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……まあ、乗ってしまったからには仕方がない。後戻りもできない。列車が走り出してしまった以上、止まるまで待つしかないだろう。
夏はリックサックの中からスポーツドリンクを取り出して喉を潤す。スニーカーを両足とも脱いで、足を丁寧に揉んでマッサージをする。
それから座席の上に座って、窓越しに外の景色を観察する。緑色の森の景色が窓の外を流れている。
どうせだったらドームの入り口まで線路を延ばせばいいのに……、これではなんのための列車なのかわからない。
列車は目的地まで人や物を運ぶための乗り物であって、目的地についてから利用する乗り物ではないのだ。だけど、そんな意地悪なところが遥にちょっとだけ似ていないこともない。そんなことを考えて夏は少しだけ笑う。
夏がそこまで考えたとき、あたりが急に暗くなった。
「え!? なに?」夏は慌てて席を立つと、もう一度窓越しに周囲の様子を確認する。
暗闇の中にところどころ明かりが灯っている場所がある。それがおそらく線路のある場所を示しているのだと思う。その明かりは列車の前方で緩やかにカーブをしている。しかも先に進むに連れて、徐々に列車の走る高度は低くなっているように思える。どうやら列車はぐるぐると、暗闇の中をまるで螺旋を描くようにして、地下を走っているようだ。
地下?
……そうか。こんなところに隠れていたんだ。道理でいくら探しても見つからないわけだ。