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魔導学園ラブロジック!-前途多難なフタリのカンケイ。-  作者: 花塩樹圭
第六章 狂った魔導

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魔導暴走

オープニング曲『Altair-アルタイル-』

https://x.com/HanashioKikei/status/2069390019262120191?s=20

ツイッター(現X)に動画があります

コピペで飛んでください

 4月。

 望陵学園を卒業することはできた黒坂だったが、澪との一件以来、何もかもがうまくいかず、進学も、就職することもできなかった。むしろどちらの進路にしてもそれを真剣にやっていたかというと疑問ではあるのだが。

 5月。

 することもなく宛もなく、ただ街をブラブラしているところで『破界連合』に遭遇した。相手はただのチンピラだと立ち向かうがサボりにサボった魔導がゆえ、連中に先手を取られボコボコにされた。とはいえ向こうも『人材』を探していたのか、『スカウト』された。もちろん連中の手下になる前提で。

「誰がテメェらなんかと!」

 彼の中にもまだ反骨精神は残っていた。一方で破界連合との話の中から興味を惹かれる情報を得た。

 シンタックスエミュレーター。通称「ガジェット」。

 それはスマホのアプリの姿をしていて、基礎構文を学習したときに使ったデバイスを用いる。魔導の経験がなく、またその素養のないものでも、初級者用の構文程度は使えるのだそうだ。そればかりでなく、黒坂にとって吉報だったのは、ガジェットを使うことでAMI値、すなわち魔力が増幅するのだという。黒坂が破界連合入りを断ったのも理由はここにあり、もしも自分の魔導がもっと強力になったのなら… 「人の上に立ちたい」=「人を見下したい」。黒坂のそんな欲望に火が点いた。

 方々を当たり尽くしやっとのことで「それ」を配布する者とコンタクトした。その者は自らを『無邪気なネズミたち(ノーティーマイス)』の一人、と名乗った。黒坂はノーティーマイスの「指令」を受けることを条件にガジェットを手に入れた。

 ガジェットを使った黒坂は、「目の前の世界が変わった」、そう感じた。同じ魔導構文を使っても威力が違う。ガジェットと同時に無敵感を手に入れた黒坂、破界連合の連中と同じ手口で「舎弟」をその配下に置いていった。

 舎弟を増やし意気上がる頃、ノーティーマイスから「指令」があった。『望陵学園を火の海に沈めろ』、と。母校を焼き払う――――黒坂に迷いは無かった。二つ返事でそれを請け、業者に扮して校内にトラップを仕掛けた。女子更衣棟。スプリンクラーの外部弁。望陵学園火災の、原因と拡大の要所となった場所である。

 6月。

 望陵が火災で閉鎖した報を聞き、黒坂は踊らんばかりに狂喜した。続いて彼の耳に飛び込んだのは代之宮高校に乗り込んだ破界連合が壊滅したとのニュース。ザマァ、とは思ったものの、自分の手でそれをブッ潰し、支配下に置くつもりでいた黒坂は目標を失ったことにもなる。

 7月。

 望陵学園の早期再開は抜け殻になった黒坂に眠っていた憎しみを呼び起こすに十分だった。そんな折、再びノーティーマイスから『望陵を乗っ取れ』との指令。行きどころのない怒りを抱えていた黒坂は即答、「舎弟」を集めて『お礼参り』へとやってきたのだ――――


◆


「【泉巾(せんきん)のカランド】!」

 全力で放った炎塊は、またしても澪に止められた。自分の人生を狂わせた少女に。

「だから。そんな出汁をケチったそばつゆみたいな魔導じゃ、何度やっても同じことですよ」

 あまつさえ煽られる。もはや黒坂にとってノーティーマイスからの指令はどうでもよかった。ただただ、目の前に立ちはだかる者を倒さなければ、前には進めない。そう思った。たとえそれが逆恨みだとしても。

「ったく、イイご身分だよなァッ! ぬけぬけと再建しやがって!」

「ぬけぬけとだなんて⁉ 私たちは酷い目に遭った! 火事に遭って! 学校から焼き出されて!」

「クックック… これだから育ちのイイお嬢様は。イイコトを教えてやろう。コイツを燃やしたのは俺たちだ」

「え…」

 澪は耳を疑った。

「コレを。望陵学園に火をつけて燃やしたのは俺たちだって言ってんだよッ! テメェみてェなクソガキと出会ってからロクなことがなかった。それだけじゃねェ。魔導科に進みャあ魔導の力が手に入ると思っていた。ところがどうだ! AMI値は伸びねェ、構文はいうこと聞かねェ。欲しいものが何一つ手に入らねェ! 目障りなんだよ。テメェらも。この学校も。だから跡形もなく灰になって未来永劫この世から消えちまえばよかったんだッ!」

 水膜ドームの中で黒坂の吠える声が響く。密閉されているとはいえ、その声は外にいる者にもちゃんと伝わっていた。

「…言いたいことはそれだけかしら…」

 澪は――――俯いていた。

「…許さない」

 俯き、震えていた。

「…私の…私たちの居場所を…大切な場所を燃やした人… 絶対に! 絶対に許さないッ!」

 顔を上げ、キッと黒坂を睨み付ける。うっすら涙を浮かべて。それは、親である文弥ですら見たことのない、怒りに満ち満ちて爆発しそうなほどの激しい形相。

 黒坂は相手が泣いたら勝ちという価値観の世界で生きてきた。

「許さなかったらどうだってんだァッ? 白鷺ィ。オメェ、風が得意ってワリには俺に使わねぇよなァ。ナメてんのか? それともしょっぺー魔導なんだろ? どうせよォ。いいぜェ使ってみろよ。テメェが得意だっていう風要素ってヤツをよォ」

 だから勝ったとばかりに煽りに煽る。

「…わかりました。ではお望み通りに…」

 自分の煽り文句に酔いしれる黒坂へ澪は静かに告げ――――タクトを構えた。

「風を要素に。我らが神聖なる学び舎に災いを齎(もたら)した愚者へ――戒めの堅槍(けんそう)を。【空穿(くうせん)のアパッシオナート】!」

 タクトはビシッと黒坂を指す。澪の詠唱を受けて黒坂も魔導を放つ。

「【ギガントブレイズクラスター】ッ!」


ゴォッ…


 黒坂が放った炎塊(えんかい)の真ん中に500円玉ほどの穴が空く。炎塊はその穴に吸い込まれるように消え


ブンッ ビシィッ


 空鳴(くうめい)が黒坂の耳元を掠め、水膜ドームの一部を爆ぜ消した。ドームはその口をすぐに閉じるが――――

 澪の魔導『空穿』は簡単に言えば空気の槍。高圧縮の空気塊を作りながら空中を進む。空気塊の周囲は急激にその濃度を下げるためほぼ真空と言ってもいい。それが耳元を掠めたのだ。

「ガァッ⁉」

 空気塊に当たれば穴が空くが、そうでなくとも近くを通るだけで真空が周囲をカミソリのように切り刻む。今黒坂の左耳の縁が切り開かれ血飛沫が舞った。

「【空穿】ッ!」

 今度は右肩を掠める。アロハシャツが断たれ深い擦り傷が刻まれる。

「さぁ、受けなさいッ! その身を以って魔導の何たるかを知りなさいッ! 風を要素に! 愚昧なる魔導の使い手へ! 風の鎧を纏った啓蒙の剛槍(ごうそう)を! 【空穿のアディラータメンテ】ッ!」


ゴアッ ドゴォ


 ペットボトルほどの空気塊が左太腿脇を駆け抜ける。ズボンの生地が斬り裂かれ、水膜では吸収しきれず突き抜けたエネルギーは大地を穿ち飛ばした。

「ヒ ヒィィィ⁉」

 黒坂は蒼褪めその場にへたり込む。だが次々と撃ち込まれる目には見えない空気の槍が、地に着いた手の傍を、力なく下ろした腰の脇を、ガクガクと震える両脚の間を、鈍い音と共に爆ぜながら次々と穿つ。

「ダメぇ… もう保たない…」

 早乙女はドームを維持しようと懸命だが、次から次へと大穴を開けられ、次第にその修復が追いつかなくなっていた。

「澪ッ! もうよかッ! 勝負はついとるけんッ!」

 三浦の叫びは澪の耳には届かないのか槍はうなりを上げ飛び続ける。

 そして


パァッ…


 早乙女の魔導にも限界が来た。水膜のドームが消え去ると空穿はノーブレーキ、先ほどよりも高い破壊力で黒坂の背後を爆ぜ飛ばす。

「澪ちゃんッ!」

 佐伯は澪を止めに飛び出し、抱きかかえようとするが

「キャァッ⁈ な、何(なん)なのこれっ⁈」

 触れることなく弾き飛ばされた。夏の強い日差しに紛れ気付きにくいが、よく見れば澪の全身を光の粒子が多い尽くしている。


 『魔導暴走』


 何らかの原因で制御が利かなくなった状態を、そう呼ぶ。


◆

エンディング曲『おおきくなるみ』

https://x.com/HanashioKikei/status/2080624037781193157?s=20

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