冒険者になる理由
十二歳の少年フィデリスは、水泳の教師ナターシャのもと、特訓をする。
幼馴染の少女アマリリスはそれを応援しているが……
◯登場キャラクター
フィデリス 人族 12歳
冒険者になるため、苦手な水泳を克服するべく特訓をする
アマリリス 人族 12歳
フィデリスの幼馴染の少女
ナターシャ 人族 25歳
フィデリスの水泳の教師 王国騎士団所属
「フィードくんおつかれさま。少しは上達した?」
水泳の特訓のあと、アマちゃんと街中を歩く。俺はこの時間が一番好きだ。
「うん、まぁそうだな。少し掴めてきたような気がするかな」
実はまったく何も掴めていない。だって水にもちゃんと入っていないから。
「そういえばさ〜、フィードくんって、なんで冒険者になりたいの?」
アマちゃんは俺の方を見ながら言った。
「冒険者は強くてカッコいいんだ。それにルミノースに住むみんなの役にも立ってるんだぞ」
父親が冒険者だから、父親みたいになりたい、というのが一番の理由だったけど。それは恥ずかしいから伏せておく。
「強くてカッコいいはわかるんだけど……みんなの役に立つって何?」
「んーとね、冒険者ってただ旅をして、魔物をやっつけるとかだけじゃなくてね。色々な物を作るために必要な素材を集めるっていう大事な役割も担ってるんだ。俺たちが住んでいる家、食べているもの、着ている服、そういう物だって素材がなかったら作れないだろ?」
俺は完全に父の受け売りの冒険者としての役割りについて偉そうに語った。
「なんだか冒険者って凄いね! でも、ずっと旅に出てたら寂しいよ」
アマちゃんはホントに寂しそうな目をする。
「う……大丈夫! そんなに遠くには行かないからさ。冒険者には、大事な人を守るっていう役目もあるんだ」
「フィードくんの大事な人って誰なの……?」
アマちゃんは十二歳の子供のくせに、たまにドキッとすることを言う。いや、俺も同い年なんだけど。
「そっ! いや、それはこれからなんだよ。まだまだ俺たちは子供なんだから、いきなり生涯を共に生きる人なんか軽々しく決めちゃだめなの。あっ、アマちゃん、露店のほう見に行こうぜ」
俺はなんとなくで誤魔化して、アマちゃんを露店に誘った。
ルミノース王国の中央都市マグヌスは、まぁまぁ色々なお店がある。俺たち平民が住んでいる区域や、貴族が住む区域、飲食店や商店もたくさんあるんだ。多種族が混在しているぶん、色々な種族に向けた店舗もあるという感じ。
「わ〜、めちゃくちゃいい匂い! 魚の丸焼きが売ってるよ〜」
魚の丸焼きはホントに美味しそうだ。しかもその場で焼いて売っているからお腹が空いている時とかはその匂いにつられてフラフラと行ってしまう。
ただし。魚の丸焼きはめちゃくちゃ高い!! 銅貨五枚もするのだ。俺の小遣い一ヶ月ぶんくらいだな。
「魚の丸焼き美味そうだな……でも、今日はパンにしよう。俺が冒険者になってたくさん稼げるようになったら、魚の丸焼きたくさん食べさせてやるよ」
魚の丸焼き一本が銅貨五枚なのに対して、パンはまだ安い。銅貨一枚で一袋のパンが買えるから二人でわけることもできる。
これも父が言ってた話なんだけど、魚が穫れるのがマグヌスより少し遠い場所らしくて、その分値段も高くなってしまうらしい。
「うん、フィードくんが冒険者になるの楽しみにしてるね。あ、でも……危ないことはしちゃダメだよ?」
「うんうん、大丈夫。あ、おっちゃん! このパンちょうだい」
パンの露店で、ベーコンを挟んだ柔らかいパンを一袋買った。
俺は冒険者になるという目標を、更に強く意識したのだった。
冒険者になって、俺はこの子を。
アマちゃんのことを一生守ってみせる。
フィデリスはアマリリスとマグヌスの街中を歩きながら、冒険者になるという目標を、更に強くもったのだった。
はたして、苦手な水泳を克服することはできるのか。
◯中央都市マグヌスのプチ情報
ルミノース王国での通貨単位はルミーといい、
銅貨1枚が100ルミー
銀貨1枚が1000ルミー
金貨1枚が10000ルミーである。




