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魔導学園ラブロジック!-前途多難なフタリのカンケイ。-  作者: 花塩樹圭
第二章 神代大樹と新しい仲間たち

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4/24

田所

オープニング曲『Altair-アルタイル-』

https://x.com/HanashioKikei/status/2069390019262120191?s=20

ツイッター(現X)に動画があります

コピペで飛んでください

 さて、どこの高校も同じなのか。ウワサは光の速さで広まって、次の休み時間には大樹の元へ次々と『来客』を呼び込んだ。

「今度は俺が相手だ!」

「マジかよ…」

 大樹のウンザリっぷり。次から次へとやってくるのは『挑戦者』たち。授業中、あっという間に3人をノしたという話があれよあれよと広まって、まずは2年生の各クラス代表とでも言うべきか、ともかく次から次へとやって来ては難癖をつけて大樹に挑む。しかし。


バキッ


「ガ、アッ⁈」


ガガガガガ…


 なんらダメージを与えることなく、逆に一発でぶっ飛ばされるの天丼状態。

「2年に強ぇのが転校してきたって聞いてきたぜ!」

 2年生が一巡すると今度は1年生が、それも終わると次は3年生が。


「ゲハッ⁈」


ガシャッ ガガガガ…


 殴り飛ばされては机を乱す。

「…もうよくね?」

 結局、放課後までの休み時間ごとに大樹が相手にしたのは計17人を数えた。


◆


 週明けの朝。校門をくぐった大樹の目に異様な光景が映る。

「…祭りでもあんのか?」

 ずらっと、まるで人でできた通路のごとくそれは左右に並び、グラウンドへと続いていた。

「おっと神代。お前はこっちだ」

 昇降口へ向かおうとするその先を数人で塞がれる。そして…人の壁の通りにグラウンドへと誘(いざな)われた。


 グラウンド中央には人垣でできたコロッセウムとでも言うべきか、円形の小さな『広場』があった。その真ん中には、大柄な大樹をさらに上回る体格の男が腕を組んで仁王立ち。

「田所サン、久しぶりに見るぜ」

「戻ってきてたんだ」

「ちげぇよ、あの神代ってのが学校をシメそうだから急遽戻って来たらしいぜ」

 田所真人(たどころまこと)。代之宮高校3年。その姿を学校で見るのはレアケース。普段は「強いヤツに会いに行く」とあちこちに遠征しているのだという。今日は留守にしている間にトンでもなく強いヤツが代之宮へ転校してきたと聞いて『遠征先』から戻って来たのだそうだ。その体格はまるでクマのよう。柔道・プロレスなどの格闘系の身体付きとでも言うべきか。上半身は裸の上から学ランを着ていた。

「アイツ、死んじまったりしねぇか?」

「さすがに田所サンも加減はすんだろうけどよ」

(つまり、コイツがラスボスか)

 『外野席』の話し声は大樹の耳にも届く。実際のところ、田所は現在の代之宮をシメるアタマである。というか、誰一人として敵わない。それは対外的にも同じで、揉め事に田所が顔を突っ込めばトラブルは『無血開城』で解決する。だが、それがゆえに田所の『顔』を笠に着て、大樹の同級生のように調子に乗る者もいたりするわけだ。

「オメェが神代か」

「ああ、そうだ」

 低く唸る肉食獣のような問いかけに大樹は怯むことなく応えた。

「オメェ、代之宮をシメてどうするつもりだ?」

「どうもしねぇよ。あっちが勝手に絡んでくんだよ。オレは飛んでくる火の粉を払ってんだけだ」

「そうかよ。だが、そうも言ってらんねぇんだ。新入りにデカい顔をされちゃぁ立つ瀬がねぇ。ワシらにもプライドってもんがあるんだよ。そんなわけで、神代。ワシはオメェを潰す」

「ケンカするってことか?」

「そういうことだ」

「でもよぉ、オレにはアンタとケンカする理由がないぜ? 何しろオレは平和主義者だからな」

「代之宮の腕の立つ奴をぶっ飛ばしておいておもしれぇことを言いやがる。そうだな、こうしよう。これはゲームだ」

「ゲーム?」

「拳を交えた腕比べ。ただのゲームだ。必要なのは勝ち負けだけ。勝敗さえつけばそれでいい。どうだ?」

「いいぜ。オレは別にこの学校をどうこうしようとか思ってねぇからな」

「おもしれぇヤツだ。学校をシメといて」

 田所は着ていた学ランを脱ぎ捨て、上半身裸となった。

「その力を自慢しねぇとはな」

「力ってのは必要な時だけ出しゃいい。それをひけらかすのは愚かモンのすんこった」

「ほう、おもしれぇ。気に入ったぞ、神代。いいぜ、始めようぜ」

 田所は両手を前に出し、構えをとる。それは、相手を殴ることも捕まえて投げることもできる、そんな構え。幾多の実戦から身に付いた、田所なりの格闘スタイルが滲む。

 一方の大樹は突っ立ったままだ。

「そういや、オメェは自分からは手を出さねぇらしいな。いいぜ、掛かってこいよ。相手のすべて受け切って、その上で勝つってのがワシのやり方だからな」

「なるほど。そんじゃ」


バッ


 それまで大樹が立っていた場所から微かに砂ぼこりが舞い上がる。しかしすでに大樹は田所の真ん前に。

「遠慮なくっ!」

 渾身の右ストレートが田所のボディへ突き込まれた。

「…へぇ」

 大樹はニヤリとした。拳が捕らえたのは間違いなくヒトの体。しかしその手応えは今まで感じたことのないものだった。

「鍛えてんのか?」

 微かに乗った脂肪の先にあるのは強靭な腹筋の塊の存在感。

「いちいちそんなことしてられるかよ。何もかも実戦が教えてくれる。ムンッ!」

 振り下ろされた右拳が大樹の左頬を襲う。ガードの間に合わなかった大樹はそれをまともに受け、吹き飛ばされた。

 が。

「ほう…なかなかやるな」

 何も効いていない。痛がる様子もなく、さらりと立ち上がる。

「ずいぶん身のこなしが速いが、今のを避けようとは思わなかったのか?」

「受けてみねぇと分かんねぇことってあんからよ。アンタ、なかなかいいパンチを持ってんな。見た目だけじゃねぇ、重い拳だ」

「褒められたのは初めてだぜ。なにしろいつもは一発で決まっちまうからな。フフフ、おもしれぇ。さぁ。やり合おうぜ。徹底的にな!」

 田所はニヤリと笑う。

「いいぜ、相手になってやんよ!」

 大樹もまたそれに応えてニヤリ。

 そして。

 壮絶な打ち合いが始まった。まるで約束組手のように、一発ずつ相手に打撃を入れる。拳ばかりか蹴りも。それを、田所はまともに受けて踏みとどまり、大樹も受けては弾き飛ばされた。それぞれの攻撃ターンが巡るたび、足元からは砂埃が舞う。この状況、止める教職員はいないのか?といえば、これが人垣のコロシアムが為せる業、がっちりと詰め合った生徒たちのおかげで中へと入れず、ただ周りをウロウロするばかりであった。


「…いつまで続くんだ、これ…」

「さぁな…どっちかが倒れるまで、じゃねぇかな…」

「そろそろ君たち止めにしてはどうかね…」

 生徒に教職員、大勢のギャラリーたちが見守る中、殴り合いが始まってゆうに1時間を経過していた。

「やるじゃねぇか。それに思いの外、タフだな」

「アンタもな」

 そうして再び殴り合いに。


 田所と大樹、互いの攻撃に間隔が空くようになってきた。

「やべぇな…」

「ああ…」

「何がっスか?」

「こんだけ長引けば田所のヤツ、アレ、使うぞ」

「アレって…?」

「アイツが1年の頃、3年をシメたときに使ったワザだ。それでアイツは1年生で代之宮の頂点を極めたが、相手は病院送りになっちまった。おかげでそれ以来、田所のヤツ、ああして相手の攻撃をひと通り受けてからってスタイルになったんだ」

「そ、そうなんスか…」

「ああ。やべぇんだよ、田所スペシャルってヤツぁ…」

「田所スペシャル…」


(だがマズいな…さすがのワシもこれだけ喰らい続ければそう長くはもたねぇ…)

 その強さがゆえに短期決戦になりがちな田所に焦りが出始めた。

(使いたかねぇが、負けるわけにもいかねぇんだッ!)

 大樹の右ストレート。田所は受けるのではなく、今日初めてそれを避けた。当たるものと全体重を込めた大樹は前へとつんのめる。そこを見逃さず田所は大樹の右手首を掴み、引っ張り上げた。

「ウオォォォォォッ!」

 瞬時に背を向けるとそれまでクマのように大きく立ちはだかっていたその体躯が小さく丸まり大樹の体(たい)の下へ潜り担ぎ上げる。柔道の一本背負いの変形だ。だがここからが違う。

「なァッ⁈」

 股の間へ手を差し込むと、大樹の身体を高々と逆さまに持ち上げ

「上手く受けてくれよッ!」

 掴んだ手首を引き、地面へと投げ落とした。手首を掴まれている以上体を抉れば腕関節を痛め、体は宙に浮いてる上に股間に腕が入れられ身動きは取れない。つまり、大樹に逃げ場はない。


ドォッ …


「…やった…」

「やりやがった…」

 ギャラリーはざわめく。

「…っ…てぇ…」

 とっさに首を引いた大樹は脳天から落下することは避けられた。しかし肩から地面へと投げ落とされたのだ、ダメージは深い…はずなのだが。

「…なるほど、そういうヤツもあるってことかよ…」

 フラつきながらも立ち上がった。

「…マジか」

「あれで立つのかよ…何モンだ、アイツはよォ…」

 その様子にざわめく者。言葉を失う者。

「…コイツを受けてまだ立ち上がるかよ…オメェ、一体何モンだ?」

「…だだの高校生だ。ただし平和主義者だがな」

「ククッ…おもしれぇ。おもしれぇヤツよ、オメェは。ワシはすべてを出し切った。今のを受け凌がれたら出せるモンはもう何もねぇ。だから来いよ。オメェの全力、受け止めてやる!」

 田所は大樹を迎えるかのように両腕を広げた。

「そうかい…そんじゃ…行くぜッ!」

 大樹は無防備となった田所の腹、腹筋の一番厚いところ目掛けて右ストレートを一発。


ズウッ


「…世の中ってな広いもんだ。こんな強ぇヤツが身近にいるとはよ…」

 田所は満足げに微笑みながらガックリと膝から落ち、そのまま地面へと倒れた。最後に立っていたのは大樹。しかし。

「アンタはタフだな…オレは…疲れちまったよ…」

 彼もまた、膝から落ちて地面へと伏せた。


◆


 時は4時間目の中頃。大樹は保健室のベッドの上で目が覚めた。あのあと、大樹と田所は保健室へ担架で担ぎ込まれた。ちなみに田所を運ぶのに4人がかりであった。

 田所はすでに目覚めたかその姿は見えず、保健室は大樹一人。もっとも大樹も、気を失っていたというよりは殴り疲れて眠っていたという方が正しい。

「ふわぁぁぁぁぁ…よく寝た」

 今はスッキリとお目覚めだ。

 教室へ戻り、昼休みは一人静かにカレーパンを貪った。5時間目6時間目も平穏に過ぎ去った。もっとも――――あまりの静かさに授業担当の先生が泣いていた。「こんなに静かな環境で授業ができるなんて」、と。


 放課後。昇降口を出ると、その先の校門前にはずらっと人の壁。明らかに「通せんぼ」が目的である。実際、大樹が通り抜けようとしたら、行く手を塞がれた。

「そこ、どいてくんねぇかな。バイトがあんだ。急いでんだよ、オレ」

 ぶっきらぼうに不平を言う。そこへ田所が現れた――――と同時に。


ザ…


「…なにやってんの、アンタら…」

 一斉に全員が土下座をついた。もちろん田所も。大樹はドン引き。

「神代。オメェに頼みがある」

「…な、なんだよ」

「久しぶりに戻ってみれば、近々代之宮が襲撃される、との噂があると聞いた。一体どこの誰が、何の目的で来るのかは分からねぇ。ただ、ソイツらは強い、とだけ」

「で?」

「神代。ワシは戦う。だが、おそらくワシだけでは足りないだろう。オメェもやってみてわかってると思うが、今のコイツらじゃ到底守り切れねぇ。だから神代。オメェにも一緒に戦って欲しい。今やオメェは代之宮の守り神だ」

 そう言って田所は地に額が着かんばかりに頭を下げた。これに合わせその場にいた全員が同様に頭を下げる。

「はあっ? 何言ってんだ! そんなこと自分らでやれよ! 他人に頼ってねぇで自分たちで何とかしろっ! オレは平和主義者なんだ、巻き込むんじゃねぇ!」

 大樹は困惑しながら怒鳴った。

「言いたいことは分かる。だが代之宮(ここ)を堕とされればワシらは街をブラつくだけでも肩身が狭くなる。店でもなんでも、ソイツらがいるところには頭を下げて出入りしなきゃならねぇ。そんな屈辱、味わいたくねぇんだ。頼む!」

 田所は再び頭を下げた。

「あああああ、もう! 分かったよ、分かった! そんなクダラネェことで頭なんか下げんなって! ただよぉ、ちっとオレにも考えさせてくれよ。もう今週は無理だから来週! 返事すんから!」

「そうか、分かった。いい返事が聞けることを期待してるぞ」

「ったく、そういってプレッシャーかけんじゃねぇよ。とりま、オレをバイトに行かせてくれ! 生活掛かってんだ!」

「そうか、済まなかった。おい!」

 田所の号令で全員が立ち上がり、校門から外まで――――朝と同じように――――人垣の通路ができた。

「「「「「オナシャッス!」」」」」

「…ああ、もう…」

 大樹は頭を掻きながら、くの字に頭を下げた人垣の間を通り抜けていった。


◆

エンディング曲『おおきくなるみ』

https://x.com/HanashioKikei/status/2080624037781193157?s=20

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