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日記  作者: まつ
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***

ここに来て暫くが経った。生活も安定してきたことだし、日記でもつけようと思い、これを書いている。私の名前は……いや、本名などここでは使われないので、書くのもよしておこう。皆は私のことを『黒い髪』と呼んでいる。ここでは、身体的特徴や、その者が習慣的に行う動作などを呼び名にしている。私は髪が黒いから、『黒い髪』と呼ばれているのだ。なんとも額面通りだ。私は最初、誰かと呼び名が被ることはないのだろうかと思ったが、彼らは少ない人数で村のようなものを作って生活をしていて、村同士はかなり離れた場所にあるらしく、大勢の人間が集まることはほとんどないため、呼び名が被ることはないそうだ。

この世界に来てから驚いたことは多々ある。

例えば今、私が住んでいる家は、動く木なのだ。

この木は『魔樹』と呼ばれていて、人間の魔力をエネルギーにしているらしい。基本的に温厚で優しい性格をしていて、魔力さえ与えればこうして生活するスペースを提供してくれる。が、移動する生活を好まない村の人間には無用の長物らしい。もちろん家具は全て木製で、どこで覚えたのか、洒落た形をしている。ベッドのマットレスすらも木製で、なるべく柔らかい素材を使ってくれているのは分かるが、それでも起きた時に身体が痛くなるのが玉に瑕だ。『魔樹』は火を怖がる為、灯りの確保には苦労したが、村にいる『長い耳』から『光る毛玉』という生物を数匹貰い、それを灯りにしている。『光る毛玉』は、湖によく生息しているらしく、湿った枯葉を主食にしている。発光している毛に覆われた体の一部に小さな口があるだけで、それ以外はただのまん丸な光る毛玉だ。水中でしか生きられないと聞いたので、ビンに水と『光る毛玉』を入れ、部屋のあちこちに置いている。橙や黄などの暖色系のぼんやりとした灯りが木材の家具にとてもマッチしていて、私はこの景色がすごく好きだ。

魔力と魔法についても書いておこう。私を含め、人間や生物はそれぞれ魔力なる物を持っているらしい。村にはその魔力を使って魔法のようなものを使う者がいる。私も魔法を使ってみたいと思ったが、村人が魔法を使うときは、私には理解できない言語を使用していた。『花飾り』に話を聞くと、魔法は、その村の特許のようなもので、他の村の人間に使われないように暗号化しているのだという。もちろん私にも教えてはくれなかった。私の魔力はこの『魔樹』用にしようとそのとき私は諦めた。

ここに来て一番驚いたことはやはり言葉が通じたことだろう。村人など人間を始め、『魔樹』など一定の知能がある生物には話が通じるのだ。もっとも、『魔樹』からこちらに言葉を発してくれたことは一度もないが。村人に、生物同士が手を取り共存しやすいように、神が統一の言語を用意したんだと説かれたが、そいつは皆から『ホラ吹き』と呼ばれているので、この話の真偽は定かではない。

書きたいことは色々あるが、今夜は『垂れた目尻』がご馳走を振舞ってくれるらしい。そろそろ時間になるので今日はここまでにしておく。

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