やっぱ見てる人は見てるんだよ
冒険者試験の当日。
川で溺れている子供を助けたりしているうちに、
冒険者試験の時間が過ぎてしまって、不合格になってしまったフィデリス。
◯登場キャラクター
フィデリス 人族 16歳
冒険者になるため、苦手な水泳を克服するべく特訓をする
アマリリス 人族 16歳
フィデリスの幼馴染の少女
ナターシャ 人族 29歳
フィデリスの水泳の教師 王国騎士団所属
ラスキー 獣人族 7歳
犬の獣人 年齢はフィデリスよりも下だが、身体は立派な大人(獣人族の寿命はだいたい15年くらい)
冒険者認定試験の時間に間に合わず、試験を受けることもなく不合格……。
「フィードくん、私もずっと教えてあげてたくらいだから、ホントはどうにかしてあげたいんだけど……フィードくんだけを特別扱いをするわけにもいかないのよね。ギルドのことになると、私個人だけでなく、王国や貴族のほうも絡んでくるから」
ナターシャ先生も、ホントに気の毒そうに言ってくれた。
いや、もちろん特別扱いなんてしなくていいし、むしろ俺のミスなんだから仕方ない。
「いえ、それは全然大丈夫です。冒険者になるのが一年遅れるくらいなんで、それまで鍛練ができます」
冒険者認定試験は中央都市マグヌスの特設会場で行われていたが、そこにはたくさんの、冒険者になるために集まってきた者がいた。
「フィード、残念だったな……一足先に頑張るからよ、お前も早く合格してこいよな」
これは獣人族のラスキー。年齢は七歳だが、もう身体は立派な大人の身体で、四年前の時よりも更に強そうになっていた。ちなみにラスキーは初めの頃はからかってきたり、冷やかしてきたりだったんだが、つまるところ構ってほしかったらしい。
もちろん俺もアマちゃんも、ラスキーの友達になった。
「ホントだよ〜、まさかラスキーに先越されてしまうなんてな〜。大丈夫、すぐ追いつくし、追い抜くから、それまで待っててくれよな」
横でアマちゃんが聞いていて、俺以上に落ち込んでしまっている。
「フィードくん……ごめんね、私が試験の時間ちゃんと見てなかったから。すぐに向かえば間に合ったかもだったのに……」
「アマちゃん全然気にしないでよ? 冒険者の資格より、溺れそうになってた子供を救えたんだから、そのほうがよっぽどカッコイイじゃん」
俺は、自分でも強がりかなと思ったけど、俺がクヨクヨしていたら、アマちゃんも元気出ないだろうから、いつも以上に笑って見せた。
それが翌日になって、急展開が起きた。
◇ ◇ ◇
最近日課になっている、朝の鍛練をこなしていた時のことだった。
「フィードくん!! フィードくん!! 聞いて聞いて〜!」
猛ダッシュで走ってきた、アマちゃんが危うく俺にぶつかりそうになる。
俺はそれを両手で受け止め、聞き返す。
「どうしたのアマちゃん。そんなに急いで」
アマちゃんは全力で走ってきたからか、息を切らしながらゆっくりと話す。
「あのね……はぁ……冒険者。はぁ……冒険者に……なれるよ!」
え。どういうことだ?
「アマちゃん、落ち着いて。冒険者がどうしたの?」
「フィードくんの再試験が認められたの! あの川で溺れていた貴族の子供が。この中央都市マグヌスを治めるラジール家の跡取りだったらしくて」
え! あの子供、そんなにお偉いさんの子供だったんだ。でも、貴族がいくら言ったとしても、ギルドも簡単にはオッケーしないような。
アマちゃんが説明してくれた内容をかいつまんで言うと。
この都市を治めているマグヌス伯爵っていうのは、結局管轄は都市丸ごとらしくて。もちろんその中に商店やギルドや、色々なところも絡んでくるらしく、ある程度口利きはできるということだった。
もちろん人の噂だけで、動くことはないんだろうけど、あの時に子供を助けたあとにやってきた貴族連中の集団の中に、ギルドを管理しているマーズ子爵も居てたらしい。
結局は特別扱いということになるのかもしれないけども、俺が人助けをしたという事実が、冒険者の役割りであることと繋がっていたこともあって、今回は特例ということだった。
もちろん、再試験に合格しなければダメなんだけどね。
「そんなことって、あるんだな……」
アマちゃんは説明をしながらも、目を潤ませていた。
「良かったよね。ホントに良かった。フィードくんのしてる良い行いを、やっぱ見てる人は見てるんだよ」
アマちゃんは最高の笑顔を見せてくれた。
そして、俺に思いっきり抱きついてきた。
「フィードくん、大好き。やっぱりフィードくんはカッコイイよ」
俺はアマちゃんをしっかりと抱きしめ、そして優しくアマちゃんの可愛らしい頭に口づけした。
「まだ試験合格してないんだけどね……まぁ頑張るよ。俺も大好きだよ」
◇ ◇
そして、数日後にあった再試験。もちろん俺は合格。
その後、冒険者になれた俺は父親の指南の元、仕事に励み、少しずつ蓄えをしていった。
そして、約束していた通り、俺はアマちゃんと結婚をしたのだ。
アマちゃんを妻に迎え、俺はとても幸せだった。料理の得意な母親に教わったのか、アマちゃんはとても料理上手で、冒険者の依頼でヘトヘトで帰ってきた俺のことをいつも労ってくれた。
俺は力仕事などはできるが、細かい作業は苦手で、そういうところは彼女がいつもサポートをしてくれる。
どちらかが上と言うことはなく、お互いに助け合っていける関係を築いていけた。
「いつもありがとうアマちゃん。これからも出来ればずっと俺の側にいてほしい。いつも寄り添ってほしい」
「と言っても、お仕事の時はフィードくんが旅に出ちゃうんだけどね〜! あまり長く旅に出ちゃったら、私、他の男の人のこと好きになっちゃうんだからね〜!」
冗談まじりで彼女は言う。そんなところもいじらしく、可愛いなと思った。
「あ、もしアマちゃんが大丈夫なら、今度の依頼は港町ポルトゥスなんだけど、一緒に海に行く〜??」
「それは却下です! 私に水飛沫をかけないでよ〜!」
相変わらず、水は苦手なアマちゃんなのであった。
まさかまさかの逆転劇で、
フィデリスは冒険者になることができました。
アマリリスとも結婚して、幸せな生活をこれからも送っていくことになるでしょう。
めでたしめでたし……
なのですが、その後のフィデリスとアマリリスのお話を少しだけしておきたいと思います。
次がエピローグとなります。
オマケ:とある吟遊詩人のエルフのつぶやき
「あの人族の坊やの子供が助けを求めている時に、自分のことを顧みず助けに飛び込めるのは、真の勇者だね。まぁ僕が魔法でサポートしてなかったら危なかったかもだけどね……まぁ、たまには人助けもいいよね?」
上の画像は、今回のエピソードのイメージイラストを生成AIを利用して作ったものです。




