黒坂vs澪
オープニング曲『Altair-アルタイル-』
https://x.com/HanashioKikei/status/2069390019262120191?s=20
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「先輩。私、やります」
黒坂の『挑戦状』に驚いた澪だったが、間もなくそれは強い意志に変わる。一歩、また一歩と進み、黒坂の前に出た。
澪は許せなかった。借り物の力でズルをしていることはもちろんだが、幼いころから世のため人のために役立てるよう身に付け磨いてきた魔導を、悪事のために使っていることを。それは1年前も今も変わらない。今目の前にいるのは黒坂という個人ではなく、悪意の魔導という概念そのものだ。
「うん。分かった」
早乙女は澪の信念を汲み取り、絵筆を振るった。
「要素は水。闇を追加。義なる魔導を使う者。不義なる魔導を使う者。見守る者の安全を確保し、その戦いの場を今ここに――【天球のブリーディング】!」
詠唱と共に現れた水のドームが澪と黒坂を包む。先ほどと違い、透明でありながら光を吸収するように、光沢感が無い。
「澪ちゃん。これで外に漏れる心配はないから。思う存分やっていいわよ」
「はい、ありがとうございます。 …⁉」
水膜に囲まれ、そこから外の様子を見回した時、ヤジウマの人だかりに見覚えのある者を見た。ドキンと鼓動が高鳴る。
(もう…あれ神代君じゃない。教室待機って言われてるのに。 …ふふっ、帰ったら叱ってあげなくちゃね。 …なおさら負けられなくなっちゃった)
見られていると思うせいか、胸の奥が熱を帯びた気がした。だが今はそんなことに構っていられない。澪は穏やかな微笑みをキリっと引き締め、黒坂へと真正面から向き合った。
「黒坂先輩。逃げられなくなりましたけど、いいんですか?」
「ああン? なにチョーシっくれてホザいてんだ? 後悔すんのはテメェの方だ! 1年前の俺と同じだと思ってんなら大間違いなんだよ!」
「スマホ、使ってもいいですよ」
「ナメた口きいてんじゃねェッ! ってか俺はあんなザコどもと違ってもうキメて来てんだ。テメェのAMI値なんかクソに見えるほどにパワーアップしてんだよッ!」
「はぁ、そうですか。それならいつでどうぞ」
「余裕ブッコイてられんのも今の内だけだぜッ! 要素は炎! 灼熱の炎の塊よ。俺の人生を狂わせたナマイキなこのガキのツラを潰してやれッ! 【ギガントブレイズクラスター】ッ!」
前に構えた黒坂の両掌に発生した火の玉はグングンと成長し巨大な炎の塊へと変わる。ひと抱えほどまで大きくなると澪へと撃ち出された。唸りを上げて向かってくる赤く巨大な塊。
ゴアァッ
それでも澪は表情一つ変えない。
「【泉巾のカランド】!」
白く細いタクトがひらりと舞う。
パフォァ…
先ほどプリロードした水要素の魔導は炎の塊を柔らかく受け止めて包み込み、収縮して消えた。アスファルトにわずかな水滴を残して。
「す、すごい…」
見守る1・2年生の誰もが驚愕した。先ほどまで戦っていた3年生に勝るとも劣らない鮮やかさ。何より【水】は別段澪の得意要素ではないことは風紀委員なら周知の事実。にもかかわらず、なのだ。
「器用だな、白鷺クンは」
「当然よ。澪ちゃん、努力してるもの」
それゆえに3年生も唸る。
(やっぱり。何かあるかとは思ったんだけど…炎全体の熱量は高くなってるけどあの大きさで扱えるほど構文精度は高くないから炎が薄い。おまけに本来複数の火球になるはずのものを制御できないからってひと塊で扱ってるんだわ。結局上がった熱量が薄まってただの大きな焚火、いやそれ以下になってる)
一方で黒坂は唖然としている。無理もない、格下と見くびっていた元後輩へ向けて放った全力全開の魔導が、いとも簡単に打ち消されたのだ。そんな黒坂へ澪は冷ややかに告げる。
「何も変わってませんね。相変わらず制御が甘い。そういえば黒坂先輩は3年課程の【光】と【闇】要素も身に付けることなく卒業したんでしたっけね」
「そんなの関係ねぇだろッ⁈ 今の俺のAMI値はテメェのなんかよりも格段にデカいんだッ!」
「まだわかってないのですか? 多分、アナタのAMI値はガジェットとやらの増幅で2.5程度にはなっているでのしょう」
「2.5だとォ? そんなわけがあるか。3なんか余裕で超えてるってェの」
「測定はしたのですか?」
「そんなメンドクセェことするわけねェだろ」
「はぁ… でしょうね。でも、どれほど大きく見積もってもせいぜい2.5あるなし。3なんて出てませんよ」
「な、なんで分かるんだよ」
「そこの校舎の壁。焦がした跡がありますけど、3を超えてるならあんなもんじゃ済みませんよ、普通。私だけじゃなく、他の風紀の先輩たちも、それを見てアナタたちには余裕で勝てる、そう判断したんです。違法魔導を使うみたいだから予測を超える可能性もありましたけど、ちゃんちゃらおかしいですね、所詮は他所からもらった力。単なる能力の水増しですよ。それにいくら大きくったって使いこなせないのなら意味のない無駄な数字。今の炎の構文だって本来AMI3クラス。ただでさえ使いこなせない水増しの魔力に分不相応の構文だなんて、ヘナヘナの長い棒の先に重いオモリをつけて振り回すようなもの。その程度の制御で正しく魔導を学んでいる私たちに何かをしようとか、ハッキリ言います。おこがましい、と」
黒坂はブルブルと肩を震わせていた。怒り。憎悪。なにより1年前の再現と言わんばかりに消された魔導。忌まわしい記憶が黒坂の脳裏を駆け巡り、己の中にあった強者の自負、それを根拠としたプライドを、蹂躙するかのように崩していく。だが、こんなはずではないという思いが、彼をその場に押し留めた。
「後輩のクセに俺に説教する気かッ! 何様のつもりだッ! ヌクヌクと育ったテメェみたいなエリート気取りの魔導使いが俺の人生をメチャクチャにすんだッ! 食らえッ! 【ギガントブレイズクラスター】!」
溜めの間を長く取った火球は先ほどよりもはるかに大きく育ち、澪に向けて放たれた。
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エンディング曲『おおきくなるみ』
https://x.com/HanashioKikei/status/2080624037781193157?s=20




