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9 遥 はるか ……早く、大人になりなよ。

 遥 はるか ……早く、大人になりなよ。


 遥は目を見張った。ずっと地下に籠っていた。人に出会うことなどない。誰かが訪ねてくることもありえない。通信は専用回線でしかできない。それも基本、こちらからの定期連絡以外には使用しない。もちろん事前の連絡もない。なのにモニタの画面の中には瀬戸夏が映っている。夏は研究所の入り口の前で腰に両手を当てて仁王立ちをして、入り口ドアの上にある監視カメラを猫のような瞳でじっとにらみつけている。

 その顔を見間違えるはずもない。

 間違いなく、あの夏だ。  

「ちょっと あんたこんなとこでなにしてんの?」

 夏はカメラに向かって文句を言っているようだ。遥はあきれて声が出ない。

「あんたには言いたいことがたくさんあるんだけどさ、……まあ、その、とりあえず疲れたからちょっと中で休憩したいんだけど?」夏はしゃべり続けている。

「ちょっと早く開けてよ。ねえ? もしもし、聞こえてる?」夏はどんどんとドアを叩いている。

 遥はその様子をモニタで観察している。

 どうしよう? たぶん夏は無視しても帰らないだろう。ここまでたどりつくことができただけでも異常なのだ。

(……そう異常だ。今はこの研究所始まって以来の異常事態だ)

 遥は背もたれのある椅子の上で体育座りをしている。そこで少しの間、考えごとをする。

 それから遥は深いため息をつくと、なにかを諦めたような表情をして、一度、にっこりと笑ってから、そのあとで遥は自分の綺麗な右手の人差し指を使って、そっと入り口のセキュリティーを解除した。

 すると、モニタに映っている夏の顔が笑顔になった。

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