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追放された影の騎士は、偽王女に奪われた王都を取り戻す ―本物の第一王女と始める王国奪還物語―  作者: すなぎも


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第41話 会談への出発

 研究所で彼らが過ごしてから三日が経った。


 イオリはラズに影魔法を教わり、アリスはシグレに剣の指導を受ける。魔具や魔法をヒルデが解説したり、時には机を囲んで食事をする。


 短い期間で随分と馴染んだものだった。


 そんな昼過ぎ。卓の上に置かれた通信魔具が、淡く光を放った。


『ヒルデ、聞こえるか?』


 その声を聞いてそれぞれ過ごしていたメンツが卓に集まる。


 最後に現れたのは、魔具の調査をし続けていたヒルデだ。


「聞こえているよ。キミから連絡が来たという事は」


『ノースホルムの件、会える場所が決まった。ただし、王には会えない』


 言い切り方が硬い。交渉の余地はないという言葉だ。


『状況が状況だ。動く者が増えればバレる可能性も増える。だが、間違いなく王へ言葉を届けられる相手だ。どうする?』


 アリスは即答しない。間をおいてから口を開く。


「条件は?」


『二つ。護衛は少人数で、目立たないようにすること。二つ目。護衛に強者を連れてこいとのことだ』


「強者?」


『理由はわからねえ、オレも妙だとは思うが。それが条件だ』


 その言葉に、アリス達は顔を見合わせる。


 剣の腕で言えばラズとシグレは間違いなく強者だ。


 だが、なぜノースホルムがそれを望むのか?


「洗脳して、強い人をアルゲンティアから引き抜くとか?」


「なんにせよ、俺とシグレがいれば問題ない」


「はい。もしラズ様が操られれば私が斬ります。私が操られればラズ様が斬ります。最悪はそれで行きましょう」


「ああ、それでいい。そもそも操られないがな」


 物騒なやり取りをするラズとシグレに、アリスは呆れながらも頷く。


「場所はどこ?」


『ノースホルムにある国境付近の小さな村だ。村の外れに小屋が一つある。三日後の早朝に一度だけ顔を出す奴がいるから、そいつに声をかけろ』


 地図を広げて場所を確認する。


 ここから馬車を使ってだいたい二日。検問を避けて通ることを考えると、早めに出た方がいい。


「念のため聞いておくわ。ドリアーノ、罠の可能性は?」


 改めての問いかけに、ドリアーノは鼻息を鳴らして答える。


『ねえよ。長年取引している相手だ。それに、相手からオレに助けを求めに来たからな。こっちを嵌める理由がねえ』


 アリスはその言葉を聞いて、ゆっくり頷いた。


「わかった。すぐに向かうわ」


『馬車は用意してある。北の商路で赤い札が付いているのが目印だ』


「了解。ドリアーノ、ありがとう」


『恩を返しただけだ。それに、話し合いが上手くいくとは限らねえ。気を付けるんだな』


 不躾に言い、そのまま通信が途切れるかと思ったが。


『頼んだぜ、アリス。セレスティアは変わってねえが、それでも今のアルゲンティアは息苦しい。期待してる』


「応えて見せるわ」


『王になった時に、またお礼をさせてもらうぜ』


「結構よ」


 通信が切れる寸前で笑い声が響いた。


 通信魔具から光が消えると、部屋に僅かな沈黙が流れる。


「アリスくん、魔具は預かっておいていいかな? もう少し調べたい」


「いいですけど……。珍しいですね、ヒルデさんが解析に時間をかけるなんて」


 魔具の開発者であり、すべての魔具を知り尽くすその人。そのはずの彼女が、数日経っても解析しきれないのは珍しいことだ。


「ああ、ちょっと。色々と試したいことがあってね」


 どこか歯切れの悪いヒルデに、しかしアリスは返事を返す。


「わかりました、お任せします。みんな、すぐに行ける?」


 問いかけるアリスに、それぞれが頷く。


「暗部の増援はまだセレスティアに来ていない。行くならいまだ」


 すぐにでも出られると壁から背を離すラズ。


「強者……。少しは楽しめるのでしょうか?」


 不敵に笑って刀を撫でるシグレ。


「むむっ、田舎の小さい村ですか……。美味しいものはなさそうですね」


 言いながら、自分の影に食料をせっせと詰め始めるイオリ。


「食料はラズとイオリの影に入れて、さっそく出ましょう。三日後に間に合わなかったら元も子もないわ」


 それぞれが出発の準備を済ませ、扉に手をかける。


「それじゃあヒルデさん。行ってきます」


「ああ。いってらっしゃい。またキミと話せることを、楽しみにしているよ」


 騒がしい御一行が研究所を出ていくと、広い部屋に静寂が包まれた。


 散らかっていた部屋は彼らが過ごしやすいよう奇麗に片付き、それがヒルデには落ち着かない。


「……全く。なんとも言い難いねえ」


 そう呟いて、ヒルデは一人、研究室へと足を進めた。

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