フィィィィィーッ!
オープニング曲『Altair-アルタイル-』
https://x.com/HanashioKikei/status/2069390019262120191?s=20
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「よっ! 久しぶり!」
「おう、久しぶり。元気そうだな」
「まぁな」
6月26日16:30。廣塚駅南口噴水広場に次々と人が集まっている。その顔触れ――――2-B。
◆
その2日前、2-Bのメンバーが喫茶店カペーロに集まっていた。
紗々羅の呼びかけが急だったこともあり来れたのは廣塚市内で別学校に移転した近場の者たちばかり。それでも今日は体育会・文化系・帰宅部・ギャル系の代表格とも言える面々と、澪と紗々羅が加わり、2階の窓際席のテーブルをくっつけて囲んでいた。澪は一番奥で壁と紗々羅に挟まれて小さくなっている。
「やー、よく集まったねぇ。みんな遠いところからありがとー。そんで、話の中身っていやLINQで送った通りで、今代之宮にひとりで転校になっちったひろっちを助けてやりたいってことなんよ。そのへん、言い出しっぺは澪ってことなんだけど、みんなどうなん?」
音頭取りとしてまずは紗々羅が発言。集まった顔ぶれの様子を伺った。しばしの沈黙を破り口火を切ったのは、何でもハキハキと物を言う、水泳部の岬粋だった。
「ってかさ、澪ちゃん、なんでそんなこと私らに相談するの?」
「あ、の、ごめんなさい」
責められたと思い、澪は顔を伏せる。しかし意外な粋の言葉。
「そうじゃなくて。私らさ、澪ちゃんがやるよ、って言えばみんな行くよ? やるよ?」
「…え?」
そしてそのさっぱりとした言い切り様に驚き、俯いた顔をハッと上げた。さらにクラス内文科系代表格、和道部の橘桃子が続く。
「だってさ、今まで私たち、どれだけ澪ちゃんのお世話になってると思う?」
「黒坂先輩をシメてから学校の空気が変わったからな」
「そのかわり天城先輩がデカい顔するようになったけどね」
サッカーのクラブチームの練習を蹴ってきた岡部祥吾の言葉に帰宅部の西口司が一言余計に継ぎ足した。澪はそこに天城の名が出てギクリとする。そのムードを打ち消すように物理部の小林大海。
「でもその天城先輩もシメたんだろ? 2-Bどころか学校全体が白鷺さんのお世話になりっぱなしじゃね?」
そして紗々羅と同じギャル仲間でありながら大樹には塩対応だった野元亞里亞も。
「ってかさー、神代もさー、陸上で活躍してたじゃん? 午前の部のポイント、逆転してんじゃん? アレ、あのまま行ってればアタシら優勝だったんじゃね? それなのにPMピンチって聞いてアタシら何もしないってのはなくね?」
誰一人として『それ』に反対する者はいなかった。
「みんな…」
陳腐な言い方ではあるが、澪は感激していた。感激に震えんばかりだった。普段、目立たないよう慎ましくしていた自分を、これほどまでにみんなが見てくれていた。それに――――転校してまだ一週間そこらしか一緒ではなかった大樹を、ちゃんとクラスの一員として思ってくれていた。今はこんなにも散り散りなのに、クラスの心は一つ。そのことがこの上なく嬉しかった。
「ありがとう… ありがとう…」
口からは感謝の言葉が、目からは涙が止めどなく流れ出す。
「もー、澪ちゃん泣くことないじゃんかー。ウチら友達じゃん。仲間じゃん」
「今はバラバラでも2-Bの魂は一つ、ってね。 …なんか羽川みたいなこと言ってんな、俺」
「そうそう。まずは級長の羽川に連絡しないとね。やっぱ2-Bはアイツが引っ張らないと」
「それじゃみんなで分担して全員に声かけよう。とにかくもう残された時間があんまりないから、急いで連絡しないとね。とりあえず都合付く人だけってなるけど」
「そんじゃここにいるみんなで連絡網回してまずは連絡じゃん? とりま現場に来れた人だけでも行こうじゃん?」
◆
そうしてLINQを通じて連絡を取り合い、澪の意思が次々と伝えられていった。その結果、噴水広場に集まった中には県内各校へ散った者ばかりでなく、千代や神前の望陵へ移った者の顔もある。連絡のつかなかった松尾と安倍(もちろん大樹もだが)を除いた全員が、次々と集結する。
「いや~揃ったねぇ。そんじゃ羽川っち、音頭取りよろしく~」
「それじゃあ…って言いたいところだけど、今日は白鷺さん発案の集まりだろ? それなら白鷺さんが頭をやるのがいいんじゃないかな?」
「おう!」
「それな!」
「え…私が…?」
予定調和のごとく澪は躊躇するが
「ご指名だよ! ほら、澪。みんなにあいさつ!」
紗々羅に押し出され、輪の中心に立った。
「うん… あの、今日は私のわがままに付き合ってくれて、みんなありがとう」
その表情。立ち姿。そこにいるのは普段の自信無さ気な澪ではなかった。
「わがままなんかじゃないよ」
「そうそう」
「ふふ、ありがとう。今日はふつつかながらこの私、白鷺澪が先頭に立たせてもらいます。 …聞くところでは、相手は違法魔導を使うそうです。正しく魔導を学ぶ私たちにとって、それは忌むべき存在。望陵魔導科の精神を以って、立ち向かわなければなりません。でも何をしてくるか分からない人たちだから…ケガのないように、みんな気を付けて。それじゃ行きましょう」
「みィちゃんみィちゃん。フィーやろ、フィー」
「え…」
クラスでは子犬のように元気な尾関愛波のリクエストに戸惑いを見せたのはいつも通り――――だが、今日の澪は一味も二味も違う。
「あ…うん! 行くよっ! 2-Bィィィ…フィィィィィーッ!」
闘志漲る顔つきにキリっと切り替わると力強く拳を天へと突き上げた。
「「「「「「「「「「フィィィィィーッ!」」」」」」」」」」
そんな澪に合わせ27人分の勝鬨が夕方の噴水広場に轟き渡る。そして澪を先頭に『闘い』の場へとゾロゾロ歩き出した。
「澪~。それ何入ってんの?」
隣を歩く紗々羅は澪の左手に握られた薔薇の柄が描かれたショッピングバッグに目が留まる。
「あ、これはね…」
中を見た紗々羅は驚きと笑いと呆れの入り混じった複雑な表情。
「あー…なるほど。これ着るの?」
「…うん…気合とか入れようと思って…ダメ、だったかな?」
「いや、いいよ。うん、気合入れていこう!」
「うん!」
わき目も振らず真っ直ぐ前を見て歩く澪。久しぶりに見る親友の明るい表情に紗々羅は
(…ハリキってるなぁ…)
と、ほっこり笑みを漏らした。
◆
エンディング曲『おおきくなるみ』
https://x.com/HanashioKikei/status/2080624037781193157?s=20




