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 九十分が経過した。

「夏、起きて」遥は夏の体をさすった。

「うん? ……あ、おはよう、遥」そう言って夏はゆっくりと眠りから目覚めた。


「寒い」と夏は言った。

「あんなところで眠るからだよ。夏が悪い」冷たい。

 二人は一緒に歩いて列車の中にまで戻ってきた。寒いよ。体が冷えきってしまった。夏はぶるぶると一人で震えている。

 列車までの移動の間、夏の体は震えっぱなしだった。あんなところで長い間、居眠りをしてしまったのだから、それは当然の結果だった。夏は列車の座席の上で膝を抱えて震えていた。幸いにも、列車の中は暖房が効いていて、とても暖かかった。そうでなければ夏は今頃、この場で凍死していたかもしれない。夏は体をなるべく小さく丸くした。それは暖をとるための行動だった。

 ……私、なんで寝ちゃったんだろう? 

 それが自分でも不思議だった。興奮してたはずなのに。自分でもよくわからない睡魔に突然襲われて、あっという間に眠ってしまった。起きたときはとても恥ずかしかった。夏は遥の膝の上に頭を乗せていた。

 夏は隣に座っている遥の顔を見る。夏は列車の座席の端っこに、遥はその隣に座っている。夏の視線は自然と遥の薄桃色の小さな唇に引き寄せられてしまう。夏は恥ずかしくて、帰りは遥と手をつなぐことができなかった。今も二人の手は離れ離れになっている。

 遥とキスしたあとで、夏はとても強い幸福感に包まれて、それからすごく眠たくなって、夏は意識を失った。夏はそっと自分の唇に指で触れる。そこには確かに遥の唇の感触が残っていた。あれは夢ではない。現実の出来事なのだ。……ふふ。

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