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【連載版】加護なしの第八王女は、前世が社畜だったので王宮生活がイージーモードにしか見えない  作者: 茨木野


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118/139

118.


 聖王国軍事演習責任者である、ワルイマンは、額から滝のような汗をかいていた。


「き、聞いてない……! 帝国軍のやつらが、こんな強いなんて、聞いてないぞぉ!」


 眼前に広がるのは、見上げるほどの巨大な魔導人形ゴーレムだ。


 魔導人形ゴーレム

 魔(魔法や魔道具)で作られた、意識を持って動く人形のことだ。


 どんなに凄腕の土魔法使いだったとしても、人間の子供サイズを1体、生成・動かすのが精一杯。

 しかし、聖国軍の前に広がっているのは、五〇メートルはあろう、土塊の巨人だ。


 魔導人形を魔法で生成するのも一苦労だが、形を維持する、そして動かすのにも魔力が必要となる。

 しかも魔導人形は、本人の魔力でのみ動く。


 作った人間と、動かす人間は別にできない……はずなのだが。


「ちくしょう! なんだあの化物はぁ!」


 ゴーレムが巨大な腕を振るうと、聖王国兵たちは、まるで突風に吹かれた木の葉のように、宙を舞う。

 歩く都度、こちらの戦力が大幅に削られていく。


 ……ゴーレムを指揮しているのは、金髪の若い男だ。


「このマルコーのゴーレムの威力、とくと味わうといい!」


 マルコーと名乗った少年が杖を振ると、ゴーレムは天高く飛び上がる。

 ……ワルイマンは、直ぐに気づいた。


「に、にげろぉおおお! デカ物がふってくるぞおぉお!」


 五〇メートルの巨人が高所から落下すれば、その衝撃波はとんでもないことになる。

 質量爆弾。


 それが、マルコーの取った手だ。

 あの巨体で、ジャンプするのは本来不可能。


 そもそも巨体を支えるだけで、使い手は手一杯のはずなのだ。

 かがんで、勢いよく飛ぶ。

 その衝撃で本来は足が崩れてしまう……はずだ。


 だが、マルコーはグレース仕込みの、魔力コントロールによって、そんな不可能を可能にしてみせた。

 魔力を素早く足に集中させ、下半身を強化してみせたのだ。


 魔力操作は、体の外に出た途端難易度が跳ね上がる。

 体の中に流れる魔力の方が、操りやすいのだ。

 

 魔力はいわば血液。

 体内を巡らせるほうが容易く、体外に流出した血液を動かす方が難しいといえば、想像しやすいだろう。


 魔力も血液同様、体外に出ると、外気等、外的要因によって形を変えてしまうのだ。

 血が固まってしまうように、魔力もまた同様の変性を見せる。


 体外魔力コントロールは、かなり高度なテクニックだ。

 だが、グレースは、少年兵士たち全員に、この技術をマスターさせたのだ。


 かつて師にして、英雄アレク・デッドエンドから習った、アレク式魔力コントロールを、皆に惜しみなく教えたのである。


 ……飛び上がった五〇メートル巨人は、セイファート平原に、巨大なクレーターを作った。

 落下による衝撃は凄まじく、その場にいた敵兵士たちが皆、大空へと吹き飛ばされる。


 落下した彼らは、手足を折る、折れた肋骨が肺に刺さるなどの重傷を負った。


「なんて……化物を……帝国は生み出してやがるのだ……」


 まだかろうじて、戦意の残っていたワルイマンが、敵を見つめてつぶやく。

 だが……その瞳から、戦意が完全に失われる。


 ……マルコーが、易々と、また五〇メートル巨人を生成してみせたからだ。

 

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