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 白いボートはとてもゆっくりとした速度で、地底湖を移動している。どんな原理で動いているのだろう? 遥も夏もなにもしていない。ただボートから周囲を眺めているだけだ。それなのにボートは勝手に、まるで自らの意思を持っているかのように、地底湖の上を自由に移動している。

 どこかで水の流れを生み出したりしているのかな? 夏が確認してみると、地底湖の表面には、かすかに水の流れがあった。

 真っ暗闇の中、夏の視界には遥しかいない。あたりの景色はボート以外はなにも見えない。オレンジ色のランプの明かりの中に夏と遥の二人がいるだけ。

 遥は真っ白なパーカーのポケットから棒付きの飴を取り出し口にくわえている。ボートの中は狭いわけではないが、遥は体育座りで座っている。これらは遥の癖だった。彼女はなにかを口にくわえたりしていることが多い。よく飴をなめているのは糖分の補給とか言っていたが、それは半分嘘だと思う。体育座りもそう。座るときはだいたいあの姿勢で座ってる。学園にいたときはさすがに隠していたようだけど、夏と二人だけのときはだいたい今と同じ感じで、体育座りで座っていた。遥は夏にだけ、自分のそういう、周りの人たちに隠していた面を意図的に見せてくれた。なぜそうしたのか、その理由はわからない。

「泳いでくればよかったかな? ボートだと楽だけどさ」長い沈黙が続いたあとで、夏は遥に話しかける。

「そうだけど、夏。疲れてるでしょ?」遥は言う。……まあ、確かに。 

「そっち座っていい?」

「だめ」遥は飴を口から離す。

「私も飴なめたい。もらってもいい?」夏がそう言うと、遥は無言でパーカーのポケットの中から、もう一つ飴を出して渡してくれた。

「ありがとう」夏は棒付き飴を口にくわえると、遥の真似をしてボートの中で体育座りをした。

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