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【連載版】加護なしの第八王女は、前世が社畜だったので王宮生活がイージーモードにしか見えない  作者: 茨木野


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113/138

113.


 一時間後。深夜、ミシェルの寝室に雷が落ちた。


「おまえは馬鹿ですか?」

「ひぃん……早すぎますぅ~……」


 寝室にはミシェルのみがいた。

 ギデオンはカイウスと一緒に別室へ移動してる。


 ベッドの前に正座させられているティル。

 ミシェルはベッドサイドに腰をかけて、コンコンと、ティルにお説教をしていた。


「なんでばれたんですかぁ~……」


(まさかカイウス様が……?)


「カイウスがご機嫌で、ティルからチョコをもらったと」


「なんでー!? うそつきー! あいたっ!」


 ミシェルの容赦ないげんこつが落ちる。

 ぐわん、とティルの体が揺れる。


「カイウスが言ったのは、食堂でティルからチョコをもらったということ。おまえがこっそり備品をくすねて、深夜にチョコレートを食べてることまではいってません」


「ななな、なんで備品をくすねていることを……あいたっ!」


 ミシェルは状況から、ティルの犯行を推理したのである。


「チョコレートにはカフェインが含まれています。睡眠障害を起こしたらどうする。それに、食べさせた後歯磨きはしたのか? おまえは可愛いカイウスを虫歯にするところだったんだぞ」


 いつもの、敬語を使っていない。

 淡々と指摘するのはいつも通りではあるのだが。


 ティルは知っている。

 ミシェルはキレればキレるほど、口調が早くなるのだ。


 現に今のセリフも、とんでもないスピードで繰り出されていた。

 そもそも、ミシェルが手を挙げている時点で、そうとうお冠である(手より口がでるタイプの人間なので)。


「……すみません、少し熱くなってました」


(少し……? 相当ぶち切れていたような……)


「おまえにも、褒めるべきところはあります。お菓子とは、盲点でした」


「ほえ……?」


 このまま懲戒解雇の流れを覚悟していたので、ミシェルからの賛辞に戸惑う。


「封をしているものであれば、カイウスも安心して食べられる。これも気づきませんでした。ティル……ありがとう」


 ミシェルにとって、カイウスの摂食障害は、最大の懸案事項だった。

 ミシェルをもってしても、解決策が思い浮かばなかったのである。


 そこに、今回の一件で、封をしてあるお菓子や、食品ならいける……と気づかされた。

 

「ありがとう、ティル」

「ど、どういたしましてぇ」


 ミシェルから褒められても、嬉しいとは思わなかった。

 むしろ、恐怖を覚えていた。


 何か裏があるのではないかと……。


「さっそくエステラに言って、明日からは、封をした食品を使わせるようにしましょう」

「は、はひ……あ、あのぉ~……」


 一番気になってるところを、ティルは尋ねてみることにした。


「てぃるは、クビじゃないんですかぁ?」

「まさか。ティルは辞めさせませんよ」


 辞められては困る、ではなく、辞めさせないと笑顔で言った。


「おまえは大事な歯車ですから」

「ひぃん、人ですらないぃ……」


「これからも馬車馬のように働いてもらうので」

「やっぱり人じゃないぃ~……ひぃん……」


 ……かちゃり。

 ドアが静かにひらくと、そこにはギデオンと、カイウスが居た。

 カイウスは、ととと、とティルのもとへやってくる。


「ちる。ごめんなさい……。ぼくのせいで……」


 カイウスは、どうやら自分のせいで、ティルが怒られてると思っているらしい。

 本当に、優しい子だ。


 その場にいる全員がそう思った。


「ううん、てぃるのアホが露見して怒られただけなので、カイウス様は悪くないですぅ」


 しょぼくれた表情のティルを見て、カイウスはミシェルに言う。


「ちる、わるくない! ぼくが、わるいから。みえう……おこらないでっ」

「……怒ってません」


 しかし、今までとは比較にならないくらい、あのギデオンすらおののくほどの、恐ろしい表情を浮かべた。


「み、ミシェル……ど、どうした……?」


 あまりにも怒っているようだったので、ギデオンが尋ねる。


「別に怒ってませんけど。カイウスがティルなんぞをかばってるのが羨ましいとか、ティルなんぞと仲が良いのが許せないとか、私のほうがカイウスを愛してるのにこのボケとか、思ってませんよ」


((思ってるんだ……))


 どうやらカイウスに気に入られてるのが、ミシェル的には許せないらしい。


「あ、あのね……てぃるのことは、気にしなくていいですよぉ~……」


 ティルは言外に、あんまり仲良くしないでいいよと、カイウスに伝える。

 だが優しいカイウスは、ふるふると首を横に振る。


「みえう、おこらないで。ちる、ぼくにやさしくしてくれた。ぼく、うれしかったの」


 ミシェルの表情がさらに険しくなる。


「あ、あのね……その、カイウス様ぁ……。あんまりてぃるをかばうのよくないよ……」

「ちるは、ぼくがまもる!」


「あ゛~……」


 ……その後眠くなったカイウスを連れて、ギデオンは素早く退出。

 残されたティルは明け方まで、コンコンと、お説教された(と愚痴を聞かされた)のは言うまでもない。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 いつも楽しく読ませてもらってます!! ちる、何気にカイウスの信頼勝ち得ているので、ワンチャンあるのかも?w そうなるとミシェルが小姑にww 次回も楽しみにしています。
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