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魔導学園ラブロジック!-前途多難なフタリのカンケイ。-  作者: 花塩樹圭
第一章

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2/24

いつもの澪。元の澪。

オープニング曲『Altair-アルタイル-』

https://x.com/HanashioKikei/status/2069390019262120191?s=20

ツイッター(現X)に動画があります

コピペで飛んでください


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Altair-アルタイル- 作詞作曲編曲/花塩樹圭


蒼黒(そうこく)の宇宙(そら)彩り

滴る星々

ふと耳を掠めた

何かが呼ぶ声


霧に霞む向こう岸

浮かぶ舟はないけど


眠り揺り起こす

ケモノ 野生の叫び

深い夢へ落ちてゆく


たとえ何も見えなくても

すくむ脚が震えてても

きっと私はそこに辿り着く

心休まる場所へ


今は遠く離れてても

伸ばす指届かなくても

力と絆の光に導かれ

渡る運命(さだめ)の川を


Altair is bright

 朝。通学の時間帯に、校門へと続く歩道には学び舎へ向かう生徒たちで満ち溢れている。その群れを悠々と追い越していった白い大きな高級セダン。その車は校門前に横付け――――しかし歩道からは1m少々離れて停まり、ハザードを焚いている。全幅2m弱、全長5m超の巨体がさらに歩道から離れて停まっているのだ。地元民からは「オオクマ通り」と呼ばれるこの道路、交通量のわりには道幅が狭く、なおかつバス通りでもある。軽自動車ですら横付けなど不可能。必然的に後ろはつっかえて渋滞を起こし始めている。しかも恐ろしいことに、この車のリアトランクのスリーポインテッドスターの隣に燦然と輝く初心者マーク。

 しがみつくようにハンドルを握っていたその運転手はドアを開け車道へと颯爽と降り立つと、速やかに、しかし優雅に左後部座席へと回り、そのドアを開けた。

「到着しました」

 運転手が着ているのはメイド服。つまり――――かれんである。

 ということは――――乗っているのは澪である。

「あの、はい、ありがとうございます…」

 こちらも慣れた所作で優雅に車から降り――――たりはできなかった。

(ひぃぃぃぃ…めだってるぅぅぅ…っていうか渋滞してるしぃぃぃぃ)

 と、小さく身を屈めながら後部座席から這うように出てきた。

「でっけぇ車…」

「めっちゃ高級車来てるんだけど? 誰? 芸能人?」

「でもこれ…バンパーヤバくね?」

 車の四隅には満遍なく擦られた跡がある。白い塗装が削られ剥き出しになったバンパーの黒い樹脂が、深々と刻まれた生傷のようで痛々しい。

「行ってらっしゃいませ、澪様」

 日頃と同じく、恭しくお辞儀をするかれん。

「う、うん。行って参ります」

 突き刺さる視線から逃れようと、カバンを頭に翳す澪。

 衆目が集まる中、助手席のガラス窓がスルスルっと下りた。

「澪ちゃーん! 行ってらっしゃーい!」

 助手席にはメイド服のひよりが乗っていた。窓から身を乗り出し、両手をブンブン振っている。その声は昇降口まで届いたようで校舎内に収まろうとした誰も彼もが振り返っている。

「う、うん。行ってきます…ひぃぃぃ」

 小さな悲鳴を上げながら、澪は小走りに昇降口へと向かった。

(あー、もう、目立っちゃってるぅぅぅ…けど送ってもらってるんだから、これは甘んじで受け入れるしか…)

 澪が校舎内へ消えるまで笑顔で見送ったかれん。

「さ、ひより。帰るわよ」

「うん。 …今日は大丈夫?」

「だ… …大丈夫よ」

 その笑顔を引き攣らせながらひよりに応えるかれん。運転席へ戻り再びハンドルへとしがみついた。四隅の『撃墜マーク』を増やさぬよう祈るばかりだ。


◆


 澪が登校したのは県立湘桜(しょうおう)高校。彼ら望陵学園の生徒は母校が火災で焼けて使えないため、一時的に他校へ転入となった。ただ1校丸ごとを引き受ける余裕はなく、各学年各クラスバラバラで、県内あちこちの高校へと身を委ねることに。一部は廣塚(ひろつか)望陵の姉妹校である東北の千代(ちしろ)望陵や九州の神前(こうざき)望陵へ赴いた者もいる。急な転入で学科を選ぶことができないため、魔導を極めたいという強い意思を持つ者にはそうした措置が図られたのだ。湘桜は普通科なので、しばらく澪たちは魔導から離れて暮らすことになる。

「うひぃぃぃぃ…」

 鞄を頭に載せながら、澪は2年3組の教室へ忍び込むように入ってきた。

「澪、どったの? 雨降ってきた?」

 澪には幸いなことに紗々羅が同じクラスとなった。

「人の視線がぁ…」

「まぁしゃーないね。だってあーんなおっきな高級車で来りゃ、そりゃ目立つって。チャリで来ようよ、チャリで。一緒に登校しよ?」

「それは無理」

「なんで? チャリないの?」

「電動があるけど…無理」

「まさか澪様。チャリに乗れない、なんてことは…」

「う、ううううううう」

 まるで道に迷った子供のように澪が泣き出した。

「あー、ごめんごめん、いいんだよいいんだよ、チャリに乗れなくても」

 半泣きの澪をいい子いい子しながら抱きしめる紗々羅。

「あー、もー、かわいいなぁ、澪はぁ。チャリの乗れない澪は推せるよー」

「ぐすんぐすん。だいたい、直列に並んだ2輪で前に進むってことがおかしいのよね」

「…なんて?」

 今しがた半泣きだった娘が、それがさも当然とでもばかりに主張する。

「だって、地球には引力ってあるじゃない? 前に進まないと横に転ぶんだよ?」

「…澪のお父さんって元科学者の学者さんで校長先生だよね? その娘がそんなこと言ってていいの? 大丈夫なの白鷺家? 転ぶ前に進めば?」

「ペダルを踏んでも進まないのよ」

「電動でそれって… …筋トレしよっか」

「その筋トレをするための筋肉がないのよ」

「…うん、分かった。何も言うまい。キミは明日からもずっと注目されたまえ」

「うううううう…」

 そして半泣きへと戻る。


◆


 翌朝。


ヴォウ ヴォウ…


 誰もが振り返るほどの爆音をまき散らし、2ドアの青い国産スポーツカーが湘桜校門前へ横付けされた。

「なんだよ今日は。あれって86だろ?」

「ちげーよ、エンブレム見ろって」

「…あ、マジだ。スバルってことはBRZか」

「しかも初期型RA Racingだぜ? 車高もペッタンペッタンに下げてるし、マフラーも太(ぶっと)いし。ロールゲージも入ってんよ。あれ、ガチのドリフト仕様だな。誰だ乗ってんの。あんなので公道走っていいのか?」

 噂の車の運転席から颯爽と降りてきたのは、黒いパンツスーツをピシッと着こなした女性――――美影である。

「澪さん、到着しましたよ」

 かれんと同じように助手席のドアを開け、同乗者の降車を促す。

「あ、ありがとうございます…」

 降りて…いや、這い出てきたのは、もちろん澪。

「すみませんね。普段乗ってる電気自動車、車検に出してまして。大丈夫でしたか?」

「いえ、あの、だ、大丈夫、です…」

 大丈夫ではなかった。ガチッガチに固められたサスペンションと道路の微かな段差が織りなす微かな車体の揺れのハーモニー。それは澪の頭をシェイクし続け、澪は短時間のうちに車酔いで「できあがって」いた。

「慌ただしくて済みません。私、これから仕事へ向かいますのでここで。では」

 と、颯爽と車に乗り込むと、爆音を轟かせ去っていった。

「ありがとうございます… う… …うぇッ…」


◆


 望陵学園の炎上から2週間が過ぎようとしていた。散り散りになった仲間同士、LINQ(リンク)のグループチャットで連絡を取り合えばそれぞれ達者でやっていることは確認できる。

「静かね…」

 昼休み。昼食を取り始めた澪は、ふと窓際を見て呟いた。

 高校生の昼休みともなればワイワイとしてそうなもので、実際この3組の教室も、在来生を中心にワイワイガヤガヤしてるのだが、それは澪の耳には届いていないようだった。

「澪さ、なんかここんとこ元気ないよね」

 机を向かい合わせている紗々羅が言う。

「そんなことないよ? 普通。いつも通りよ」

「…そうかなぁ…」

 無機質とまでは言わないまでも、抑揚幅の狭い澪の言葉に、紗々羅はいまいち納得できない。澪は笑顔。あるいは白鷺家の御令嬢ともあらば、と言えなくもない優雅さではあるが、紗々羅はどこなくそれが気に入らない。

 紗々羅は一向にこちらへ向かない澪の視線を辿った。

「ひろっちが気になる?」

「そんなことないよ?」

「会いに行けばいいじゃん。男しかおらんけどさ」

「行きづらいじゃない。それに私、自転車乗れないし」

「そっかぁ…」

 紗々羅は普段も澪がやはりお嬢様だな、と感じることがあるし、逆にそれに振り回されるのも悪くないとも思っている。むしろかわいいとすら。だが今は、そうしたわがままっぷりではなく、自分の言葉が何か見えない壁に阻まれているようでもどかしい。

「…澪、アンタさぁ、ひろっちと一緒にいたときの方がなんか輝いてたよね」

「私LED電球じゃないわよ? それにあんなトラブルばかり起こす人、近くにいない方が穏やかでいいじゃない。風紀委員でお世話係でって、呼び出される回数が2倍になるのよ?」

「…そっか。まぁでも、昔に戻った、とも言えるのかな? ウチはピカピカの『輝き澪さん』の方がイイと思うけどな」

「何言ってるの? 私は毎日穏やかに暮らせればいいの。それだけだから」

「…ふぅん…そっか」

 ここまで――――澪は紗々羅の方を一度も見ることなく、ずっと窓際の方を見つめていた。


◆


「ただいま。澪様、おつかれさまでした」

「澪ちゃーん、おかえりー!」

 迎えに行っていたかれんと共に澪も帰宅し、ひよりが元気に出迎えた。それはいつもの日常の風景ではあるのだが。

「かれんさん、お迎えありがとうございます。ひよりちゃんも。ただいま戻りました」

「…うん。お帰りなさい… …あの、澪ちゃん?」

「ひより」

 何か言いかけたひよりの言葉をかれんは少し強い調子で遮った。

「澪様。お疲れのようですのでお部屋でお休みください。夕食が準備できましたらお呼びしますので」

「うん。ありがとうございます」

 澪は軽く一礼すると、自分の部屋へと下がった。

「…ねぇお姉ちゃん。やっぱり元気ないよね、澪ちゃん」

「うん。環境が変わって大変なんでしょうけど…どう励ましてあげたらいいのか…」

 かれんもひよりも澪の微かな変化には気付いていた。それでも普段通り、澪には努めて笑顔で接してはいるのだが。

「かれん。ひより」

 二人に声を掛けたのはメイド長の菫(すみれ)。

「…はい!」

「おばあちゃん?」

「二人が澪様のことをよく見ていて、心配するのは結構なことです。しかし…私たちは澪様を見守るのが仕事ですから。澪様から何か言ってこられるまで待ちましょう」

「…はい。分かりました」

「うん…」

 その後、澪は一人で黙々と夕食を取り、「ごちそうさまでした」と言ったきり、静かに自室へと戻っていった。


◆

エンディング曲『おおきくなるみ』

https://x.com/HanashioKikei/status/2080624037781193157?s=20


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おおきくなるみ 作詞作曲編曲/花塩樹圭


わたしのなまえは おおきくなるみ

いまはちっちゃい おおきくなるみ

じかんがたてば そだつはず

わたしのこころは おおきくなるみ


わたしのなまえは おおきくなるみ

おおきくなりたい おおきくなるみ

おおきくなったら できるはず

なんにもできない おおきくなるみ


まるごとたべてほしい

まるごとパクリとたべてほしいの

やさしくたべてほしい

やさしくペロリとたべてほしいの


わたしのなまえは おおきくなるみ

みらいにひろがれ おおきくなるみ

おおきくおいしくそだっても

まるごとたべたら たねはだしてね

ペッ

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