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 やがて二人は小さな丘の上に出た。そこは夏が今日の夕方に遥の研究所がここにあると思ってたどり着いた場所だった。本来であれば夏の旅の目的地となった場所。でも実際にこの場所にくると、そこにはなにもなかった。夏はすごく落胆して落ち込んだ。夜の中にひっそりと佇む丘をみて、そのときの記憶を夏は思い出している。

 夏はなんだか笑いたくなる。まだあのときから数時間しか経過していないというのに、なんだか、その記憶はとても遠い過去の出来事のように思えてくる。……それはきっと、夏が遥ときちんと再会することに成功したことで、夏の人生がまた再び大きく切り替わったからだろう。

 瀬戸夏は突然いなくなってしまった木戸遥と再会することができた。だからもう遥を探して泣いている夏はどこにもいないのだ。

 二人は丘の上に身を寄せ合って並んで腰を下ろした。ここは遥が将来、自分と照子のための小さな家を建てる予定の場所。遥が照子と二人で一緒に暮らしていこうと決めた約束の場所。夏のいない遥と照子だけの、二人の新しい居場所。

「苦労したんだ。失敗ばっかりだった」暗い空に降る真っ白な雪を見ながら遥は言う。苦労した、失敗ばかりだった、と言っている割には遥の顔は笑っている。

 遥が体を動かすたびに、夏にその運動がきちんと伝わってくる。二人の体はぴったりとくっついている。学園にいたころは、いつも二人はこの距離の中にいた。夏はそんなことを思い出す。

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