防衛戦?
今回も例のごとく少し多めです。
そろそろこれがデフォルトになってきた⋯⋯。
翌朝、二人と一緒に協会に向かうとノートさんに呼ばれた。
「すみません、お時間を頂いて」
「いえ、構いませんよ」
「では早速。単刀直入に申し上げます、防衛戦にご協力ください」
「防衛戦、ですか。何から守れば良いんでしょうか」
「隣国にクッロツという国があるのはご存知でしょうか」
「はい」
俺を追放した例の国だ。
「クッロツが軍をなし、我らがフリアに向けて行軍しています」
あの国、結構ヤバイよな。
なるほどな。あの国の軍を退けてほしいと。
「クッロツからこの国を守っていただきたいのです」
やはりか。
まあ、俺としては問題はない。
二人の方はどうだろうか。
俺がチラッと二人を見ると、首を横に振っていた。
「私は嫌じゃ。要は戦争じゃろ?私はそういうのは嫌いじゃ」
「私も嫌だよ!ああいうのって呪いとかが蔓延するから関わるの良くないんだよね!」
「だ、そうです」
「そうですか。レベル6を二人欠いた状態での防衛戦になりそうです」
「ちなみにこちらの戦力は?」
「三回です」
「はい?」
「クッロツを三回は滅ぼせます」
嘘だろ。
一つの国を三回も滅ぼせる?
この国はどんなバケモノ揃いなんだよ。
「これはクッロツに問題があります。あの国は差別が激しく、滞在したいと思う方がほとんどいません。
強い人を優遇するのに、強い人ほどあの国を出たがる。その影響で戦力が低い」
なるほど。
あの王を知っている身からすると納得できる。
しかし、なぜあの国がここを攻めるんだ?
⋯⋯戦力補給とか言わないだろうな。
この国には強い人が集まる。
それらの人物を自国に取り入れる為に攻める。
だとしたら馬鹿だぞ。
攻めれば返り討ちに合うし、もし勝てたとしても全員が別の国に逃げるだろう。
結局失うだけだ。
「ん?クッロツを三回は滅ぼせるんですよね?だったら何故僕達にこんな打診を?」
「それが、あの国がどうも怪しくてですね。何かを企んでいるような気がしてならない。
ただの杞憂かもしれませんが、万が一があります。なので打診させていただきました」
「なるほどのう。で、あるならばじゃ。私も参加してやろう」
「だねえ。私も参加したほうが良さそうだ」
「よろしいのですか!」
「ひゃう!?だから大声を出すなと言ったじゃろ!」
「す、すみません」
イータが俺にくっつき始めた。
そして何故かカースもくっついている。
「僕も参加します。二人が参加して、僕だけ参加しないのは流石に。元々参加するつもりでしたし」
「ありがとうございます。では、少しお願いが」
「お願い?」
俺達はノートさんからお願いされたことに驚き、悩んだが、了承した。
多分それが一番犠牲が少なく済む。
♢クッロツとフリアの国境線付近♢
その日、この地は賑やかだった。
いや、賑やかとは少し違う。
沢山の人間がいるが、誰も笑っていない。
その目は真剣で、今から敵を討つことに集中していた。
「全軍停止!」
「「「停止!」」」
「これより!フリアへと侵入する!敵は強力だが、我々には最終兵器がある!」
指揮官の手に握られていたのは何かのスイッチだった。
そこからも演説は続き、いざ出陣となった段でそれを妨げられた。
進路の先には三人の人物がいる。
「多いなあ」
「多いね!」
「双葉ぁ、怖いよぉ」
「⋯⋯大丈夫か?」
「マナの怖いは、人が怖いだからどうしようもないんだよね!」
刀を宙に浮かせた青年と、左手の甲に図形が六つある少女二人。
すなわち、如月双葉とマナ・メル・イータ、カルス・カースの三人だ。
それを見たクッロツ軍は怖気づく──ことはなかった。
むしろ喜びに満ちている。
その目は勝ちを確信した目であり、既に勝ちを喜んでいる者もいる。
「全軍静まれ!我々の勝利は確定した!これより行われるのは一方的な蹂躙だ!」
「「「おぉぉ!!」」」
その光景に、言いしれぬ違和感を覚えた三人は各々の構えを取る。
彼らがここに来た目的はレベル6が二人いることを伝え、クッロツ軍を怖気づかせるため。
そうすれば引き下がると考えてのもの。
だが、これはどういうことだ。
クッロツ軍は怖気づくどころか士気を高めている。
それではまるで、彼らが来たことで勝ちが確定したと言っているようなものだ。
三人が指示されたのはクッロツ軍を帰すこと。
それが不可能なら殲滅して構わないと言われている。
不可能でも彼らは一度フリアへ帰るつもりだった。
だが、この状況を見てしまえば戦闘は避けられない。
よって彼らは構える。
いつでも受けられるように。
「全軍、退避ぃぃ!!」
それに反して、指揮官は全軍を退避させた。
軍もそれにすぐさま応じ、小走り気味に引き返している。
いや、逃げている。
まるで、今からここにおぞましい怪物が出現するかのように。
そして指揮官は三人に衝撃を与える言葉を叫んだ。
「やれ!〝マナ・メル・イータ〟!」
それと同時に何かのスイッチを押下する。
「イータ?」
「マナ?」
「私?」
三人が仲間であるマナ・メル・イータの名を呼ばれたことに驚いている間に変化が生じた。
名を呼ばれた者の体の内側からナニカが溢れ出てくる。
体中の穴という穴から。いや、穴すら関係なく溢れ出てくる。
それに即座に反応したのは双葉だった。
刀を振り抜き、それを斬ろうとする。
だが、斬る直前で指揮官が撃ち込んできた魔法に妨害され、仕損じた。
双葉がそちらを見る頃には既に指揮官は逃げていた。
その間にもソレは膨張を続けていく。
いつしかマナを飲み込み、内側に閉ざした。
「これは⋯⋯!?」
「大会のアイツはこれの試験的な何かだったわけね」
ソレは大会中に出現した煙の呪いのようなもの。
だが、明確に違うのはその内部にマナを閉じ込めていること。
そしてソレはゼリーのような固形のものであること。
「どういう原理だろうね」
「これは、おそらく魔力だ。そしてその供給源はイータだろうな」
「ああ、双葉くんの刀と同じってわけね」
「呪いの専門家が分からないってことは呪いの類ではないのか」
「違うね。これは純粋な魔力かな」
「ソレが何故イータを起点としているのかは分からないが」
「だねー」
「ひとまず助けるぞ!」
「了解!」
二人はマナに向かっていく。
やばいよやばいよ!マナちゃんがやばいよ!




