98 12月25日 昼 お誕生日おめでとう。
12月25日 昼 お誕生日おめでとう。
昼食はサンドイッチだった。キッチンのテーブルの上には、大きなお皿に二人分のサンドイッチがピラミッドのような形で盛り付けられている。一つ摘んで食べてみると味は相変わらずとても美味しかった。
挟んである具材はハムとレタスと卵。そのどれもがおそらく長期保存用に直前まで冷凍されていたとは思えないほど、新鮮だった。夏は遥に許可をもらっていたので、冷蔵庫の扉を開けて中を見てみると、その中身は夏の実家の冷蔵庫の中身と、ほとんど変わりがなかった。(夏はよく実家で夜中に盗み食いをしていた)
加工食品が多めだけど、種類も豊富だし、中には高級食材もちらほらあった。普段は食事なんて気にしないのに、変なところにお金をかけている。ともかく遥はここで遊んでいるわけではなくて、きちんと仕事をして、ちゃんと収入を得ているようだ。今更だけど、自分でお金を稼ぐなんて遥はえらいな、と夏は思う。
トマトを一つ取って、流しで洗ってその場でかじってみる。うん。とても美味しい。鮮度も高い。どうやら食品の冷凍技術なども、ドームの外側の世界よりもドームの内側にある研究所のほうが数歩分、進歩しているようだ。もしかしたら遥の作っている食事が美味しいのは遥の料理の腕ではなくて、綺麗な水や新鮮な食材の力なのかもしれない。
トマトを食べて夏は流しで手を洗う。
サンドイッチの盛り付けられたお皿からもう一つ、四角い長方形のサンドイッチを手に取って、それを一口頬張りながら夏が遥の部屋に戻ると、そこに遥はいなかった。照子に薬を飲ませに行っているのだ。それがつまり照子のお昼ごはんだ。
照子は薬で栄養を摂取していて普通の食事をしないから、ここにある食材はすべて遥が食べるために保存されているものだろう。豊富で新鮮な食べ物を揃えてるところを見ると、遥は意外と健康とかに気をつけているのかもしれない。




