第四話:黄金の誕生祭と、血塗られし七尾の仔虎(中編)
深層ラボでの凄惨極まりない『尻尾神経直結実験』から、さらに二ヶ月の月日が流れた。
ティーゲルの妊娠は八ヶ月目を迎え、その腹部はもはや誰の目にも明らかなほど大きく、誇らしげに張り出していた。本来の出産予定日まで、あと二ヶ月。そして、フェリディア王国最大の祝祭である『王女ライオニア誕生祭』まで、ちょうど一ヶ月と迫ったある日のことである。
王宮『天帝聖獅城』の奥深くにある、黄金と白百合で彩られた女王の私室。 そこには、十本尻尾の女王ライアライアと、その傍らで無邪気な笑顔を浮かべる十本尻尾の王女・ライオニア、そして純白の礼装マタニティドレスに身を包んだ参謀ティーゲルの姿があった。
「わあぁ……! ティーゲルのお腹、こんなに大きくなったのね! ねえお母様、この中に七本尻尾の可愛い赤ちゃんが入っているの?」
まだ幼さの残る愛らしい顔立ちをした王女ライオニアが、目をキラキラと輝かせながらティーゲルの大きなお腹を覗き込んだ。彼女の背後では、王族の証である十本の黄金の獅子の尾が、好奇心に満ちてふわふわと揺れている。
「ええ、そうですよ、ライオニア。私たちの頼もしい盾であるティーゲルが、その命を懸けて宿した、次代のトラ族を担う尊い命です」
ライアライア女王は慈愛に満ちた微笑みを浮かべ、ティーゲルの肩にそっと手を添えた。
「ティーゲル。安定期を無事に越え、八ヶ月目を迎えたこと、心から嬉しく思います。先代アルティグラが旅立ってからというもの、貴女には辛い思いばかりをさせてしまいましたからね……。今度こそ、貴女の腕に元気な子虎が抱かれる日を、私もライオニアも待ち望んでいますよ」
「……もったいないお言葉にございます、ライアライア女王陛下、ならびにライオニア王女殿下」
ティーゲルは重たいお腹を支えながら恭しく頭を下げ、胸の奥から込み上げてくる熱い忠義の念に目を潤ませた。
過去四度の流産でどれほど絶望の淵に立たされようとも、こうして自分を心から気遣い、お腹の子の誕生を祈ってくれる美しき女王と王女がいる。だからこそ、自分はこの命をすり減らしてでも王家の盾であり続けようと、改めて魂に誓うのであった。
「つきましては、陛下。来月に迫りましたライオニア王女殿下の『誕生祭』における近衛警護統括の任……例年通り、このティーゲルにお任せいただきたく存じます」
ティーゲルが凛とした声で申し出ると、ライアライア女王は驚いたように目を見張り、やがて困ったように眉を下げた。
「何を言うのですか、ティーゲル。来月といえば、貴女は妊娠九ヶ月目の臨月に入る頃ではありませんか。そのような身重の身体で、丸一日立ちっぱなしとなる誕生祭の警護統括など、絶対に許しません。今回の誕生祭は他の五本尻尾の将軍たちに任せ、貴女は屋敷で静かに出産の準備に専念しなさい」
女王の言葉は、至極真っ当な優しさから出たものであった。 しかし、武人としての強い責任感と、何より「長老衆やピューマ族に、妊娠によって参謀としての隙を見せたと思われたくない」という焦燥感が、ティーゲルを頑なにしていた。
「お言葉ではございますが、陛下! ライオニア王女殿下の誕生祭は、王国の全貴族と幾万の民が集う、国家最大の神聖なる祝祭にございます。万が一にも不届き者が紛れ込むようなことがあっては、先代参謀たる母アルティグラに顔向けができません! お腹の子も、野生の王者の血を引く強靭なトラ族の子にございます。母と共に王女殿下の晴れ舞台をお守りすることこそ、この子にとっても最高の胎教となりましょう。……どうか、この通りにお願い申し上げます!」
ティーゲルは大きなお腹を抱えたまま、床に深く片膝をついて懇願した。
「まあ、ティーゲルったら……。私のお誕生日のために、そんなに一生懸命になってくれるのね!」
幼いライオニア王女は、ティーゲルの過剰なまでの忠誠心を純粋に喜び、パチパチと手を叩いた。
その無邪気な娘の姿と、決して一歩も引こうとしないティーゲルの気迫に押され、ライアライア女王は深く長い溜息をついた。
「……本当に、貴女のその頑固なまでの忠義心は、母アルティグラにそっくりですね。分かりました、そこまで言うのなら、誕生祭当日の警護統括を任せましょう」
「はっ! ありがたき幸せ!」
「ただし、条件がありますよ、ティーゲル」
ライアライアは厳かな表情になり、懐から『黄金の輝きを放つ温かな魔石』を取り出してティーゲルの手に握らせた。
「これは王家に代々伝わる『聖獅子の安産石』です。これを常に肌身離さず身につけておくこと。そしてもう一つ……誕生祭の任務に就く前に、必ず王立医療科学技術局へ行き、ピューレル局長の元で『最新の精密エコー検診』を受け、母子ともに任務に耐えうる状態であるという確定診断書を提出しなさい。もし少しでも異常があれば、即座に警護の任からは外れてもらいます。いいですね?」
「……医療局の、ピューレルの検診を、ですか……」
ティーゲルの顔に、一瞬だけ強い嫌悪と警戒の影が差した。
あの冷たい手術台。ピューレルの無機質な眼鏡の奥の瞳。人工授精の失敗以来、ティーゲルは医療局へ足を踏み入れることを本能的に忌避し、屋敷の旧式な魔道測定器だけで経過を見てきたのである。
「気持ちは分かりますよ、ティーゲル。貴女がピューレルと反りが合わないことも知っています。ですが、医療設備と診断技術において、彼女の右に出る者はこの王国に存在しません。私とライオニアを安心させるためだと思って、一度だけ診てもらってきてちょうだい」
女王にそこまで優しく諭されては、参謀としてこれ以上拒絶することはできなかった。
「……承知いたしました、陛下。本日この後、ただちに医療局へ赴き、検診を受けてまいります」
ティーゲルは授かった安産石を強く握りしめ、深々と頭を下げた。
女王の純粋な「善意」と、ティーゲルの揺るぎない「忠義心」。
その美しく気高い二つの想いが噛み合った瞬間こそが、地下で待ち構える白衣の悪魔・ピューレルが計算し尽くした『死の罠』の入り口であったことなど、この場にいる誰一人として気づく由もなかったのである。
その数時間後。 王立科学開発局、兼・中央医療センターへと続く長い連絡回廊を、ティーゲルは一匹の幼い『侍女キャレット』を伴って歩いていた。
「て、ティーゲル様ぁ、お荷物はこちらで全部お持ちしますにゃん! ティーゲル様は絶対に重いものを持っちゃダメって、ハクレイ様からも固く言われておりますにゃ!」
自分の身体の半分ほどもある大きな着替えのバッグを両手で必死に抱え、短い足でトテトテと一生懸命にティーゲルの後ろをついていくのは、人間齢にして八歳ほどのイエネコ族の少女――ティーゲル専属の侍女キャレット、『ミント』であった。
薄緑色の可愛らしいメイド服に身を包み、背中の細い一本の尻尾をピンと立てて歩くミントは、トラ族の本邸で働く侍女たちの中でも、ひときわティーゲルを母親のように強く慕っている少女だった。 最下層の一本尻尾である自分を決して虐げることなく、失敗しても「次から気をつければよい」と大きな手で優しく頭を撫でてくれるティーゲル様。そして、いつも優しい笑顔でお菓子を分けてくれる銀髪のハクレイ様とコトラお嬢様。 ミントにとって、ティーゲルのお腹の中で育っている『七本尻尾の子虎』の誕生は、自分の命よりも大切な、人生で一番の楽しみだったのである。
「ふふっ、ありがとうな、ミント。お前はいつも気が利く良い子だ。だが、そう慌てて走ると転ぶぞ」
「だいじょうぶですにゃん! にゃーはこれでも、侍女の中では一番足が速いんですにゃ! 早く元気なお子様がお産まれににゃって、にゃーが抱っこ紐でお散歩にお連れするのが夢にゃんですにゃあ〜♡」
ミントが満面の笑顔で無邪気に語ると、医療局に入る緊張で強張っていたティーゲルの表情も、自然と柔らかくほころんだ。
「そうか。では、この子が産まれたら、ミントを『一番最初の教育係』に任命しないとな」
「ほ、ほんとですかにゃ!? やったぁ! にゃー、命に代えてもティーゲル様のお子様をお守りする立派にゃ侍女ににゃりますにゃん!!」
ミントは嬉しさのあまり猫耳をピョコピョコと動かし、尻尾をちぎれんばかりに振って喜んだ。
やがて二人は、医療局の最上階にある『最高幹部用・特別検診室』の前へと到着した。 自動扉が開くと、そこには純白の白衣を纏ったピューレル博士が、いつものようにインテリジェンスな眼鏡を光らせ、数匹の医療キャレットを従えて待ち構えていた。
「お待ちしておりましたよ、ティーゲル参謀。ライアライア女王陛下より、直々に連絡を受けております。……おや、本当に見事なお腹ですね。あの日、野生の獣と血みどろで交わった成果が、これほど立派に実を結ぶとは。医療局長として、心から祝福いたしますよ」
ピューレルは慇懃無礼な笑みを浮かべ、恭しく一礼した。
「……世辞はいい、ピューレル。女王陛下の勅命だから来たまでだ。来月のライオニア王女殿下の誕生祭で警護統括を務めるため、母子ともに健康であるという確定診断書を書いてもらう。さっさと検査を済ませろ」
ティーゲルが警戒心を隠さずタメ口で言い放つと、ピューレルは眼鏡の奥の瞳を細めてクスクスと笑った。
「ええ、もちろんですとも。では、そちらの更衣室で検査着に着替えて、中央の精密エコー台へお上がりください。……ああ、そこの侍女キャレット」
ピューレルは、ティーゲルの後ろでバッグを抱えて警戒するように猫耳を伏せていたミントに視線を向けた。
「精密検査室には強力な魔道磁場が発生します。下等な一本尻尾が立ち入ると、ノイズが入って正確な診断ができません。お前は着替えを手伝ったら、外の待合ロビーで待機していなさい」
「は、はいっにゃん……! わかりましたにゃ……」
絶対的な上位者である七本尻尾のピューレルに睨まれ、ミントは「ひゃっ」と小さく怯えて頭を下げた。
しかし、更衣室でティーゲルを検査着に着替えさせた後、ミントはあることに気づいた。
「あわわっ……! て、ティーゲル様から預かっていた、ライアライア女王陛下からいただいた大切にゃ『安産石』のポーチ、さっき一階の受付で手続きした時に、カウンターの端に置き忘れちゃったにゃあ……っ!」
もしあの大切な魔石を無くしたりしたら、ティーゲル様とお腹の赤ちゃんにバチが当たってしまう。
青ざめたミントは、「ティーゲル様が検査を受けている今のうちに、急いで一階から取ってくるにゃ!」と決意し、待合ロビーを抜け出して、医療局の裏手にあるスタッフ専用の階段へと小走りで駆け出してしまったのである。
だが、八歳の幼いミントにとって、巨大で複雑な構造をした科学開発局・医療センターの内部は迷路そのものであった。
「あれれ……? こっちの階段を下りたはずにゃのに、にゃんだか暗くて冷たい廊下に迷い込んじゃったにゃ……ここ、どこだにゃん……?」
ミントが迷い込んだのは、一階の受付ではなく、一般の立ち入りが固く禁じられている地下への連絡シャフト――『深層ラボ』へと繋がる機密エリアの換気回廊であった。
心細さで涙目になりながら、ミントが来た道を戻ろうとした、その時。
すぐ近くの半開きになった機材調整室の扉の隙間から、ピューレル博士と、部下の医療キャレットたちの押し殺したような話し声が聞こえてきたのである。
『――いいですか、医療キャレットども。これから私が特別検診室へ戻り、この改造した『経膣・経直腸デュアルプローブ』をティーゲルの膣と尻穴へ挿入します。合図を送ったら、お前たちはこの地下制御室から、先日あのビースト化したキャレットの尻尾から採取した『超高周波・破壊パルス』を最大出力でプローブへ送り込みなさい』
「え……っ?」
ミントはピタリと足を止め、思わず猫耳をそばだてて扉の隙間から中を覗き込んだ。
そこでは、上の検診室にいるはずのピューレルが、秘密の直通エレベーターを使って地下へ降りてきており、不気味な赤黒い魔道回路が組み込まれた医療器具を手にして、冷酷な笑みを浮かべていた。
『ピ、ピューレル様……そ、その破壊パルスをティーゲル様のおにゃかに撃ち込んだら、にゃかにいるにゃにゃ本尻尾のお子様は、どうにゃっちゃうんですかにゃ……?』
震える声で尋ねる医療キャレットに対し、ピューレルは心の底から愉悦に満ちた声で答えた。
『決まっているでしょう。ティーゲルの子宮内で休眠している私の『胎盤崩壊ウイルス』が再び目を覚まし、一ヶ月後の【王女ライオニアの誕生祭】の正午ちょうどに、一気に劇症化して胎盤を内側から食い破るのですよ』
「にゃっ……!?」
扉の外で、ミントは自分の口を両手で必死に押さえた。全身の毛が恐怖で逆立つ。
『本来の予定日より一ヶ月も早く、誕生祭の警護任務の真っ最中に、ティーゲルは大量出血を起こして倒れ、未熟児の子虎を早産することになります。祝祭の歓声に沸く女王ライアライアも王女ライオニアも、そして参列席の妹ハクレイも、その異常事態には気づかない。私たちは「祝祭を血で汚さぬため」という大義名分でティーゲルをこの地下の密室へ運び込み、誰の目も届かない場所で、虫の息で産まれてきた子虎を……じっくりと確実に殺してあげるのです』
『ひ、ひぃぃっ……! そ、そんにゃ恐ろしいこと、もしティーゲル様に知られたら……!』
『バレるわけがありません。それどころか、私はティーゲルにこう吹き込んであげるのです。「王族が身重の貴女を警護で酷使した挙句、誕生祭の華やかな魔道演出に王宮のエネルギーと治癒魔石を独占させたせいで、未熟児の赤ちゃんを救うための医療設備が動かず、見殺しにされたのだ」とね! ククク……我が子を奪われた母親の絶望は、そのままライアライア女王とライオニア王女へのドス黒い復讐心へと変わる。あの鬱陶しい筋肉だるまと王家を同時に潰す、まさに一石二鳥の完璧な計画ですよ……!』
「う、うそだにゃ……そんにゃ……っ!」
扉の隙間からその悪魔の計画をすべて聞いてしまったミントは、恐怖のあまり腰が抜けそうになるのを必死で堪え、あとずさりした。
ティーゲル様のお腹の赤ちゃんが、殺される。過去四回、ティーゲル様が血の海の中で小さな子虎の死骸を抱いて、声を枯らして泣き叫んでいたのも、全部この白衣の悪魔の仕業だったのだ!
(し、知らせにゃきゃ……! 今すぐ上の検診室に戻って、ティーゲル様に「逃げてください」って伝えにゃきゃあぁぁっ!!)
ミントが踵を返し、全力で走り出そうとした瞬間。
極度の緊張と恐怖で震えていた彼女の小さな足が、廊下の隅に置かれていた金属製の医療トレイを誤って蹴飛ばしてしまった。
ガシャアァァァンッ!!
静まり返った地下回廊に、残酷なほど高い金属音が響き渡った。
「――誰ですッ!?」
機材調整室の扉が風圧で吹き飛び、ピューレルが鬼のような形相で廊下へと飛び出してきた。 その爬虫類のような冷徹な眼光が、廊下の角を曲がって必死に走って逃げるミントの薄緑色のメイド服の背中と、ピンと立った一本の尻尾を正確に捉えた。
「……あれは、ティーゲルが連れてきた侍女キャレットですね。今の話を聞かれましたか」
「は、はぁっ、はぁっ……! ティーゲル様ぁっ! 逃げて、逃げてにゃあぁぁっ!!」
ミントは涙をポロポロとこぼしながら、短い足で階段を目指して必死に走った。あと少しでエレベーターホールに出られる。そこまで行けば、誰かに助けを求められる!
しかし、最下層の一本尻尾の少女が、七本尻尾の上級貴族が放つ『魔道力』から逃げ切れるはずがなかった。
「逃がすとでも思いましたか、虫けらが」
ピューレルが右手を前に突き出し、背後の七本のピューマの尻尾を鋭くしならせた瞬間。 不可視の強力な『テレキネシス(念動力)』の奔流が廊下を駆け抜け、走っていたミントの小さな身体を背後から見えない巨大な手で鷲掴みにしたように宙へと釣り上げたのである!
「ぎにゃっ!? あ、あれっ……!? 足が、足が床につかにゃいよぉっ!?」
ミントは空中で手足をバタバタと必死に動かしたが、首から足首、そして尻尾に至るまで見えない万力のような念動力で完全に固定され、指一本動かすことができなくなった。 さらに、叫ぼうとした彼女の口には、念動力の塊が猿轡のようにねじ込まれ、「んぐっ! んんーっ!!」とくぐもった悲鳴しか出せなくなってしまった。
「フフッ、残念でしたね、可愛い子猫ちゃん。主人のために必死に走る姿は健気でしたが、お前がティーゲルに言葉を伝えることは永遠にありません」
ピューレルはゆっくりと歩み寄ると、空中に浮かべたままのミントを引き連れ、深層ラボのさらに最下層――厳重なバイオハザードの警告灯が回る『特殊植物隔離区画(温室)』の重厚な扉を開け放った。
扉が開いた瞬間、むわっとした熱帯のような生温かい湿気とともに、何かが腐敗したような異臭と、それとは正反対の「脳髄がとろけるほど甘く芳醇な香り」がミントの鼻腔を突いた。
温室の中央には、身の丈数メートルにも及ぶ、毒々しい赤紫色の巨大な肉食植物が何株も怪しく蠢いていた。
花弁の中心には、まるでイソギンチャクの口のように無数の細かい牙のような突起が並び、その根元からは、太い人間の腕ほどもある『赤黒く脈打つ無数の根(触手)』が、ヌラヌラとした粘液を滴らせながら床の上を蛇のように這い回っている。
それこそが、フェリディアの地底深層で異常進化を遂げた、イエネコ族を専食する第一級禁忌植物――『猫食い花』であった。
「ここはね、私のお気に入りのゴミ捨て場なのですよ。この『猫食い花』は、お前たちのような下等なイエネコ族の若い肉と血液が大好物でしてね。跡形もなく綺麗に吸い尽くして、乾燥したミイラにしてくれるので、死体処理の手間すら省けるのです」
ピューレルは冷酷に微笑むと、念動力を操作して、泣き叫ぶミントの薄緑色のメイド服と、その下の純白の小さな下着を、ビリビリッ! と一瞬で引き裂いて剥ぎ取った。
生まれたままの無防備な全裸となった八歳の少女が、冷たい空気に晒されてブルブルと震える。
「さあ、お食事の時間ですよ、可愛いお花さんたち」
ピューレルが指を鳴らし、念動力を解除すると同時に、ミントの小さな全裸の身体が『猫食い花』の群れのど真ん中へとドサリと放り投げられた。
「う、うわあぁぁっ!! いやだ、怖いにゃあ! ティーゲル様のもとへ帰してにゃあぁぁっ!!」
自由を取り戻したミントは、慌てて立ち上がって扉の方へ逃げようとした。
だが、その瞬間。彼女の周囲を取り囲む巨大な赤紫色の花弁が一斉に大きく開き、中心部から『淡い金色の花粉』をブワァッと大量に噴射したのである!
「けほっ、けほっ……! にゃ、にゃにこれ……すごく、いい匂い……にゃ……?」
ミントはその金色のミストを、思いきり肺の奥まで吸い込んでしまった。 それは『猫食い花』が獲物であるイエネコ族を無力化するために分泌する、超高濃度の『純粋マタタビ・フェロモン』であった!
ドクンッ……!!
吸い込んだ直後、ミントの幼い脳髄に、稲妻のような衝撃が走った。
「あ……っ、あひゃ……っ♡ な、にゃんだか、あたまのにゃかが、ポワポワするにゃん……♡」
超高濃度のマタタビ・フェロモンは、イエネコ族の中枢神経にダイレクトに作用し、運動神経を完全に麻痺させると同時に、理性を吹き飛ばすほどの『強制的な極限の発情状態』へと獲物を陥らせる劇薬である。
「に、逃げにゃきゃ……ティーゲル様に、教えにゃきゃいけないのに……あ、あしが、動かにゃいよぉ……♡」
ミントは必死に前に進もうとするが、全身の筋肉からフニャフニャと力が抜け、その場にペタリと腰を抜かして座り込んでしまった。 それどころか、まだ八歳で大人の発情期すら経験したことがないはずの彼女の小さな身体が、内側から燃え上がるような異常な熱に包まれ、白い柔肌がみるみるうちに真っ赤なピンク色へと染まっていく。
「はぁっ、はぁっ……♡ や、やだぁ……にゃーのからだ、どうにゃっちゃったのにゃ……? おにゃかの奥が、キュンキュンして、あついにゃあ……♡」
瞳孔が極限まで開いてハートマークが浮かんだように潤み、口の端からは甘い吐息とともにタラリと透明な涎が垂れ落ちる。 心の中では「怖い、逃げたい、ティーゲル様を助けたい」と泣き叫んでいるのに、マタタビ・フェロモンに完全にハックされたイエネコ族としての生物学的本能が、目の前の恐ろしい植物を「自分に最高の快楽を与えてくれる極上の雄」だと錯覚させてしまうのだ。
「あ……あぁ……っ♡ だめ、だめにゃのに……あしが、勝手にひらいて……っ♡」
ミントはボロボロと悔しさと恐怖の涙を流しながらも、自らの意思に反してゴロンと床に仰向けに寝転がり、小さな両足をM字に大きくパカッと開いて、まだ未発達で無防備な自分の秘所と、一本の尻尾の付け根にある可愛らしい排泄孔(尻穴)を、猫食い花の前へ自ら差し出すように晒け出してしまったのである! 太ももの内側からは、強制発情によって分泌された甘い蜜がツーッと糸を引いて滴り落ちていた。
「いやぁ……っ、見にゃいで、こんなはずかしい格好……でも、おにゃかの下が、うずいてどうしようもにゃいの……だれか、ここを、いじってにゃあ……♡」
麻痺して動けない小さな手で、自分の熱く火照った股間を無意識にモジモジと擦り始めるミント。 その無防備に開かれた「最高の苗床」を確認した瞬間、『猫食い花』の根元から、ヌラヌラと粘液に光る二本の『赤黒く太い根(触手)』が、鎌首をもたげる蛇のようにスルスルと伸びてきた!
「ひっ……!? あ、あんにゃおっきくて太い根っこが……にゃーの、おまたのところに……っ!」
ミントの脳裏に一瞬だけ恐怖が戻るが、麻痺した身体はピクリとも逃げられない。 無数の細かな吸盤と、ストロー状の鋭い棘がびっしりと生えた二本の赤黒い根が、ミントの細い両足首に絡みついてさらに大きく股を押し広げると――一本は彼女の小さな秘裂(生殖器)の入り口へ、そしてもう一本は尻尾の真下にあるきつく閉じた尻穴(排泄孔)へと、同時にその太い先端をぐりぐりと押し当てた!
「や、やめて……そんにゃ太いの、にゃーのちっちゃにゃ穴には絶対に入らにゃい……裂けちゃうにゃあぁぁっ……!」
ミントが涙目で首を振った、次の瞬間。
ズブブブブブブッッ!!!
二本の赤黒く太い根が、強引に、一切の容赦なく、八歳の少女の小さな二つの穴(膣と尻穴)を同時に押し広げ、最奥の子宮口と直腸の奥深くまで一気に突き刺さったのである!
「ア゛ギャアアアアアアアアアアアッッ♡♡!?!?!?」
温室に、少女の鼓膜を破らんばかりの絶叫が木霊した。
自分の手首ほどもある極太の根によって、未発達の狭い粘膜を無理やりこじ開けられ、引き裂かれる物理的な激痛。破瓜の鮮血と粘液が飛び散り、ミントの小さな下腹部が、内部にねじ込まれた二本の極太の根の容積によってボコッと異様な形に膨れ上がる。
しかし――『猫食い花』の本当の恐ろしさは、ここからであった。
ブスッ、ブスブスブスッ!! ミントの膣内と直腸内に深々と突き刺さった根の表面から、無数の『ストロー状の鋭い棘』が一斉に展開し、彼女の柔らかい内部粘膜と、直腸のすぐ裏側を通る『尻尾の魔力神経(馬尾神経束)』へと直接食い込んだのである!
そしてその棘の先端から、血液が固まるのを防ぐ消化液とともに、先ほどのミストの百倍もの濃度を誇る『液状マタタビ媚薬』が、粘膜と尻尾の神経へと直接、大量に注入された!
「あ゛ッ……!? ひ、ひぎゃあぁぁぁぁぁぁッッ♡♡♡!!!」
激痛が、一瞬にして「脳髄を焼き切るほどの暴力的な快楽」へと完全に書き換えられた。 フェリディア人にとって絶対のタブーであり、一度知れば中毒死するほどの快感をもたらす『尻尾の神経と直腸の同時刺激』。それを、超高濃度のマタタビ媚薬を直接神経に流し込まれながら、極太の根で内側からゴリゴリとかき回されたのだ。
「あひィッ♡ あ、あたまが、おかしくにゃるぅぅっ♡♡ おしりとしっぽの奥が、きもちよすぎて、にゃー、壊れちゃうにゃあぁぁぁっ♡♡!」
ミントは白目を剥いて舌をだらしなく突き出し、二本の根に串刺しにされたまま、空中で小さな身体を弓なりに反らせてガクガクと激しい痙攣(絶頂)を開始した。
自律神経が完全に崩壊し、根が突き刺さった股間の隙間から、黄色い小便と愛液が噴水のようにプシャーッと勢いよく噴き出し続ける。
そして、獲物が極限のオーガズムに狂い、全身の血管が拡張して血流が最大化したその瞬間――『猫食い花』は、本来の目的である【捕食(吸引)】を開始した!
ジュルルルルルルルルッッ!!! Gooooo……!!
二本の太い根が掃除機のホースのように激しく脈動し、ミントの膣と直腸の粘膜に食い込んだ無数のストロー状の棘から、彼女の温かい『血液』『体液』、そして若く瑞々しい『生命エネルギー』そのものを、猛烈な勢いでゴクゴクと吸い上げ始めたのである!
「ア゛ッ♡ あ、あぁっ……!? す、吸われてる……にゃーの血が、いのちが、おまたとおしりから、ぜんぶ吸われてるにゃあぁぁっ♡♡!!」
根がジュルジュルと音を立てて赤黒い血を吸い上げるたび、ミントの小さな子宮と腸壁が内側から強烈なバキュームで吸い付かれ、それがまた新たな連続絶頂を引き起こすという無限の地獄。
「や、やめてぇ……♡ きもちいいけど、死んじゃう……にゃーのからだ、しぼんじゃうよぉ……っ♡」
その言葉通り、ミントの肉体にはおぞましい変化が現れ始めていた。 猛烈な勢いで血液と水分、そして脂肪や筋肉の細胞組織までをも液状化されて根に吸い尽くされていくことで、あれほど瑞々しくふっくらとしていた八歳の少女の白い肌が、見る間にツヤを失い、風船から空気が抜けるように「シューッ……」と急速に萎み始めたのである!
「あ゛っ、あぁっ……♡ て、ティーゲル、しゃま……っ、にげ、て……おにゃかの、お子しゃま……抱っこ、したかった、にゃ……♡」
最期の瞬間まで大好きな主人の名前を呼びながらも、ミントの身体は連続するアナルと子宮の絶頂にビクビクと跳ね続け――
ミシミシッ……パリパリッ……。
わずか数分のうちに、ミントの身体からは一滴の血液も水分も完全に吸い尽くされた。 小さな胸もお腹もペシャンコに張り付き、骨格がそのまま浮き出た茶色く干からびた皮膚が骨にへばりつく。 二本の赤黒い根が「ズポッ」と股間から引き抜かれた時、床の上に転がっていたのは、大きく股を開き、白目を剥いて恍惚の笑顔を浮かべたまま完全に乾燥して固まった、痛ましい『小さな少女のミイラ』だけであった。
ミントから吸い上げた新鮮な血液と生命エネルギーによって、『猫食い花』の花弁はさらに艶やかな赤紫色に輝き、満足げに葉を揺らしている。
「……フフッ。ごちそうさまでしたね。下等な一本尻尾の命など、私の美しい花たちの肥料になるくらいが、一番世の中の役に立つというものです」
ガラスの向こうでその凄惨な捕食ショーを優雅に眺めていたピューレルは、干からびたミイラとなったミントに一瞥もくれず、手にした改造プローブのスイッチを入れた。
「さて、邪魔なネズミの掃除も終わりました。……上へ戻って、我らが誇り高き参謀殿の『特別検診』を始めましょうか」
数分後。
最上階の特別検診室へと戻ったピューレルは、白衣の乱れひとつなく、極めて穏やかで理知的な笑顔を浮かべて、精密エコー台の上で待っていたティーゲルへと歩み寄った。
「お待たせいたしました、ティーゲル参謀。機材の最終調整に少し時間がかかってしまいましてね」
「……遅いぞ、ピューレル。それより、うちの侍女のミントはどうした? 着替えを手伝ったきり、まだ戻ってこないようだが」
検査着姿でベッドに腰掛けていたティーゲルが眉をひそめて尋ねると、ピューレルは「ああ、あの子ですか」と、いかにも残念そうに肩をすくめた。
「あの子なら、先ほどロビーで急に激しい腹痛を訴えましてね。緊張でお腹を下したようでしたので、参謀にうつしてはいけないと思い、私の判断で先に馬車に乗せてトラ族の本邸へ帰らせましたよ。今頃は屋敷のベッドで休んでいるはずです」
「そうか……。あの子、私以上に今日の検診に緊張していたからな。屋敷に戻ったら、温かいミルクでも飲ませてやらねば」
まさかあの健気で愛らしい少女が、自分の腹の子を守ろうとして地下の禁忌植物に生きながら吸い尽くされ、干からびたミイラにされたなどとは夢にも思わず、ティーゲルは優しく微笑んで納得してしまった。
「では、参謀。そちらの診察台へ仰向けになり、足を固定具へ乗せて開いてください。今回はライアライア女王陛下からの厳命ですので、腹部からのエコーだけでなく、産道の開き具合と、尻尾の魔力神経から胎盤へのエネルギー供給状態を最も正確に測るため、膣と直腸からの『経膣・経直腸デュアル超音波プローブ』を使用させていただきます」
「なっ……!? 検診で、直腸にまで器具を入れるというのか!?」
ティーゲルの頬が、羞恥と警戒でカッと赤く染まった。
「当然です。貴女が野生のトラと交配した際、自らの尻尾を使って直腸の神経を刺激し、魔道ホルモンを爆発させて着床させたことは、血液データからすべて分かっておりますよ。その神経回路が現在も正常に胎盤を支えているかを確認するには、直腸壁から直接エコーを当てる以外に方法はありません。……それとも、ここで検査を拒否して、女王陛下に『王女様の誕生祭の警護は辞退します』と報告なさいますか?」
ピューレルに最も痛いところ(女王への忠義と武人の意地)を突かれ、ティーゲルはギリッと奥歯を噛み締めた。
「……くっ。分かった、好きにしろ。ただし、少しでも妙な真似をしたら、その場で貴様の首をへし折るからな」
「ええ、肝に銘じておきますよ」
ティーゲルは屈辱に唇を噛みながら診察台へ仰向けになり、大きなお腹を抱えたまま、左右の足置きに脚を乗せて無防備に股を開いた。
ピューレルは冷たいジェルをたっぷりと塗布した二股の黒い特殊プローブ(その先端には、地下で調整したばかりの『破壊パルス発生素子』が組み込まれている)を手に取ると、ティーゲルの秘所と、その下のきつく閉じた尻穴へと同時にあてがい、ゆっくりと奥深くまで挿入した。
「ぐ、ぅぅッ……! んんッ……!」
八ヶ月目を迎え、普段以上に血流が増して敏感になっている粘膜に冷たい異物が侵入してくる感覚に、ティーゲルはシーツを強く握りしめて必死に声を殺した。
「ほら、力を抜いてください。腹部にもエコーを当てますよ」
ピューレルがもう片方の手でティーゲルの大きく膨らんだお腹にプローブを滑らせると、診察室の大型ホログラムモニターに、白黒の鮮明な立体映像が浮かび上がった。
「……あっ……!!」
その映像を見た瞬間、屈辱に耐えていたティーゲルの黄金の瞳が、大きく見開かれた。 モニターの中――自分の子宮の羊水に包まれた温かい空間の中で、一匹の小さな、しかしすでに美しい縞模様の輪郭を持った『子虎』が、小さな四肢を元気にバタバタと動かしていたのである! そしてその小さなお尻からは、母ティーゲルや祖母アルティグラと全く同じ、誇り高き『七本の小さな尻尾』がはっきりと生えており、まるで母親に挨拶するかのようにピョコピョコと愛らしく揺れていた。
『ドクン、ドクン、ドクン……』
スピーカーから、子虎の力強く規則正しい心音が部屋中に響き渡る。
「ああ……私の、赤ちゃん……。こんなに大きく、しっかりとした『七本尻尾の子虎』の姿になって……っ」
過去四回、五ヶ月目の夜に小さな死骸としてしか対面できなかった我が子が、今、八ヶ月目の姿でこんなにも力強く生きている。
ティーゲルの目から、堪えきれない大粒の嬉し涙がポロポロとこぼれ落ちた。彼女は股間に器具を入れられている羞恥も忘れ、震える手をモニターの中の我が子へと伸ばし、幸せの絶頂の中で微笑んだ。
「母上……見ておられますか。私の娘です。トラ族の未来を背負う、強く美しい子虎です……っ!」
ティーゲルが感動に打ち震え、完全に無防備に心を緩めた、まさにその瞬間であった。
ピューレルはモニターの陰で、白衣のポケットの中の秘密のスイッチを「カチリ」と押し込んだ。
『――パルス照射、開始』
直後、ティーゲルの膣と直腸の最奥に挿入されていたデュアルプローブの先端が、目に見えない『赤黒い魔道光』を放ち、あの一本尻尾のキャレット(シロ)が恐怖の極限でビースト化して自らの尻尾を噛み千切った瞬間の『超高周波・破壊神経パルス』を、ティーゲルの仙骨神経と子宮の胎盤へ向けて、ピンポイントで撃ち込んだのである!
ズクンッ……!!
「ッ……!? い、痛っ……!?」
ティーゲルの下腹部と尻尾の付け根に、まるで細い針で刺されたような一瞬の鋭い痛みが走った。
モニターの中で元気に動いていた子虎が、ビクッ! と全身を強張らせ、苦しそうに身体を丸めた。
「……おい、ピューレル! 今、お腹の奥がピリッと痛んだぞ! 赤ちゃんも急に動かなくなったではないか、何をした!?」
ティーゲルが顔色を変えて睨みつけると、ピューレルは全く動じることなく、プローブをスッと引き抜いて優雅に微笑んだ。
「ご安心ください、参謀。今のは胎盤の血流と神経反射を測るための、ほんのわずかな微弱電流テストです。赤ちゃんが丸まったのは、突然の光に驚いて眠ってしまっただけですよ。……ほら、心音もこんなに正常でしょう?」
モニターの心音は、確かに『ドクン、ドクン』と規則正しい音を刻み続けていた。
「……そうか。なら、いいのだが……」
ティーゲルはホッと胸を撫で下ろし、自分のお腹を優しく撫でさすった。
彼女は気づいていなかった。
今の一瞬のパルス照射によって、野生のトラの生命力と魔道ホルモンが作り上げていた『免疫皮膜』が内側から見事に粉砕され、胎盤の細胞の中に潜んでいた『遅効性・胎盤崩壊ウイルス』が、ついに長い眠りから叩き起こされたことに。
そして、そのウイルスには、ピューレルの緻密な遺伝子プログラムによって、正確に『三十日後の正午――王女ライオニアの誕生祭の真っ最中』に一気に爆発的増殖(劇症化)を起こし、胎盤を食い破って母体を強制早産へと追い込む『死の時限タイマー』がセットされていたのである。
「検診はすべて終了です、ティーゲル参謀。母子ともに、これ以上ないほど健康そのものですね。これなら来月のライオニア王女様の誕生祭でも、立派に警護統括のお務めを果たせることでしょう。今すぐ、女王陛下へ提出するための『確定診断書』を発行いたしますよ」
ピューレルは、血の涙を流す運命が確定した女将軍に向かって、どこまでも優しく、どこまでも残酷な白衣の天使の微笑みを向けた。
「……ああ、頼むぞ、ピューレル。これで心置きなく、お腹の子と共に王女殿下の晴れ舞台をお守りできる」
確定診断書を受け取り、ライアライア女王から授かった『安産石』が消えていること(ミントが持ったままミイラにされたこと)にもまだ気づかぬまま、ティーゲルは我が子のエコー写真を大切に胸に抱いて、希望に満ちた足取りで医療局を後にした。
その大きく膨らんだお腹の背中を見送りながら、ピューレルは誰もいない検診室で眼鏡を外し、歓喜に歪んだ顔で低く、狂おしく笑い始めた。
「ククク……アハハハハハハッ!! カウントダウンの始まりですよ、ティーゲル! あと三十日。せいぜいその大きなお腹を撫でて、幸せな母親の夢を見ていなさい。……王女ライオニアの誕生を祝うファンファーレが鳴り響くその瞬間が、お前とお前の赤ん坊にとっての、地獄の葬送曲となるのですから……!!」
光り輝く祝祭の日へ向けて、残酷な時計の針は、一秒、また一秒と確実に進み始めていた。




