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【連載版】加護なしの第八王女は、前世が社畜だったので王宮生活がイージーモードにしか見えない  作者: 茨木野


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111/137

111.


 グレース、エステラによる、軍事達の強化は、順調に進んでいった。

 最高峰の武力を持つ冒険者による指導、そして、最高品質の料理。


 その二つの施策によって、若き軍人達はめきめきと力を付けていった。


「ふむ……」


 場所は執務室。

 ミシェルは報告書を片手にコーヒーを飲んでいる。

 その隣では……。


「ちる、おうま、ちる!」

「ひぃん……もう勘弁してぇ~……」


 ティルが四つん這いになって、部屋の中を這いずり回っている。

 その背中のうえには、ミシェルの大事な子供、カイウス殿下が載っている。


 よほどティルを気に入ったのか、さっきからずっと、ティルとお馬さんごっこをしていた。


 ぺそ、とティルがその場にへたり込む。


「もう無理~……」

「ちる、おうま、おうまっ」

「無理ったらむり~……」


 ちら、とミシェルに助けをもとめ、視線を送る。

 しかし、逆ににらみ返された。


「おまえ……何をやってるのですか」

「何って……お馬さんごっこ……」

「カイウスが、まだ満足してないでしょうが」

「ええー……」


 ミシェルの眉間には深いシワが刻まれていた。

 ティルは、そこそこ長い間、ミシェルの側に仕えていたので理解していた。


 アレは……怒っていると。

 もっとカイウスを満足させるように、お馬さんごっこしろということらしかった。


「ちる、おうま~」

「わかりましたよぉ~……ひんひん……」

「きゃっきゃ」


 ……さて、ティルがお馬さんごっこしてる間、ミシェルは報告書を……しかし、読んでいなかった。

 じっと、ティルをにらみつけている。


「あのぉ、報告書ちゃんと読んでますかぁ?」

「読み終わりましたよ。こんなもの」

 

 こんなものって……。


「そろそろ軍事演習をさせてもよいかもしれないですね。相手は、まあ聖王国がちょうどいいでしょう」


 聖王国とはかつて少しいざこざがあった。

 ミシェルたちを謀ろうとして、返り討ちにあい、以後属国のような扱を受けている。


(哀れ聖王国ですぅ……)


「ちる、もっと、はやう~」


 もっと早く動けとカイウスは、ティルの耳を引っ張って、要求する。


「ひぃん、てぃるのお耳はデリケートなんですぅ。ひっぱらないでぇ~」

「あ……ごめんね、ちる」

「あう……わかればよいですぅ……って、ええっ?」


 ミシェルが鬼の形相で、こちらを見ていた。

 いや、ギデオンのように、般若やアシュラ(異世界にはないが)のような、怒りをあらわにしてはいない。


 ただ静かに、極低温の、オーラを飛ばしてくるのだ。

 スピリチュアルな話ではない。


 こちらに凍てつくような目線を向けてくるのだ。


(ど、どうして~。てぃるは、カイウス殿下の面倒みてあげてるのに~。なんで不機嫌になるのですぅ~)


 すると、ミシェルが自分たちの前へとやってくると、跪いた。


(跪いた……!? って、これって……馬のポーズ?)


 ミシェルが真面目な顔のまま、お馬さんをかたどったポーズを取る。


「カイウス。ミシェル号に乗り換えませんか?」


「み、ミシェル号……」


(これはもしや……羨ましかったのですぅ!? てぃるがカイウス殿下とお馬さんごっこしてるのが!?)


 ティルは合点がいった。

 ちょうどよかった。腰が痛くなってきたところでもあったし。

 ミシェルのご機嫌を損ねるようなことはしないでおこう。


「さ、カイウス殿下。ミシェル様が乗っけてくれるそうですぅ」

「やぁ。ちるがいい~」

「ふぇええ……!?」


(なにゆえ!?)


 ぎゅ、とカイウスがティルに抱きつく。


「ちるが、いい~。ちる、おうま、しゅき~」


(てぃるの馬にするのがちょうどいいって言いたいのかな……って、ああ! ミシェル様のご機嫌メーターが下がっていく! それが目に見えてるぅう!)


 愛しのカイウスを取られたことが、よほど不服だったのか、ミシェルの表情が険しくなっていく。

 そこへ……。


「何をやっているのだ?」

「ぎでおん!」「皇帝陛下! たすけてっ」


 ティルの背中にのったままのカイウスが、明るい笑顔で、ギデオンを出迎える。


「ほら、陛下が来ましたよっ。抱っこしてもらって、ミシェル様とお馬さんごっこしてくださいよぉ」


 カイウスはしばし悩んだ後……。


「やっぱ、ちるがいい」

「ふぇ~……」


 カイウスを取られミシェルが不機嫌となり、ミシェルが不機嫌となったことで、ギデオンの不興を買う。


(地獄絵図ですぅ~……)

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― 新着の感想 ―
ミシェルさん、ティルに厳しい・・・
ティルちゃん、カイウスに気に入られて将来的に結婚相手になりそう?
今回ばかりは、てぃるは悪くない、出会いもないし、帝国内トップ2から不興は買うかもしれないけど、強く生きて
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