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 しょうがないので、夏はしばらくの間、黙っていることにする。

 この列車に乗るのはもう三回目だ。古風で可愛いデザインをした素敵な列車。列車だけではなく、今にして思えば、地上の駅も地下の駅もシンプルで美しい建築だったと思う。

 地上の駅は森の中に隠されていて見つけるのに苦労した。意地悪な仕掛けだと思う。どうしてあんな場所に駅を作るのだろうか? その意図がまるで理解できない。きっと意味なんてないのだろう。あの場所に、作りたいから、作ったのだろう。

 列車はどんどん暗闇の中を螺旋上に進みながら地下に向かって下降していく。列車の運転は遥の説明通り、シロクジラが管理しているようだ。誰かが乗れば列車は勝手に移動を開始してその人を地上や地下にまで運んでくれる。まあ、便利といえば便利だ。

 このシステムで夏が一番気に入っているところは、人に会わなくてすむことだった。会いたい人に会いにいくために、なぜ会いたくない人とまで会わなくちゃいけないのだろうか? 人はどこにでもいる。人は人と繋がりながら生きている。それがなんだかめんどくさい。人の社会とは未だに不便なこと、そして不合理なことを寄せ集めて作られている。人類はいつになったら人を必要としない社会を築くことができるのだろうか? その日が来るのが待ち遠しい。

 もし、できることなら夏が生きている間にそうなってほしいのだけど、それはきっと無理だろう。人の生み出す製品や技術はどんどん進歩していくけど、人間自体はきっと一歩も前に進んではいないのだ。知識の集積や文明の発展のことを進歩や進化だと勘違いしているのだ。それはとても人間らしい間違いだと言える。勘違いの積み重ねが人類の歴史なのだ。きっとそうだ。

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