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「ねえ? 初めてあった日のこと覚えてる?」夏は遥の肩に自分の頭を預ける。
「覚えてるよ。七年前のクリスマスイブの日。夏が私に声をかけてくれた」遥は言う。
七年前のクリスマスイブの日。その日に夏と遥は出会って、その次のクリスマスの日に照子が生まれた。
「学園にきたのはどうして? 私に近づくため?」夏は空を見上げた。
「うん。そうだよ」遥は地面を見つめている。
「学園をやめたのはどうして?」
「必要がなくなったから」
そうなんだ。うん。わかっていた。そんなこと本当はもうずっと前からわかっていたけど、本人の口からそれを聞くのはやっぱり悲しい。私はもう遥に必要とされていないんだ。私はずっと遥を見てきた。でも遥は私のことなんて全然見てなかったんだ。
私の隣には今、遥がいる。遥の存在をちゃんと感じ取ることができる。でも、心の中はどうなんだろう? 遥の中に私はもういないのかな? それとも最初からいなかったのかな?
「遥」夏は言う。
「私たち、友達だよね?」
遥は下を向いたまま黙っている。
夏は空を見上げながら、同じように黙って遥の答えを待つ。
(プラネタリウムみたいに巨大な丸い空間に映像が投影されたような、不思議な雪景色が二人の上空に広がっている。あるいは、その光景は全部、(本当に)偽物の人工的に作り出された映像なのかもしれない。夏の耳に聞こえてくる風の音や草木の音だって、もしかしたら本物ではないのかもしれない。目に見えるものが真実だとは限らない。聞こえてくる音にだって、いつも嘘が混ざっている)
しんしんと音を立てて、雪が降っている。
遥と出会った七年前のクリスマスイブの日はどうだったろう? 外では雪が降っていたのかな? うまく思い出せない。