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鬼 対話 鼬鼠 弍

おはようございます。こんばんは。こんにちは。



 

 先ほどより気温が少し上がり、外の写生会は「あつい」の感想で終わり、絵の感想どころではなく終わった。


 「今日のお昼は何かな。お弁当? パン」

 「弁当。フーちゃんは」

 「パン。しかも買いに行かないと」

 「そうか、ではご飯は購買近くの通路でいいか」

 「そうしよう」


 (学級(クラス)の違うフーちゃんを誘い、待ちに待った昼ごはんです)


 パンを二、三個購入したフーちゃんが、満足げに手を振り、通路脇にある椅子に腰かけた。

 購買部の通路脇に四人ほど座れる長椅子が設けてある。

 二人で座り、楽しく昼をいただいてるとまた風がピューと巻き起こる。

 風は、わざと当たるかのように吹き抜けていく。


 「わわ、ジュースが」


 腰横に置いてあるジュースが倒れそうになり、慌てるフーちゃんがいる。

 いつも風は吹くがそんなに強くはなく足元に抜けるような風だが、この日は違った。

 本当に狙ったかのように吹いてきた。


 「もう、嫌な風。ジュースが危なかった」

 「ほんと。そうだね」


 ぼやく、フーちゃんをよそに、風が吹いている先を睨んだ。


 (生暖かすぎるんだよね)


 頬を撫でた風の()()()が引っかかる。


 午後の日程を終え放課後───。


 ゴミ当番のその日、帰る前に焼却炉へとゴミ袋を捨てるため、二階の鏡があるエントランスを通り過ぎようとすると、【鬼の手】が手招いている。無視をしていると、声までし出した。


 「おいっ、危ないぞ」


 何やら、注意をされたのだが無視をして進むとヒュッと風が横切る。


 「!?」


 持っていた袋が、ヒシッと小さく音を立て、ひと筋切れるとそこから穴が広がろうとしていた。

 慌てて袋を持ち直すとまた、風が通る気配がする。風が来る方向を睨んでいると【鬼】の声がした。神社の【鬼】の声が耳に届くと同時に風が来る。


 (───────!)


 なぜかは分からないが手を広げ、吹いてくる風に合わすように手を差し伸べていた。

 手と風がぶつかり、せめぎ合う空気の渦を感じると、いきなり何かが弾け飛んだ。

 目の前を転がっていく【モノ】がある。


 「?!」

 「だからいうたのに、力を貸そうとって、あ、今貸したな。ガハハ」


 広げた手に重なるように、【鬼の手】があり、弾け飛んだ物体は目の前で黒いすすのように固まると蠢いている。

 ゆっくりと徐々に形作ると姿がはっきりとしてきた。


 「ああ、胴なが、足短く、手にツメ有りの尻尾ながーい【アイツ】だ」


 やはり、【カマいたち】だった。


 「おうよ。このようなモノが祓えんとは、いやはや・・・」


 小言を言う【鬼】が、「またな」と言い消えていき、鏡に巣くう【鬼の手】は、ふよふよと持ち場へと戻った。


 「えっと、あの」


 誰かに、文句を言いたいのだが、鬼たちは消えその落とし処が見つからず、モヤモヤの胸を抱く自分の前に、うずくまり震える【モノ】がいる。

 【カマいたち】は、こちらを見るとシュッと消えた。


 【カマいたち】の、あどけない瞳の向こうは「遊ぶ」ことしか考えていなかった。


 (悪いことをしたのかな。でも、いつまでも「追いつ追われつかくれんぼう」なんてしていられない)


 夏が、来ようとするある日暮れの出来事だった。エントランスの窓からは、うっすらと大きな入道雲が見えていた。


 夏はもう、間近に迫っている。


 夕焼けが映える景色の中、自転車をこいでいると【鬼】と合わせた手は力が入らず、立ちこぎしても車輪は速くならない。

 身体は少し重く、いつもは気持ちがいい帰り道も、ただ疲れる道となった。


 「ただいま」


 いつもは十五分で帰れる道が、三十分もかかり、へとへとになる自分がいる。

 玄関に腰を下ろし、土が付いているシューズをぬいでいると叱る母の声がする。


 「こらっ、体操着。なぜ切れてるの。もう、買えへんから縫うけど、これ破いたら、知らんよ、冬もショート履いときや」

 「ブゥ─────。わかりました」


 【カマいたち】のセイで切れたロングパンツだが、そのようなことは言える訳がない。


 仏頂面をして犬の散歩に出掛ける。


 いつも通り、神社の門構えの狛犬と目が合うと鳥居をくぐり抜け、境内に向かうところで声がする。


 「ガハハ、来た来た。どうだ、あれから()()()は」

 「・・・・・・・」

 「ン?どうした」


 語りかける鬼の姿は相変わらずの大きな牙、太い毛むくじゃらの腕、たくましい胸にひょうきんな腰布を巻いている。

 少し変わったところと言えば、あんなに吠えていた犬が今は、余裕を見せ後ろ足で首をかきむしる。


 「・・・・」

 「なぜ、無口なのだ。しかも顔は仏頂面ときている」


 顔をしかめる鬼に、溜息をつくと真っ直ぐに鬼を見つめた。


 (どうせなら、カマいたちが手を出す前に助けて欲しかった。そしたらパンツのことも怒られることはなかったかも───)


 「後の祭り」だが、起こったことについて怒る自分を、鬼にはどう映るか分からないが半分八つ当たってみた。


 話しを聞いた【鬼】は、ただ笑うだけ笑うとある駆け引きを持ちかけてきた。

 その駆け引きにこちらも同じように笑い返した。


 空を仰ぐと見事な枝ぶりに空の景色は途切れているが、濃い紫の雲を広げていた夕焼けは、紺色へと変わり枝の隙間からは、キラキラと輝く星が散りばめられていた。



お疲れ様、ありがとうございます。

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