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 なぜ黙って拳銃を隠したのか? 武器の持ち込みがだめなら(そう言われたら夏はその指示に抵抗するつもりはなかった)最初に言ってくれればいい。夏は部屋の中を簡単に探ってみる。でも拳銃はどこにも見つからない。

 遥はさっきセキュリティーの話をしていた。個人を認識することができるなら荷物の検査も出来るのではないか? 夏が研究所の中に拳銃を持ち込んだことは、最初からばれていたのかもしれない。ドームの入り口。列車の中。研究所の入り口。……怪しいところはいくらでもある。そういえばキッチンには包丁がなかった。食事の際にもナイフは用意されていなかった。フォークもおもちゃのようなペーパーフォークだった。それどころかこの部屋の中にはハサミやカッターのような刃物は一切見当たらない。研究所のデザインも全体的に丸みを帯びて作られている。どこにも尖った角がないのだ。それは事故防止だろうか? きっとそうだ。刃物がないこともそうだろう。意図的に排除されている。

 夏は改めて机などを触ってみる。軽くて、とても柔らかい。弾力のあるプラスチックのような不思議な素材で作られている。……シンプルだと思っていたけど結構考えて作ってある。優れたデザインはデザインであることに気がつかないくらい自然に受け止めることができる。私には理解できないけれど、利用者に理解できなくてもきちんとそれは機能している。働いている。

 そこまで考えたところで夏はため息をつく。

 それから夏は諦めて椅子に座った。拳銃は見つからない。他に武器になりそうなものもなかった。どうしよう? 武器がないと不安だ。夏は真っ白な天井を見つめる。そこにはいつまで眺めていても全然目が痛くならない不思議な光が灯っている。夏はしばらくそのままの姿勢で思考する。考え込んでいると夏のお腹がぎゅ〜となった。……とりあえずお昼ご飯を食べてからだ。お腹が空いていたら元気がでない。どんどんと気持ちが落ち込んでいってしまう。人は、お腹が空いていては戦うことはできないのだ。


「お待たせ」ドアが開いて遥が部屋の中に戻ってくる。夏はぼんやりと天井を見つめている。

「どうかしたの?」遥が言う。

「ううん。なんでもない」スリープ機能が解除されたロボットのようにはっとした夏が笑顔で答える。

 二人はまだ白い水着姿のままだ。水着の上からお揃いの真っ白なパーカーを羽織っている。

 二人は白い水着姿のままで、お風呂場で一緒にシャワーを浴びた。

 それから二人は水着から着替えをする。夏はいつもの青色のジャージと紺色の制服。遥は白いセーターと白い半ズボンの姿になる。

 着替えのあとで遥はすぐに昼食の準備をするためにキッチンに移動した。夏は部屋の中に戻ると、また一人で椅子に座って真っ白な天井をじっと見つめた。青色の空が見たいと夏は思った。

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