アイス オブ ルビー
猛特訓の末、キックアンドスティックを習得出来たフィデリス。
特訓のあと、マグヌスの市場にアマリリスと向かう。
夏と言えばやっぱり……?
◯登場キャラクター
フィデリス 人族 12歳
冒険者になるため、苦手な水泳を克服するべく特訓をする
アマリリス 人族 12歳
フィデリスの幼馴染の少女
水泳の特訓のあと、俺はアマちゃんといつもの屋台が並んでいる市場に向かった。
ここ中央都市マグヌスは、多種族国家であるため、どうしても色んな種族に対応するための飲食店や小売店が必要になる。
食べ物や飲み物の好みはもちろん、着るものや装飾品、家に飾る調度品なども種々雑多なのだ。
「アマちゃんは、かき氷食べたいの?」
俺は歩きながら聞く。
「うんっ、だって暑いんだもん。フィードくんは水の中で涼しそうにしてるけど、私は見てるだけだし。たまにかけられる水飛沫くらいだもんね〜」
いや、遊びでしてるんじゃないよ。
「そんなに見てるだけが暑いならアマちゃんも一緒に水の中に入ればいいんじゃない?」
「なんで私が入らないとダメなのよ〜、水苦手なのに! てか、いつも水飛沫かけないでよね〜」
じゃあ見学するなよ。
そうそう、いつも俺が特訓をしている、箱型水泳特訓装置なんだけどね。なんか水がずっと入ってて汚れたり腐ったりしないのか、って思うよね。
俺も詳しくは知らないんだけど、ナターシャ先生が教えてくれたのは、なんか偉い人が作った魔道具の一種らしくて、常に綺麗な水がちょうどいい温度で管理されているらしい。
なんでそんなありがたい物を使わせてもらえてるかって言うと、前にも言ったかもだけど水泳のスキルというのは冒険者になるためには必須なんだよ。
だから、ギルドはもちろん、王国のほうでも水泳のスキルを種族関係なく、たくさんの者に磨いてほしいという考えらしい。
そんなことを考えていると、屋台が見えてきた。
「私、ルビーのかき氷が食べたい〜」
そういう発言を聞くと、アマちゃんも女の子なんだなと思う。ルビーとは赤い色の甘い蜜がかけられていて、凄く綺麗なのだ。確か赤い花の汁に甘い味を付けたようなものと聞いたことがある。
「ん、俺は何か食べてからでいいからアマちゃんのだけ買ってあげるよ。おばちゃん、ルビーのかき氷ちょうだい」
氷屋さんのおばちゃんに注文をする。
「はいよ、銅貨1枚ね〜」
氷屋さんに置いているデッカイ氷は、なんだかすっごく透明でキラキラしていた。
これも聞いた話なんだけど、氷は魔法で作られていて、それを商売にしているところがあるらしい。
氷って、飲み物や食べものを冷やすという役割りもあるし、暑さに弱いものを保存するというのにも使えるみたい。
そのデッカイ氷を器用に小さなナイフでしゃっしゃっしゃっと削って、器に盛るおばちゃん。
「はい、ルビーいっちょう」
「わーい! ありがとう」
アマちゃんは嬉しそうにかき氷を受け取る。
「そこの長椅子に座って食べる? 歩きながらだとこぼしてしまいそうだし」
すでにスプーンでしゃくしゃく食べていたアマちゃんは無言でうんうんと頷いて、屋台の間に並んでいる長椅子に座る。俺もその横に座った。
「フィードくんも一口どうぞ。はい、あ~ん」
子供かよ。と、思いながら一口もらう。
ん、冷たくて甘くて美味しい。
「うまっ!」
「でしょ〜、やっぱり夏はかき氷だよね〜」
いや、俺が買ったやつですけど。でも、アマちゃんに一口もらったかき氷はホントに美味しかった。
そういや、氷屋さんのおばちゃんも言ってたな。体にこもった熱を下げるには氷が一番なんだよ、って。
確かに、すぅっと熱がひいていく気がする。
しゃくしゃくと、木のスプーンをさしながら食べているアマちゃんを見ていると、なんだか小さな子供みたいで可愛らしい。
「どしたのフィードくん? 私の顔に何かついてる?」
「ううん、なんでもないよ。そういえばさ、アマちゃんのお母さんは元気にしてる?」
アマちゃんはお父さんは流行り病で早くに亡くなっていて、お母さんと二人暮らしなんだ。お母さんは冒険者ギルドの近くにある酒場で働いているみたい。
「うんうん、元気過ぎてウルサイくらいだよ〜。あ、ママのお店に、フィードくんのお母さん来てくれる時あるみたいよ」
あ、そうなんだ。全然それは知らなかった。
「うちの母さんもいつもウルサイなそういえば。母親ってどこでもそうなのかな。たぶん父さんが冒険者の仕事で割と外に出てること多いから、吐き出すところがないんじゃないの?」
木のスプーンを僕に向けてアマちゃんが言葉を返してきた。
「そう! きっとそうだよ。大人は大人同士で吐き出しあえばいいと思うんだけどね〜。子供に八つ当たりしないでほしいよ」
なんだか、その様子が想像できる。
アマちゃんが言うように、俺の父は冒険者なので、割と外へ出ていることが多い。
依頼内容によっては何日も帰ってこないこともあるから、やはり母も心配もあるんだろう。
そんな母は、俺が冒険者を目指してること、どう思ってるんだろう。
「あいつ生意気に女の子とデートしてやがるぞ!」
ふと声が聞こえてきた。
なんだなんだ?




