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グレイ・スカイ ー解放への闘諍ー  作者: 嶺司
バルセル・グレイニア戦争
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第64話 笑い

タバルニア沖。

第一空母打撃群旗艦、空母「ソリュー」


あの作戦から俺らは出撃することなく、ひたすらに待機が続いていた。


あの作戦、グレイニアが立案したバルセル南岸爆撃で俺たちは敵の待ち伏せに会い、オメガ隊は4機撃墜され、11機から7機に減っている。3番機の町田も落ち込んでいるだろうが気丈に振舞っていた。


俺からしたら生き残れただけでも儲けもんなんだが、初めてのまともな作戦だったひよっこ部下からしたらキツイものがあるだろう、出撃前に一緒に飯を食っていた奴が帰ったら居ないんだから。


部下のケアも大事な仕事だが、大丈夫と言われたらそれ以上は何も出来ない、本当に大丈夫なのか?


そして、いよいよ出撃の時が来た。


オメガ1、3、4だけでグレイニア解放空軍拠点、トモパーレ飛行場への援軍。


飛行長はこう言っていた。


「これで戦線が安定、もしくは好転しなければエルゲートはこの戦争から撤退する」


別にそれ自体は俺は何とも思わなかった、しかし、第一陣から行っている笹井達はなんと思うだろう、あいつの事だ、最後までいる、とか言い出しそうだな。

俺はその時どうすればいいのだろう。


自室。


出撃は明日、しばらくここには帰って来れないだろう、3番機の町田と、4番機の柿本と話し込んでいた。


「本当に良かったのか?行くのは俺だけでも良かったんだぞ?」


行く人数は何人でもいいと言われていた、全員はさすがに面倒みきれないので考えていると手を挙げたのがこの2人だ。俺はただ援軍ついでに知り合いに会いに行く、そんな軽いノリだった、そこで敵と戦っても生き残れる自信があったし。だけどまだまだひよっこの町田と柿本は生き残るだけでもやっとだろう、下手をしたら死んでしまう戦いになるかもしれない。


「ここまで来たら隊長について行きます」

「ブルー隊ともう一度一緒に戦ってみたい、てのもありますね!」


町田の理由は嬉しかったが、柿谷がブルー隊と一緒に飛びたいか、悪いとは思うが鼻で笑ってしまいそうになる。


まあ、憧れるのは大事な事だ、笹井に技術の差を見せつけてコテンパンにしてもらうことにしよう。


「前回みたいに爆撃機を守ればいい、そんな簡単な戦いじゃないからな。防空戦はしんどいぞ」

「分かってます」

「頑張ります」


まだまだ、俺の説教じみた話は続いた。


※


9月27日。

トモパーレ飛行場。


憲兵から連絡があったそうだ、僕含めた隊長の3人がいつものミーティングルームに呼ばれる。


「キールが全部話したそうだ、バルセルに我々の情報を流していたらしい」


ツルギさんとルイスさんはだろうなと言った感じだが、僕はマジか、だった。そのような素振りを見たこともなかったし、いったい何時その情報を渡していたのだろう。


「だから爆撃の時に待ち伏せにあったのか・・・・・・」

「今後はその心配がないにしても注意は必要ですね」


注意ねぇ、注意したところで降りかかる火の粉は払うしかない、やることは限られる。


「それでだ、ルイス達を信じたいのだがそういう訳にもいかなくてな。イスタンの憲兵本部に出頭してくれ」

「了解です」


いくらルイスさん達がしたことでは無いにしても僚機がやった事、そりゃ捜査対象になりますよね。下手したら僕達も捜査されるんじゃないだろうか、ルイスさんもそれは分かっていたようで短く答える。


それに運がいいのか彼らの戦闘機もまだ修理中、言い方は悪いが特段居なくても困らない、タイミング的には大丈夫だ。


「そしてもう1件、エルゲートの増援が来る予定だ、この前作戦を共にしたオメガ隊の内の3機、受入準備をよろしくな」

「お、オメガ隊、来るんですね!」


ツルギさんは嬉しそうにしたいたけど、僕はなんだがか胃が痛かった。気にしてないとは言ってくれていたけど、僕のせいで僚機が落ちている、正直なところあまり会いたくない。面と向かって会ったことは無いけど、ツルギさんに怒鳴っていたし、なんだか怖そうだ。


そして次の日に、エルゲート汎用青迷彩色のF/A-18、3機がここトモパーレ飛行場に到着した。


●


9月28日10時。


エルゲート海軍空母「ソリュー」から来たF/A-18が滑走路へと降りてくる。


機体色はミサキさん達と同じ青迷彩、機首には斜めに赤の1本線が描かれ垂直尾翼にはΩの部隊マーク、オメガ隊だ。ツルギさんに聞くとあの赤の線は艦載機マークらしい。昔はエルゲートには4隻の正規空母を所有していて、空母によってその本数が違ったらしいのだが、前の戦争で3隻が沈没、今となってはその意味はあまりないらしい。


3機は駐機場に止まり、キャノピーが開くとパイロットが降りてくる。


1番機、オメガ1のクロキさんは、意外にもイケメンだった。整った顔立ちで言ってみればジュノン系か、身長も高く見上げる格好だ。言動が怖かったからてってきガテン系かと思っていた。


そして、2番機のマチダさんだったかな?彼はどちらかと言うと僕やツルギさんぽい感じで、子供っぽさがあった。でもツルギさんには負けるけどね。

3番機は名前は分からないけど好青年と言った装いで、軍人っぽくスポーツ刈り、2人の後ろを自信なさそうに歩いていた。


僕達は彼らを歓迎する。


「お久しぶりです、黒木さん」


先に知り合いのツルギさんが挨拶を交わす。


「相変わらず男か女かわかんないですね笹井さんは、会えて嬉しいよ」


ツルギさんの肩をバンバンと叩くクロキさん、空ではもっと砕けた感じで喋っていたと思うけど、取り乱していたからかな?今はちょっとだけ丁寧語になっている。上下関係が全く分からない、まあでもツルギさん21歳だし年上部下って感じなのかな?


「おおっ!大尉になってる!」


僕のことかと思って一瞬身構えてしまったが違った、ツルギさんがクロキさんの階級章を弄っていたのだ。


「まあね、これでも中隊長だから」


ニコニコと笑いながら言葉を交わしている、んー、あんなに怒鳴ってたのに嘘みたい。


「あ、水咲さんも啓さんも昇任してるじゃないですか!」


ニコッと笑って返すミサキさんに、物静かにペコりとお辞儀をするケイさん、ちょっと微笑んでいる気がする。


「相変わらず仲が良さそうで良かった。水咲さんも元気そうで」

「ありがと、真くんも相変わらずそうで良かった」


そりゃ積もる話もあるだろう、旧友がニコニコと会話を続ける、僕達に入る隙は無くどうしようかと思っていると。


「改めて紹介するよ、3番機の町田と、4番機の柿本だ」


彼の後ろにいた2人が前に出る。


「町田悠中尉、24歳です。ここに来たからには足でまといにならないように頑張ります」

「柿本修中尉、24歳です。またブルー隊の方に会えて光栄です!」


ビシッと敬礼するマチダさんとカキモトさん、続いてツルギさんが挨拶して握手をしていると2人は恐縮そうにしていた。ツルギさんイエローラインって通名あるぐらいだしそりゃ有名か、彼の後にあんまり自己紹介したくないな。


「グレイ隊隊長のレイ・アスール大尉です。歳は、20・・・・・・」

「えっ!?」

「20!?」


歳は言うべきではなかったか案の定驚かれる、僕が1番驚いてます!なんなら!


「ツルギさんだって21歳ですよっ!」

「「嘘っ!?」」


親友を売ってやる、それは効果てきめんで2人は彼の年齢を知らなかったようだ、そりゃそうだよね、言われなきゃ歳とか気にならないだろうし。ツルギさんもハハハ、と笑いながら首元を掻いていた。


「なんか、笹井さんとアスールくん似てるね」

「へ?ちょっ!」


問答無用で僕の頭をわしゃわしゃと撫でてくるクロキさん、なんでみんな僕の頭を撫でるんだ!初対面なんだから自重して欲しい。


「弟っぽいところとかさ」


弟っ!似てるねって言われるのはなんだか嬉しかったけど、弟!困惑しているとクスクスとどこからか笑い声が聞こえてくた、ギロっと振り返るとチグサとナナリスが慌てて姿勢を正すが目元口元が堪えきれていない、今にも吹き出しそうだ。


「なんで笑うの!!」

「だって・・・・・・レイが」

「弟っぽいって・・・・・・」


今にもダハハと腹を抱えて笑いだしそう、2人はお互いの肩を掴んで堪えていた。誠に失礼である!


※


ここは楽しそうな所だった、戦争中だと言うのに笑い声が絶えず、それこそ端島時代を思い出してしまう。

笹井さんと水咲さん、啓さんの3人は相変わらずラブラブで、笹井さんが何かを言わない限り常にくっついて行動を共にしている。


アスールくんの方もなんだか放ってけない感じなのだろう、同じ隊員の女性3人を入れ代わり立ち代わり相手にしていたと思うと、今度はみんな揃って言い合いを始めていて、それでも間に挟まれている彼は笑っていた、相当仲がいいんだと思う。


まだもう1つライド隊と言う隊があるらしいが、いろいろあって今は不在らしい。

俺たちは案内されたプレハブで荷解きをしていた。


「黒木大尉」

「なんだ?」


顔を上げると町田がベッドに座ってこっちを向いていた。


「ここいいとこですね、気に入りました」

「どうした急に」


艦では見たことのないニヤケ顔、嫌な予感しかしない。


「いえ、艦みたいに鬼みたい厳しい人いないし、みんな楽しそうだし、みんな可愛いし・・・・・・」

「おいおい、あんまり気を抜くなよ」

「分かってますよ」


確かにここは戦線のはずなのに全く緊張感が無い、スクランブルが無ければ平和そのものと言った感じだ、グレイニアからバルセルに攻撃を仕掛ける事もそうそう無いだろうし、前回の爆撃は別として基本的には来た敵を対処する、そう言っていた。


「それと、笹井さんの傍にいた2人には手を出すなよ、あの人たち笹井さんにゾッコンってやつだからな」

「えぇぇ・・・マジですか」


落胆する町田、狙ってたのかよ恐れ多いにも程があるぞ。まあ、水咲さん超絶美人だし、啓さんも基地でファンクラブがあったって聞いたし、気になるのは仕方ないと言えば仕方ないか。


「あのカエルラ中尉たちはどうですかね?」


アスールくんの傍にいた、魅力的な黄色い瞳で片側の前髪を編み込んだ金髪ショートの美女チグサ・カエルラさんも気になっている様子。こいつ、空母あんまり女性がいないからって手当り次第だな・・・・・・。


「お前見てないのか?アスールくんにピッタリだっただろ、無理だ無理!」

「じゃぁ!」

「あの小柄なルリ中尉も無理!アスールくんの膝上に居るなんて普通じゃないだろ。柄の悪そうなシュツット中尉もお前なんか見向きもしないだろうな!」


そもそも戦地で恋人を探すんじゃない、自分からフラグを立てにいってどうするつもりなんだこいつは。

ズーンと暗くなって町田はまだシーツも張っていないベッドにふて寝してしまう。


「この基地キライ・・・・・・」


まったく、変なやつだ。

ガチャ。

不意にドアが開く。


「柄が悪そうはひどくなぁーい?」


そこに居たのは金髪アシメで片方髪を刈り上げ耳と下唇にピアスをつけたナナリス・シュツット中尉だった。あー、聞かれてたか、ちょっと軽卒だったな謝っておこう。


「すいません、こいつが気になってるみたいで」

「ちょっ、大尉!」


ちょっと面白そうだから売ってみた、こんなことで怒るような人でもないだろう。一方の町田は恥ずかしいのか枕で顔半分を隠している。


「あら、私の事ぉ?ありがとっ、でもごめんねぇ、私にはレイしかいないからぁ」


語尾を甘ったるく伸ばしふわふわした言い方の彼女、色っぽいウィンクを町田に飛ばしていたが、あいつはどっちの意味か知らんが轟沈していた。


「あ、そうそう、荷解きが終わったら待機室に来てねぇ。ここ出てすぐの建物だからぁ」


それじゃ!っとすぐに出ていった。ただ伝言を伝えに来たのかな?


「ほら見ろ言わんこっちゃない」

「この基地嫌いだ!」

「まあまあ・・・・・・」


彼らのおかげでここにも笑いが絶えなかった。


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