き落としたトリストスは、何の気なしにセネルの能力を言い当てた。


「俺の動きにも目で追ってついて来てるって感じがない。それとさっきからお前の周りだけ風の流れが不自然だ。肌で感じ取っているのか、耳で聞きとっているのかは知らないが、随分独特の探知をやってるな」


「……観察力はあるようね」


 トリストスの指摘に、セネルは再び風の刃を生み出した。

 トリストスの言った通り、セネルは魔族の中でも特殊な探知力を持っている。


 元々セネルは魔界の中では下から数えたほうが早いくらいの実力しかない種族であり、敵と戦うのではなく、敵から逃れるために気配探知に特化した進化を遂げた種族である。

 ゆえにセネルは地平の果ての音まで拾うことのできる耳と、風の流れから周囲の地形や生物の有無を察知できる鋭敏な皮膚感覚を持っている。


 弱者を束ねようとした魔王イファールに見出されて以後、セネルは同種族内で唯一の戦士となり、その活躍から烈将の名を冠するまでに至ったのである。

 

「けど、それがわかったらなんになるというの? そちらの刃は私には届かない」


「それはそっちも同じだろ」


 セネルの問いに、トリストスは間髪入れずにそう答えた。

 その答えに、セネルは内心で舌打ちする。

 

 風を扱う烈将セネルは岩将、雷将、炎将と比べて単純な突破力が劣る。

 しかし、それを補って余りあるほどの魔力コントロールの精密さと、種族特有の探知能力を用いた戦闘方法を確立したために魔王イファールの側近となったのだ。


 セネルの武器は火力ではなく手数とその精度。

 ゆえにその二つが通じない目の前の剣士を倒すためには長期戦を覚悟しなければならないゆえである。


「あまり時間をかけたくないって顔だな」


 そんなセネルの内心を見抜いたかのようにトリストスがそんなことを口にした。

 

「実はこっちもそうだ。あまり長引かせたくはない。そっちもそうだろうが、俺もさっさとこっちを片付けて砦前に戻らないといけないんでな」


 そう言うと、セネルの目の前でトリストスは長刀の刃先を……地面に当てた。


「!?」


 その様子に、セネルは瞠目した。

 脱力仕切ったその佇まいは、一見すれば隙だらけにさえ見て取れる。

 だが、セネルには目の前の剣士を攻撃するという発想が思いつかなかった。


(気配が……ない!?)


 そう。

 目の前の男から突然一切の気配が消え去ったのである。

 その姿は目にも見えるし、得意の風による探知によってもその存在をはっきりと感じ取れる。

 

 だが、だというのにその姿は一瞬の後に見失いそうであり、先ほどまではっきりと耳に響いていたはずの心臓の鼓動さえも聞き取れなくなっている。


(これでは、まるで)


 幽鬼のよう。


 その異様としか言いようのない立ち姿を前に、しかしセネルはこれまで同様に無数の風の刃を生み出した。

 

 元が戦闘力に劣る種族のセネルには、他の将たちのように圧倒的な魔力は存在しない。

 ゆえに魔界を戦い抜くためには消費の少ない魔法を徹底的に練り込む必要があった。

 

 逆を言えば、だからこそセネルは魔界屈指の魔道の達人であるイファールと同等の練度で魔法を扱うことが出来るのである。


『風刃・乱舞!』


 目の前にたたずむ剣士に向かって、セネルは風の刃の牢獄を作り出す。

 隙間なく高速で向かいくる風の刃は、過たずトリストスを肉塊に変える。

 

「……え?」


 はずだった。

 しかし。


「残像だ」


 そんな声が、突如セネルの耳に響く。

 直後、セネルの腹部に鈍い痛みが走る。


「ば、かな」


 自分が攻撃を察知できないなどあり得ない。

 そう思ったセネルの感覚が、直後自分の背後にその剣士の気配を捉えた。


「……………………っはぁぁぁああああ。やっぱまだ慣れないな」


 深く長い息を吐き、そんなことを口走る剣士は、先度までと異なり心臓の鼓動が聞こえてきてきた。


「…なぜ」


 先ほどまでの幽鬼のような佇まいと異なり、疲れたように荒く呼吸を乱すトリストスに対し、セネルは問いをかける。

 それに対し、トリストスは呼吸を整えて答えた。

 

「心身を弛緩させた状態から振るわれる太刀はその鋭さを増す。だから、極限の太刀を体現するには己を極限まで弛緩させる必要がある。それこそ、己の肉体が存在しないと感じられるほどにな」


「!?」


 目の前の剣士が口にする言葉に、セネルは深く驚愕する。

 魔法を手繰る際には心身ともに深く落ち着いている状態が重要である。

 魔道を修めたセネルは、そのことを深く理解しており、だからこそトリストスの言っていることの意味が理解できた。

 

 そして、その先に紡がれるであろう言葉も予測できた。


「だから、限界まで脱力したんだよ。いや、しかしまだまだ慣れないな」


 そう言って軽口をたたきながらトリストスは肩を回した。

 しかし、そんな簡単に口にできるような内容ではない。

 あのような、まるで死人とさえ錯覚しかねないほどに心身を脱力させ尽くすなど、そのまま死んでしまっても不思議がないというのに。


『幽鬼の太刀』


 それは、ドルガーと戦うためにトリストスが作り上げた最高の奥義だった。

 

「ば、化け物か」


「……そう言われたのは初めてだな」


 そんなことを言いながら、トリストスはセネルの元へと歩み寄る。

 長刀を手にしながら歩み寄る剣士を前に、セネルは止めを刺されることを覚悟し目を閉じた。

 

 が。


「しょっと。ん、軽いなお前」


「……な!?」


 直後、セネルは先ほどの脱力論を聞いたとき以上の衝撃を受ける。

 とどめを刺そうと歩み寄ったはずのトリストスが自分を抱え上げ、肩に担いだのだ。


「な、何をする!」


「暴れるな。みねうちとはいえ、かなり強く打ったからな。一応クウヤに見てもらわないと」


「な!?」


 意味の分からない言葉をくちにするトリストスに対し、セネルは自分が一つ思い違いしていることに気が付いた。


 そもそもこの男が自分に止めをさす必要などないのだ。

 なぜなら、先ほどの一太刀を普通に放っていれば自分は真っ二つになっていたはずなのだから。

 

「……なぜ、殺さなかった」


 この上なく突きつけられた敗北と言う事実に対し、セネルはそう問いかけた。

 その問いに対し、自分を担ぎ上げる剣士は歩きながら答える。


「お前を殺しちまったら、俺たちはいつまでたってもお前らを知ることができないからな」


「…言っていることの意味が分からない」


 そう告げるセネルに対し、トリストスは空いた手で頭を掻きながら答えた。


「お前らが俺たちを憎むように、こっちの世界でも別の憎み合いが続いてたんだよ。フォルシアンとトルデリシアって、言ってもわかんねーか?」


「……」


 独白のように告げられたその言葉に、セネルは黙したまま聞き耳を立てる。


「けどな、人間界は変わったぞ。

 まだまだ時間はかかるだろうが、5000年も続いた憎み合いは終わりに向かってる。

 終わらせようとしてるやつらがいる。

 もし俺がお前を殺せば、魔族との融和まで余計な時間がかかっちまうからな」


「…融和だと。我々と、お前たちが、か?」


 その言葉に、セネルは口を開く。


「ありえん。どうせすぐに止めを刺すだけだろう」


「それこそありえねーな。あいつらは相当なお人よしだからよ」


「……」


 セネルがトリストスの言葉について考えた時、その耳に空気が爆ぜる音が聞こえた。


「なんだ今のは?」


「……時間切れと言うことだ」


 セネルの一言に、トリストスは眉を寄せた。


「今の魔法は、ベヘルと私が討たれたことを知らせる合図だ。つまりは、北側の強襲作戦の失敗を意味する合図でもある」


「……お前らの仲間が潜んでたのか」


 トリストスの問いに、セネルは頷き答えた。


「イファール様が動く。お前たちは、もう終わりだ」


「……なら、急いで戻らないとな。悪いが、少し揺れるぞ」


 そう言うと、トリストスは駆け出した。

 


 


 

 

「すまんな。二人とも助かったぞ」


「いえ、それより、セレスティーナ様とトリストス様はなぜここに?」


 連合軍が相手をしていた飛竜たちは、ファーレンベルクとフィナリアの加入によって瞬く間に討伐が完了した。

 

 セレスティーナは飛竜の眼球を狙い撃つ以外に決定打がなかったため、下方からの狙撃では仕留めにくかったらしい。

 そのため、ファーレンベルクが上空から飛竜の群れを押し込み、フィナリアが地上を攻める飛竜を両断するという形であっという間に片が付いたのだ。


 でもって、俺とフィナリアは現在突如駆けつけてきたセレスティーナと情報交換を行っている最中と言うことだ。


 ベヘルは一応連合軍に預けて縛り上げている。

 もっとも、簀巻きにしているとはいえベヘル相手ではこれでも全く安心できないが……。


「お主らがあの竜人と飛竜の群れに苦戦しているように感じられてな、急ぎトリストスと共に応援に駆け付けたのじゃよ」


「それでは今砦の戦力は」


「うむ。ジェクト将軍も、事が済み次第速やかに帰還してほしいと言っておった」


「なら急いで応援に行こうぜほかにヤバイ気配はないんだろ?」


「ない。トリストスの方も上手くやった様じゃ」


「では、急いで合流しましょう」


 フィナリアの提案に、俺もセレスティーナも頷いた。


「あ、あのー」


 そんな中、一人の部隊長が俺たちに恐る恐る進言してきた。


「これ……いかがいたしましょう?」


「あーー」


 これというのは簀巻きにされたベヘルの事だ。

 今はおとなしく気絶しているが、意識を取り戻したら間違いなく大暴れするだろう。

 

 ……どう考えてもここにいる面子で取り押さえられるはずもない。


「連れてくか?」


「それしかありませんね」


 俺の提案に二人が頷いた。

 ファーレンベルクにベヘルを掴ませ、俺たちは真っ直ぐにセレスティーナの指示通りにトリストスの元へと向かった。


 案の定、トリストスはすぐに見つかった。

 ……見つかったのだが。


「トリストスさん。それは、誰?」


 合流したトリストスを前に俺たちが目にしたのは、一人の美女を抱えたトリストスだった。


「ああ。こいつがさっきまでこっちを狙撃してた魔族だよ」


「……こちらの方が?」


 端から見る限りではとても魔族のようには見えない。

 ベヘルのように竜燐に覆われているわけでもないし、ともすれば獣人族よりもよほど人族に近いように見える。


 ……と言うか、武骨なローブを身に纏っているが、この人和服とかで着飾ればそのまま大和撫子って感じのお姫様になりそうな容姿をしている。

 

「クウヤさん? どうかされました」


「いえ、別に?」


「?」


「それより、急いで砦に戻るぞ。そいつも連れてった方がいいか?」


 そいつに見惚れてましたなんて口にはできないため、誤魔化すために俺はそんなことを口にする。

 

「おう。そうしてくれ。こいつの話だと、砦の方がヤバイらしい」


「砦が? !?」


 トリストスの一言に、直後セレスティーナが頬を引き攣らせた。


「どうしました?」


「……たしかに急いで戻った方が良さそうじゃ。

 この気配、件の魔王が戦いを始めた様じゃぞ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。