第65話 死ならば諸共
《敵機探知、12時方向ぅ!》
ナナがレーダーで敵機を捉えた、今のところ10機。
白い奴が来ないことを祈ろう。
《ラプターが隠れてるかもしれない、みんな周りに気をつけて》
しかし、祈ってばかりもいられない僕は念の為みんなに注意を促す、と言ってもあいつは神出鬼没にも程がある、突然現れるし注意のしようがないんだけども。
《おいブルー1、ラプターって?》
あ、大事なことをクロキさんに説明してなかった。バルセルに純白のF-22、馬鹿みたいに強いやつがいることを。
《ん?あー、言うの忘れてた。白崎が敵にいる》
《は?あいつは死んだはずじゃ・・・・・・》
《説明すると長くなる、帰ったら説明するよ》
《んなの忘れてたで済まされるか!今しろ!すぐしろ!》
このクロキさん戦闘機に乗ると性格変わっちゃうのかな?地上にいると砕けてはいるけど丁寧語で話しているのに、えらく怒鳴ってツルギさんに説明を求めている。まあ、ツルギさんが結構適当っていうのもあると思うけど。
《え、隊長、白崎って・・・・・・》
それについては町田さんも気になっている様子。
《ああ、元俺の2番機だ》
んなんと!オメガ隊欠番の2番機があのF-22のパイロットのシロサキ!?
いったいこれはどういう運命の悪戯なのか、にわかにも信じ難い。
というか事情が複雑過ぎて、何がどうなったらそうなるのか全く分からない。
《白崎が俺を逃がしてくれ、あいつもバルセルに逃げたんだけど、そのバルセルとグレイニアが戦争しちゃってるの!》
《なんだそれ、全く意味がわからん!》
僕達こそツルギさんの事情の大体のことは知ってるからなんとなくでも分かるけど、彼からしたら死んだと思っていた僚機が生きていて、何故かわかんないけどバルセルにいて、何故かパイロットになってて、何故か敵になってる。そりゃ意味がわからないと思う。
《事情が複雑なんだって!》
《来ましたよ!グレイから各機、交戦許可》
長くなる前に僕が話を無理やり終わらせて会敵、各隊毎に散開して乱戦になるも敵機の対応を行う。
ビ、ビ、ビ・・・・・・。
早速敵のレーダー照射を受ける、どこからだ?
辺りを見回すも数が多くてよく分からない。すると目の前少し遠くのバルセルの一機がミサイルを放った、誰もまだレーダー照射されてるだけで捕捉されていないと思うけど。
《全機ブレイク!あのミサイルから逃げて!!》
叫んだのはナナだった、その叫び具合からただ事ではないと判断した僕らは何も聞かずに散開、放たれたミサイルから距離をとるように旋回するが、間に合うか?
ズドーーーーン・・・・・・。
《とととっ!》
あまりの爆風に操縦桿をとられる、何事かと後ろを振り向くと空中に特大の火球が出来上がっていた。あれって、どっかで見たぞ。
《気化燃料ミサイル・・・・・・、あっちも容赦しなくなってきたねぇ》
そんな悠長な事を言っている場合では無い。あれは以前、ナナとラナーが無人機相手に使っていた大爆炎を伴う特殊ミサイル、あんなのに巻き込まれたらあの時の無人機のように木っ端微塵だ。
《各機状況は!?》
《ブロッサム1、異常なし!びっくりしたぁ》
《グラム、異常なし》
《エレイン、異常なーし!》
《ブルー隊、異常なし》
《オメガ隊、異常なし、あんなのがあるなら早く言えよ!》
慌ててみんなに異常が無いか確認すると全機異常なし、とりあえずホッとするがまだ空戦は始まったばかりだ。
それにまた、説明を忘れていてクロキさんに怒られる。
ビーーーーッ。
バイザーに警報が表示される、真後ろだ。
振り向いて確認するとミサイルが迫ってきている、敵機も近くにいるし多分通常ミサイルだと思うが、爆発したらお終いだなと頭によぎる。しかし、避けない訳にはいかない、操縦桿を倒し、ラダーとエルロンを調整しコークスクリューでミサイルを躱すと行き場を失ったミサイルは空中で爆発した。
良かった大爆発しなくて。
《格闘戦をメインでやりましょう、そうしたら敵も安易に撃てないでしょう!》
僕達がF-14の近距離で戦えば敵もそう簡単にあのミサイルは撃てないだろう、格闘戦はチグサほど上手くはないけどそうするしかない。
《いい判断だ、ブルー隊、散開して敵機について!》
ツルギさんに褒められる、素直に嬉しい。
《オメガ隊了解、各機散開、孤立するなよ》
ブルー隊、オメガ隊は密集して狙われないように散開、それぞれ敵機を追い追われしている。
《グラムはエレインの援護、ブロッサム1と僕は各個戦闘》
《えぇー、私は1人だと不安なのぉ?》
僕の指示に若干不満そうなナナだが、そういう訳じゃない、まあ心配は心配だが僕だってちゃんと考えてる。
ルリさんは基本的に一撃離脱戦法、アヤメさんが居れば問題なかったが一人だと孤立する可能性が高くなる、だからどちらかと言えばドッグファイトが得意なナナについてサポートした方がいいと思ったのだ。チグサはドッグファイトが十八番だし1人でも大丈夫だと思いたい。
と、説明したいが時間が無い。
《いいから!》
《んもー、エレイン、りょーかーい》
《グラム、ウィルコ》
《ブロッサム1、ウィルコッ》
僕とチグサは散開、ルリさんは分かってくれてるのかナナのように反論もせずピッタリと彼女の後ろにつく。
さてとどうしたものか、敵は回避に専念しているようであのツルギさんを持ってしてでもまだ撃墜はゼロ、キツイ戦いになりそうだ。
いろいろ考えていると、空に30ミリガンポッドの咆哮が響く。
ドドドドド・・・・・・!
と重低音と共に風を切り進むそれは、確実に敵機の翼を捉え粉砕する。
《よしっ!》
さすがはチグサだ、大穴が空き失速した敵機はすぐに翼が根元から折れてきりもみ状態で落ちていく。
チグサが撃墜して10対9となった空戦、数的優位なのだから負けてられない。
《ブロッサム1、ナイスキル。僕の後ろについて》
《ブロッサム1、ウィルコッ》
手が空いたからと言って様子見で離脱させる訳にも行かない、近づきすぎず離れすぎずない距離を保ち僕もドッグファイトに移る。
回避に専念する緑色のF-14をスコープに捕らえるもなかなか照準が合わない、上下左右に不規則に飛び回る敵機、ミサイルも使えるように準備する。
《っと!チグサ!》
《おっとっ!!》
すると急に前を飛んでいた敵機がコブラのような機動で減速、後ろにピッタリとくっついていた僕は慌てて旋回して回避、サポートについていたチグサが咄嗟に機関砲を放ってそれを撃墜し、ヒラリと旋回破片を躱すが。
《レイ!フレア、ブレイク!》
ビーーーーッ!
《くっ!》
ツルギさんの怒号にも近い叫び声にすかさず、チグサと同時にフレアを発射、回避の為に操縦桿を倒した瞬間だ。
ズドーーーーン・・・・・・。
けたたましい爆発音と共に目の前が真っ白になり、先程よりも強烈に機体が揺れる。
機体を立て直そうにも何がどうなっているのかも分からない、たまらず自動水平装置を起動する。
目の前の眩い光線が収まった、まだ目がチカチカとするがすぐに自動水平装置を切って辺りを確認すると、斜め上後方に火球ができたような煙の跡があり、撃墜したはずの敵機が跡形もなく消えている。
《チグサ!!》
咄嗟に探すが見当たらない。どこだ!
《危なかったぁー、大丈夫だよ!》
何とか回避に成功していたようだ、彼女は下から上昇してきて僕の隣に来る。良かった、胸を撫で下ろす。しかし安心するのは早い、まだ戦闘は終わった訳では無いから。
《くそ、味方諸共かよ》
ツルギさんが悪態をつく、殺られるならせめて刺し違えてでも、という魂胆なのか。敵もさらに容赦がなくなってきた。
《次来るぞ、構えろ》
10対8だ、なんとかなるはず。
《エレイン、状況は?》
《当たんないぃぃぃ》
彼女も苦戦している様子、ナナの腕そのものは悪くないんだけど敵に良いように逃げられているようだ。カバーしたくてもあまり密集出来ないし、頑張ってもらうしかない。
《グラムは後方の警戒もお願いします》
《ウィルコ》
ルリさんには仕事が多くなってしまうが他に頼める人が居ない、敵は味方諸共あの特殊ミサイルで葬ってこようとしている、一機でも欠けたらダメだ。いつにも増して神経を研ぎ澄ます。
《おいブルー3、啓!離れすぎだブルー2のサポートに・・・・・・っ!》
何かを察したツルギさんが物凄い機動で風を切りながらクルクルと回って乱戦の場を離脱、レーダー画面上ケイさんの方へとすっ飛んでいく。
彼が気がつくまで分からなかった、敵機を追うあまり空域からやや離れてしまったケイさんの事に。
《クッ・・・・・・》
舌打ちにも似たケイさんの声が無線に響く。
敵機を追ってはいるが若干離されている様子だ。
《必死なあまり周りが見えなくなる、啓の悪い癖だよ》
《・・・・・・すみません》
ツルギさんがケイさんの後ろにつく、何とか攻撃される前に間に合ったようだが、2人はまだ若干みんなから離れている。
僕も援護に回りたいが手が離せない。
彼らの後方、オメガ3を振り切った敵機が彼らに迫るも、ツルギさんは十八番のコブラマニューバで簡単に敵機を落とす。
そこで、ツルギさんとケイさんの距離が再び開いてしまった。
《んなっ!ブルー3避けろ!》
《啓っ!!》
オメガ1が追っていた敵機が、ケイさん目掛けてミサイルを放った。
ツルギさんはアフターバーナー全開でケイさんの元へ急ぐ。
《レイ!前!》
《おっつ!》
心配だが彼ばかり見てられない、ナナから逃げていた敵機が突然目の前に現れ、彼女の叫び声で咄嗟に右旋回、機体の腹と腹が擦れたんじゃないかという近距離で敵機を躱し、機体がぐわんと揺れ後方のチグサも右に旋回しナナを躱す。
《ちゃんと前見てよ!》
《わかってるよ!》
珍しくナナに怒られる。集中だ集中、ツルギさんなら大丈夫、自分の仕事をしないと彼の心配をしている間に殺られてしまう、そう自分に言い聞かし操縦桿を握り直すと。
ズドーーーーン・・・・・・。
《啓ちゃん!剣くんっ!?》
《ツルギさん!?》
《笹井!!》
また空に爆発音が轟き、顔を上げると僕の斜め遠方に巨大な火球が出現した。




