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【連載版】加護なしの第八王女は、前世が社畜だったので王宮生活がイージーモードにしか見えない  作者: 茨木野


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108/137

108.


 Sランク冒険者グレースは帝国の若き軍人たちに訓練をつけていた。

 どんな恐ろしい訓練が待ち受けているのか。


 軍人たちは皆戦々恐々としていた。

 だが訓練内容は割とシンプルだった。


 グレース一人に対して、軍人たちが襲いかかる。

 それだけである。


 彼女に一撃でも入れられたらその日の訓練は終わり。

 だが裏を返すと、一本入れるまで訓練は終わらないのである。


 軍人たちは木刀を手に、グレースに四方八方から切り掛かる。

 だが無手のグレースは、敵の木刀を掴み、そして大きく放り投げる。


 軍人たちは木の葉のように吹っ飛ばされて、ぐしゃりと地面に落ちる。


 なんという膂力。

 女子とは思えぬ剛力に、誰もが慄く。


「受け身をしっかりとりな! 戦場ではモタモタしてるやつから死ぬよ!」


 グレースがまず彼らに叩き込んでいるのは、痛み。

 様々な痛みを与え、そしてその痛みからいかに早く立ち直るか。


 戦場では予想外の攻撃がやってくる。

 それに対応できずに命を落とすもののなんと多いことか。


 どんな攻撃が来ても対応できるよう、まずは受け身を身に付けさせる。

 投げ、打撃、締め。


 グレースは一つとして同じ攻撃をしない。

 多彩な攻撃をもってして、若人たちに痛みを、教訓として教えていく。経験させておく。


 本番で、これを味わったことがある、という経験が絶対に生きてくるのだ。


 さて。

 軍人たちは早々にダウンしていた。

 グレースは割と本気で、死なない程度の力で、彼らをしごいている。


 キツい訓練だ。

 当然若き軍人たちはすぐに音を上げてしまう。


 ……ただ一人を除いて。


「はぁはぁ、ま、まだまだぁ」


 マルコー。

 貧乏貴族の子息にして、若き軍人たちのエース的存在だ。


 彼は根性だけは誰にも負けないという自負があった。

 グレースに、何度も投げ飛ばされても、果敢に立ち向かっていく。


 ……グレースはそんなマルコーの、男らしさに心底惚れていた。

 だが、相手は年下だし、教え子だ。


 そんな甘い関係になれるわけがない。

 加えて、グレースは恋愛経験がゼロだ。


 そんなグレースが、好いた男にどういう対応を取るかというと……


「おらぁ!」

「ぶぼぉおお!」


 グレースは本気の拳をマルコーの顔面に叩き込んでしまう。


 マルコーは何度もバウンドし、無様に地面に転がる。


(や、やっちまったぁ……あたしは何やってんだ……好きな男に顔面パンチ喰らわすとか……)


 しかも割と本気の一撃だった。

 並の魔物だったらこれで顔面粉砕されていただろう。

 だが、マルコーは強化魔法でとっさにガードしていたのだ。


 確かに死にはしなかったが、相当な恐怖を覚えたことだろう。

 逃げても仕方ない。だが。


「グレース様……もう一度。ぼくはまだまだ、やれます!」


(か、か、かぁわいい〜)


 グレースは健気なマルコーにメロメロだった。

 さっきまでは本気でぶん殴ったことを後悔していた。


 だが、もうそんなネガティブな気持ちは綺麗さっぱり忘れていた。

 グレースが接近し、そのままタックル。

 またも強烈な一撃を受けてぶっ飛ぶマルコー。


 だが、立ち上がる。

 不屈の精神に、グレースはまた内心で甘い声をあげる。


「マルコーかわいそう……」「教官にいじめられてるぜ」「おいミシェル様に誰か報告しにいけよ」


 軍人たちは、これがグレースの嫌がらせに見えてしまうのも、まあ無理はない話だった。

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― 新着の感想 ―
筋肉ツンデレとか誰得www
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