表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

71/442

71

「夏は自炊はしないの?」遥はフォークでサラダを口に運んでいる。丸くて可愛らしい子供用のようなフォーク。夏のフォークもそれと同じものだ。

「しない」夏は即答する。

「どうして?」

「めんどくさい」夏はバナナを食べる。甘くてとてもおいしい。

 夏は料理がまったくできない。夏は一度も自分で料理をしたことがない。それどころか掃除も洗濯もしたことがない。実家にかかってくる電話にだって出たことがない。手紙もメールも自分で開けたことがない。すべて実家にいる四人の夏専属のメイドさんたちがやってくれる。全員女性だ。それもみんな当たり前だけど夏よりも年上の人。とてもしっかりしている人たちだ。だから夏のすることはなにもない。なにもしないことが夏の役割なのだ。それでうまく経済が回っている。それは夏だけじゃない。夏のご友人たちはみんなそうだった。遥だけが特殊なのだ。世界でも有数の超お嬢様学園に迷い込んだ異物。木戸遥とはそういう人だった。

 そんな木戸遥と瀬戸夏を含む学園に通う可憐で無垢なお嬢様たちとの関係は、まるで舞台のような、演劇のような、一種の幻惑的な、異国からやってきた異邦人と交流をするかのような、発見と驚きの連続だったのだけど、その中でも遥が身の回りのことを自分でやっているという事実を知ったときには、夏はとても大きなショックを受けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ