愛を込めて!
あの、その、⋯⋯いっけなぁい!遅刻遅刻!
いや、もう、ほんと、すみません。
お詫びにいつもより量を増やしてるので、許してください。
はぁ、これで二回目ですね。ですが、次は遅刻しません。
『三度目の正直』ってやつですよ!
⋯⋯おい、誰だ『二度あることは三度ある』って言った奴。
♢如月双葉♢
朝、目が覚めると厨房から音が聞こえた。
二階から降りてそちらを確認すると、イータが料理をしていた。
「あっ、双葉!」
「何してるんだ?」
「ふっふん、料理だよ」
「そうじゃなくて、なんで料理してるんだ?」
「理由はないよ。たまにはしようかなーって思っただけ」
「そうか。手伝うよ」
俺は厨房に入ってイータと料理を始めた。
作っていたのは目玉焼きだった。
なのでほとんどすることがないが、まあいいか。
せっかくだしベーコンも焼くか。
「ねえ、双葉」
「どうした?」
「私ね、あの時双葉のことがちょっと怖かったよ」
「それは、ごめん」
俺も必死だったからな。
反省。
「でもね、やっぱり双葉のことが好きだよ」
「そうか。俺も、イータもカースも皆好きだぞ」
「違うんだ。友達とか、そういうのじゃなくて。本当に好きなんだ」
「それは⋯⋯」
俺が言葉を続けようとすると、遮るようにイータが喋った。
「だから、私と、その⋯⋯お付き合いしてほしい、です」
隣を見ると、顔を赤くしたイータがこちらを見ていた。
目を逸らそうとせず、俺だけを見ていた。
俺はこの一人の少女にしっかりと答えねばならないだろう。
それが、人の道理というものではないだろうか。
俺は一拍置いて喋った。
「⋯⋯俺はイータのことをよく知らない。イータのことが好きかと問われれば好きだと思う。
でも、それは友達としてだ。好き合ってないのに付き合っても長続きはしない。
お互いに不満が生まれるだけだと思う。だから付き合うってのは、無理だ」
「そ、そうだよね。あはは、ごめんね」
イータはその結末を予想していたのだろう、笑っている。
だが、そこには涙が混じっていた。
決心して、断られる覚悟はしていたのだろう。
それでも泣いてしまう程に、辛かったのだろう。
「でも、だからこそ⋯⋯俺に、イータのことを好きだって思わせてくれ」
「えっ?」
「俺がイータのことを好きだと思ったら、イータの勝ちだ。
その時は俺から告白してやる。『俺と付き合ってくれ』ってな。
だから、その時まで俺のことを好きでいてくれ」
「えあ」
「もし好きじゃなくなってたら、今度は俺がイータに俺のことを好きだって思わせてみせる」
これが俺の答えだ。
少しズルいし、中途半端な回答になってしまったが。
「うふふ、大丈夫だよ、双葉。私はいつまでも双葉のことが好きだから」
今度は心の底から笑顔になってくれたイータに、少しばかり顔が赤くなった気がする。
この笑顔を守ってあげたい。
「それはそうと、ベーコンが焦げてるよ?」
「えっ?あっ!?」
俺は慌ててベーコンを救出し、勿体ないので食べた。
「双葉が料理で失敗するなんて珍しいね」
「まあ、そういうこともあるさ」
それからもう一度作り直し、カースを起こして朝食にした。
今日の朝食は普段よりも美味しい気がした。
「いつもと違うね!これ、マナが作ったでしょ!」
「その通り」
「やっぱり双葉くんの方が美味しいよね!」
「ゴフッ」
うん。本当に美味しい気がしただけらしい。
♢
あれから数時間ほど後、今は水着を買いに来ている。
流石に今回は一人だ。
イータとカースは二人で別の所に買いに行った。
「まあ、これでいいか」
俺はとりあえず無難な物を選んで購入した。
ついでに浮き輪も購入しておいた。
イータが泳げないらしいから。
「おや、双葉様」
「ノートさん」
声のした方を向くとノートさんがいた。
「ノートさんも水着を買いに来たんですか?」
「はい。もうすぐ協会職員達で社員旅行に行くんです」
「なるほど。どちらに向かう予定で」
「『ウォー』です」
「やっぱりそこですか」
ウォーは海の綺麗な国で、漁業や交易が盛ん。
年中暑く、海水浴をするのにピッタリの場所だ。
地域住民は水着で生活しているらしい。
一応この国にも綺麗な海はあるのだが、人が来ることはほぼ無い。
「双葉様もウォーへ?」
「いえ、うちはイータがいますのでこの国の海に」
「なるほど」
そう。
この国の海は俺らにとっては完璧なのだ。
綺麗で、人がいない海。
そんな好都合な場所、ここ以外にどこがあるんだ。
「あっ、そういえば元クッロツ領ってどうなりました?」
「全て我が国の領土となりました。現在は他国の協力を借りながら復興作業中です」
「なるほど。かなり壊してしまって、すみません」
「いえいえ。お気になさらず」
俺達は軽く雑談をして別れた。
♢
家に帰ると、ポストに手紙が入っていた。
「いや手紙じゃないな、これ」
それはチラシだった。
どうやらこの付近で巨大な魔物が出現したらしいので、その注意だ。
気をつけよう。
「ただいまー」
俺が家に入ると、イータが待ち構えていた。
「どうしたの?」
問いかけても何も返してくれない。
何か怒らせるようなことをしてしまっただろうか。
疑問に思っていると、二階からカースが降りてきた。
「マナが双葉くんから貰った髪飾りを失くしちゃったらしいよ」
「ああ、なんだ」
「なんだ、じゃないよぉ。ごめんね、双葉」
「別にいいさ。また買ってあげるよ」
俺は問題ないことを告げ、新しく買おうと提案した。
だが、イータは首を横に振った。
「ううん。私はあれが良いの。双葉が⋯⋯初めてくれたプレゼントだから」
「そっか。じゃあ、一緒に探しに行こう」
「うん!」
「私は留守番しとくね!」
俺達は家を出てイータの髪飾りを探しに向かった。
♢カルス・カース♢
「はあ、今朝のあれはどうなったのかな」
私はマナが双葉くんに告白したところまでは聞いていた。
だが、その後の返答を聞く勇気がなくて耳をふさいでいた。
結局どうなってしまったのだろうか。
「私だって、双葉くんのことが好きなのに」
マナは凄いよ。
私も普段はあんなこと言ってるけど、いざ目の前で告白しろって言われたらできない。
「私って、二人の邪魔になってるのかな」
⋯⋯決めた。
♢如月双葉♢
髪飾り探しは簡単に終わった。
俺達が歩き出したタイミングで刀が凄まじい速度で飛んでいき、それを追いかけたら見つかったのだ。
便利だな、この刀。
「見つかってよかったのじゃ」
「そうだな」
俺達はそのまま家に帰った。
ドアを開けるとカースが待ち構えていた。
またこれかよ。
「どうした?」
「その、私と、付き合ってくだしゃ⋯⋯さい!」
今かんだな。
一日に二人から告白されるとは、そろそろモテ期かな。
「あのな、カース。これはイータにも言ったことなんだけど⋯⋯」
俺はイータに説明した内容をカースにも伝えた。
「なるほど!了解!負けないよ、マナ!」
「望むところ」
「あっ、待てよ。これ、俺がどっちも好きになった場合どうすれば良いんだ」
「その時は皆で仲良くお付き合いだね!」
「良いのか、それ」
「大丈夫だよ。双葉を落とすのは私だけだから」
「何言ってるのさ、私に決まってるじゃん!」
二人が言い合い始めた。
んー、まあ俺は浮気性とかではないから大丈夫か。
大丈夫だよな?正直、どっちも甲乙つけ難いんだよなあ。
「よーし、早速料理で勝負だよ!」
「カルスは料理できないでしょ⋯⋯」
「うぐッ。⋯⋯教えて」
「もちろん」
二人は厨房に向かっていった。
あの二人、結構仲いいよな。
しばらく刀の手入れをして待っていると、二人が料理を運んできた。
「美味しそうだ」
オムライスとコーンスープ。
「双葉、あ〜ん♡」
「えっ?」
「あっ!ズルい!双葉くん、あ〜ん♡」
イータがオムライスを、カースがコーンスープを俺の口に運ぼうとしてくる。
「流石に、二つ同時は無理なんだが」
「どっちか選んでよ」
「ほら、どっち?」
「じゃあ、先に運んでくれたイータからで」
俺はオムライスを口に入れる。
美味しい。
もう少し胡椒を入れると更に良くなる。
「美味しいよ」
「むふー」
「次は私の!」
ふむ、コーンスープも中々に美味しい。
牛乳を軽く混ぜると更に良いかもしれない。
「美味しいよ」
「ふっふーん」
「これは俺も負けてられないな。夕飯は本気で料理してみるか」
「「えっ?」」
「楽しみにしてろよ」
さて、何を作ろうか。
夜までまだ時間がある。しばらく考えていよう。
その時、家の外にバカみたいな魔力を感じた。
「ん?これは⋯⋯」
「うわー、アイツだよ」
「アイツ?」
「「レベル6最大にして最強の少女『クルメル・アート』」」
二人が同時にその名を呼ぶと、ドアが開いた。
そこに立っていたのはメイド服を着た黒髪ロングの少女だった。
「おじゃまします」
「ど、どうも?」
「ふむ、貴方がこの二人をたぶらかした人物ですね」
「別にたぶらかしたわけでは」
「いえいえ、良いんです。ただ、実力を知りたい」
「⋯⋯急だな」
「レベル6を二人も従え、Sランクにまで至っているレベル0。なので実力を知りたいなと」
「あ、ああ。なるほど?」
別に従えているわけじゃないんだけど。
まあ、実力を知りたいというのは分からないでもない。
「どうでしょう?」
「いいけど、どこでやるの?」
「?」
「?」
えっ、何の疑問符?
「双葉、アイツは双葉の料理を知りたいんだよ」
「アイツは一に食事、二に食事、三に食事だからね!」
あっ、そういうことか。
「ふむ、なあアート」
「はい?」
「昼を食べて直ぐだから、夕飯の時でいい?」
「構いませんよ」
これは、夕飯を本気でやらないとな。
それから彼女達は三人で遊び始めた。
俺は一人で食材を買いに出かける。
⋯⋯今晩はあれだ。
マナちゃんとカルスの告白をいい感じにかわしやがって⋯⋯!
クソ、僕にはモテ期なんてものなかったのに!




