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日記  作者: まつ
3/3

***

今朝目を覚ますと、窓の外に暗闇が広がっていた。今日は太陽が別の星に遊びに行っている『月の日』と呼ばれる日なので、一日中暗いのは当たり前だが、それを差し引いても暗い。『光る毛玉』を一つ持って外に出てみると、森の中の開けたスペースに、八匹くらいの『魔樹』が等間隔に円を作るように並んでいた。そういえば『長い耳』に、『魔樹』は『月の日』に仲間と集会をする為に森の中に集まると聞いたことがある。『月の日』は太陽の気まぐれで起こるものだと聞いたが、こうやって集まっているということは、『魔樹』達には『月の日』が起こる予兆を感じることができるのだろうか。

『光る毛玉』達に集めておいた『魔樹』の枯葉を一枚ずつ与え、一番明るい子を持ってもう一度外に出る。奥の方の『魔樹』から灯りが漏れているのに気づく。私のように『魔樹』に誰か住んでいるのだろうか。私はその『魔樹』の入り口をノックしてみた。中から出てきたのは、膝くらいまであるブーツに、薄いブランケットを重ねたような服に、羽のついた帽子を被ったいかにもな吟遊詩人だった。彼は世界各地を渡り歩いて、その冒険を歌にしているらしい。村の人達にも人気で、皆から『十二の声』と呼ばれている。『十二の声』の『魔樹』に上がらせてもらった。『魔樹』にもそれぞれ好みや趣味があるようで、『十二の声』の『魔樹』は、家具が全体的に円形をしていた。灯りには『光石』という光る鉱石のようなものを使っていて、山の麓の村に訪れた時に『硬い口』から貰ったのだという。お近づきの印にと『光石』を一つくれたので、お返しに『光る毛玉』を一匹あげた。

折角なので歌を聴かせてくれと頼むと、『十二の声』は嬉しそうに、円形のタンスから琵琶のような楽器を取り出してきた。私たちは『魔樹』たちが囲む中心部に『光る毛玉』と『光石』をまばらに並べ、簡易的なステージを作った。『光石』は寒色系の光のため、色合いもバッチリだった。先程まで枝葉を揺らして会話していた『魔樹』達も静かになり、辺り一帯が静寂に包まれた。

始まる。

『十二の声』はゆっくりと歌い始めた。何を言っているのかは理解できなかった。きっと魔法の一つなのだろう。だが、言葉は知らずとも、彼の辿ってきた軌跡が脳裏に浮かぶようだ。それは、決して特別な景色ではない。草原を歩いたこと、川で涼んだこと、朝焼けを望んだこと、誰かと夕飯を食べたこと。そんなよくある一枚の線画に、彼が言葉を紡ぐことで、色がつき、影がのび、風が吹いて、体温が生まれ、冷たくも、暖かくも、疲労すら感じ、心が動かされる。ふと周りを見れば、『魔樹』が淡く光を放っていた。『十二の声』の歌が、『魔樹』達に魔力を与えているのだろう。この場にいる生物は皆、彼の道のりを辿っていた。

『十二の声』が歌い終わると、私は手を叩き、『魔樹』達は枝葉を揺らして歓声を送った。ステージを片付け終えたくらいに、『魔樹』達はそれぞれ動き出した。解散のようだ。私たちは互いに、感謝と、旅の無事を祈り、それぞれの『魔樹』に戻った。

村に戻り、『ホラ吹き』にこの話をすると、心底驚いたような顔をしながら、とりわけ珍しいことではないなと言われた。素直な奴だ。

夜が明けてきた。太陽が戻ってきたようだ。私はこれを書き終え、硬いベットに向かうとする。

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