刀?
なんか、思ったより長くなってしまいました。
♢司令室♢
「カース様、どうですか?」
「んー、逆探はできたけど今からじゃ間に合わないね!」
「煙の対処は」
「それならあの箱を壊せば済むよ」
カルトは箱に己の渾身の魔法を叩きつけるが、壊れなかった。
相当に頑丈な代物であることが伺える。
「それねえ、私でも壊せないんだあ。魔法、とりわけ呪いに対して防御が堅すぎる」
「近接を主体にする冒険者もいますが」
「最低でもアーマーベアを打撃で倒せるぐらいの火力はないとかな!」
「そんな人いるわけないですよ」
「知ってる!」
「どうしましょうか」
カルト達が思案していると、誰かがやって来た。
そちらに目を向けると、そこにいた人物はマナだった。
「イータ様!」
「ひゅお!?あんまりデカい声を出さないでほしいのじゃ!」
「失礼しました。それで、ご用件は?」
「あっはは!この箱を壊しに来たんでしょ!」
「カルスの言う通りじゃ」
「壊せるんですか?これは魔法への耐性が高いですよ」
カルトがそう言うと、マナは無言で会場の方を見た。
いや、正確にはそこにいる誰かを見ていた。
「私は壊さない。だが、壊せる奴を知っているのじゃ」
その顔は、自信に満ち溢れている。
そしてこう言った。
「如月双葉じゃ」
♢如月双葉♢
ノートさんに急遽呼び出され、司令室に向かった。
ドアを開けて中に入ると、三人いた。
ノートさんとイータ、それから弁当少女だ。
少女はまたもや見た目が変わっていた。
「呪いの専門家って弁当少女のことだったのか」
「さっきから凄いね!全部一発だ!」
「なんじゃ?知り合いか?」
「さっき出会ったんだよ。それはそうと、呼び出されたのは何故ですか?」
俺が尋ねると、ノートさんは地面を指さした。
そこには箱が置かれている。
ああ、これがあの魔力の正体か。
「これを壊してほしいのです。可能ですか?」
「レベル6が二人いて壊せてないのなら無理では?」
「いえ、これは魔法への耐性が高い代物でして。近接が可能な方しか壊せないのです」
「それで僕ですか。強度は?」
「アーマーベアの装甲程です。可能ですか?」
アーマーベアって言うと、崖で仕留めたアイツか。
あの時は装甲を砕けなかったな。
アイツの装甲硬いからなあ。多分地球のどんなものよりも硬い。
まあ、《魔力強化》が十分に使える今なら問題はない。
「やはり、不可能ですか」
俺が少し考え事をしていたからか、ノートさんは不可能と判断したようだ。
「あっ、いえ。砕くだけなら余裕です。ただ、中身が溢れません?」
「中身?」
「おっほ、君凄いね!そうだよ。壊すと中の呪いが溢れ出す。
でも安心して。呪いの扱いなら私に敵う奴はいない。溢れ出た呪いを全部抑えてみせるよ」
なら大丈夫だろう。
もう一つの懸念点はこれ以外にも箱がありそうなことだ。
出たり消えたりしていた魔力反応が今は完全に消えたが、まだあるかもしれない。
しかし、俺がどうこうできるものでもない。
考えるだけ無駄か。
「壊すぞ」
「いつでもどうぞ!」
俺は《魔力強化》をフルで使用し、箱に拳を打ち付ける。
その瞬間、箱が壊れた。
そして呪いが溢れ出す。
「ばっちこーい!」
カースが謎の掛け声と同時に何かをする。
すると、呪いがドンドンとカースのもとに集まっていく。
しかし、途中で呪いが抵抗を始めた。
「あれっ?」
そのまま呪いはカースから離れ、俺の方に向かってくる。
あっ、これ、ヤバいやつだ。
「せめて右手だけにしてくれよ?」
俺の言葉が通じたのか、それとも偶然なのか。
呪いは俺の右手に収束していく。
すると、会場の煙の呪いも形を崩してこちらに飛んで来た。
気がつけば呪いは全てが右手に収束していた。
そのまま呪いは形を創っていく。
それは確かな重量と威圧感を感じるものだった。
「うっそーん。呪いの扱いで負けた?こんな素人に?」
カースが膝をついて驚いているが、驚きたいのは俺の方だ。
何故なら創られたそれは俺の、日本人のよく知る物で。
俺の戦闘のレベルを格段に向上させる物なのだから。
そう、ソレは刀だった。
そして何故か俺好みの重量と長さをしている。
手に吸い付くような感覚で、長年使ってきたようにしっくりくる。
「刀か、もう出会えないと思ってたんだけどな」
俺が刀身を眺めながらニヤついているとイータが話しかけてきた。
「ニヤニヤしているところ悪いが、ソレは呪具じゃ」
「呪具?」
「呪いが込められた武器のことを表す。専門家よ、説明するのじゃ」
「はあ、その多くは使用者に絶大な力を与える。その代わりに代償が伴うことも多い。
私の知ってる一番ひどいのは使うたびに全身が燃えるやつだね」
ナニソレジュグコワイ。
「まっ、ソレを呪具と呼ぶのには語弊があるけど。呪いそのものだからね!」
「あまり使うことはススメぬ。最悪死ぬぞ」
「解呪すれば使えないこともないけど、解呪すれば消えるだろうね!」
どっちにしろ使えねえじゃねえか。
俺達がそんな話をしている間にノートさんは冒険者の人達に指示出しをしていたようだ。
冒険者の人達が周辺を警備し始めている。
さて、どうしたものか。
俺はひとまず刀を置こうと思ったのだが、手を離れない。
「手に吸い付いてる(物理)」
ジャストフィット感がほしいだけで、別に物理的に吸い付いてほしいわけじゃないんだが。
「それが代償かもね!」
「嫌だよ!?こんな代償!?」
「むう、そのままだと料理ができぬのう」
⋯⋯えっ、そこ?
ん?なんだろう、何かを吸われている気がする。
魔力が俺から刀に流れていて⋯⋯。
「コイツ!?俺の魔力を吸ってやがる!?」
「じゃあそっちが代償だ!」
「ふむ、吸い終わったら離れるかもの」
それ、離れなくね?魔力無限なんですけど⋯⋯。
どうしよう。一生このままとか嫌だぞ。
俺が未来予想図に絶望していると、刀が動き出した。
それは手から離れていき、俺の周囲に漂い始めた。
「離れた!」
「ちぇっ、面白くない!」
「漂ってるのは魔力によるものかの。僅かにお主と呪具の間に魔力の線が見える」
つまり漂うための魔力を吸っていたってことか。
そして今現在も吸われていると。
まあ、手から離れてくれるならそれでいい。
「いやー、良かった良かった。せっかくだし、鞘も作らないとな」
俺がそう言うと、刀から一気に魔力を吸われた。
すると刀がその魔力で鞘を生成し始めた。
便利だなあ。しかも俺好みの質素な黒色だ。
「結構気に入った」
「使うのか?」
「使わなきゃ勿体ないだろ」
「私はそれでお主が死んだりしたら嫌じゃぞ」
「大丈夫だって、俺はそう簡単に死なねえよ。少なくとも、イータを一人にはしない」
「双葉ぁ」
イータを一人にすると道端で死んでそうなんだよなあ。恐怖で。
流石にそれは迷惑なのでそうならないようにする。
「双葉様、本日はありがとうございました」
「あっ、いえいえ。壊しただけですし」
「今回の件で報酬が出ますので、都合の良い時に協会に赴いてください」
「分かりました。明日にでも」
「はい。では、家までお送りします」
「ありがとうございます」
俺は軽くノートさんと雑談をしながら馬車の到着を待った。
イータ達も二人で話しているようだ。
「カルスよ、呪い研究とか色々頑張るのじゃぞ」
「マナも頑張ってね!」
「何をじゃ」
「恋」
「〜〜〜〜〜〜ッ!?」
馬車が到着し、イータを呼ぼうと思ったのだが何故か顔を赤くしている。
「どうした?」
「な、何でもない!」
イータはそう言って早々に客席に乗り込んでしまった。
俺もノートさんが用意してくれた馬車、だよな?に乗り込む。
馬の代わりにトカゲが引っ張ってるんだけど。しかも結構デカい。
「ああ、これは竜車じゃよ。引っ張っているのは『トロドラゴン』じゃ」
調子を取り戻したイータが説明してくれた。
何か遅そうな名前だな。
そう思っていると、竜車が出発した。
「あっ、結構速い」
生き物は名前によらないねえ。
刀ぁぁ!!!!!
刀ってかっこいいよね。




