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455 記録日付(季節) unknown(誰も知らない) 大好きだよ。君のことが大好き。

 記録日付(季節) unknown(誰も知らない)


 大好きだよ。君のことが大好き。


 やっと君に会えた。

 ……夢じゃないよね。


 夏は真っ白な世界の中にいた。……ううん、違う。きっと夏は雲の上に立っていたのだと木戸遥は思った。

 遥は、夏から少し遠い場所に立っていた。遥が立っている場所は、やっぱり夏と同じ白い雲の上のようだった。

 周囲の世界の風景も真っ白で青色は見えない。(青色は夏の一番好きな色だった)

「遥!! 大好き!!」と夏は両手で口の周りを覆って、遥に言った。

 夏は笑顔だった。

 本当に素敵な、とても彼女らしくない素直な表情をしていた。(それがなんだか、すごく不思議だった)

 遥は夏に会いに行こうと思った。……でも、足がうまく動かなかった。自分から離れておいて、自分からもう一度近づいていくことは、とても勇気のいる行為だった。

 その勇気が、今の遥には、少し足りていないようだった。

「遥ー!! 好きー!! ……大好き!!!」笑顔で、大きな声で遠い場所からまた夏が言った。

「……私も、……私も夏! あなたのことが好き!! ずっと前から大好き!!」と遥は夏に向かって大きな声で言った。

 すると、世界がぼんやりと滲んで見えた。どうやら遥はいつの間にか泣いていたようだった。

「遥ー!! 大好き!!!」と夏は笑顔で言った。

「……私も、夏のことが大好き!!」と遥は泣きながら(夏に負けいないように)そう言った。

 その遥の声が、(ようやく)夏に届いたのかもしれない。

 夏はにっこりと笑うと、それから今度は真っ白な雲の地面の上にしゃがみ込んで少しだけ腰をあげて、陸上のクラウチングスタートの姿勢になった。

 それから少しして、(きっと自分自身でスタートの合図を出したのだろう)夏は全力で雲の大地の上を走り始める。

 そんな夏の様子を遥はただじっと見つめていた。

 遥はゆっくりと雲の大地の上を歩き始める。(今度はちゃんと足を動かすことができた)

 それからだんだんと遥は走り始める。

 遥は自分のところに向かって全力で走ってくる夏のところに向かって、遥は急いで、全速力で駆け出していった。(初めからそうすればよかったと思った)

 夏と遥の距離は、近づいていく。

 夏が遥に、遥が夏に、全速力で近づいていく。

 二人の間にあった距離は、あっという間に縮まっていった。

「遥!!」夏がいう。

「夏!!!」遥が叫ぶ。

 やがて、夏が思いっきりジャンプをして、海の中にでも飛び込むようにして、(体がえびぞりになるくらい思いっきりの勢いで)遥の胸の中にしがみついた。

 そんな夏のことを遥は一生懸命になって、全力で抱きしめた。

「遥。好き」夏がいう。

「私も、私のあなたのことが好き」遥はいう。

「お願い。遥。もうどこにも行かないで」遥を見て、甘えるような声で夏はいう。

「わかった。もう、絶対にあなたのそばを離れない」

 にっこりと笑って、泣きながら遥はいう。

 それから遥は思いっきり、今まで溜め込んでいた涙をありったけ全部溢れ出させるようにして、大きな声を出して泣き始めた。

 白い雲がだんだんと強い風に流されて、薄くなり、青色の空の風景が見えるようになった。

 その青色の空の中に、夏は、ずっと探していた愛を見つけた。


 愛だよ。愛。わかる? (わからないよ。……愛ってなに?)


 サイエンス誌インタビュー記事 質疑応答の時間


 質問者 小さな女の子


 回答者 雨森照子博士


 Q


 愛は世界を救いますか? (マイクをその小さな両手で持って)


 A

 

 はい。

 愛は世界を救いますよ。

 あなたのいる、その美しい世界を……。(とても優しい顔をして)


 大きなたまごの中で、不思議な白い女の子とわんぱくな白いくじらと神様と大好きな夏と一緒に。(全編) 終わり

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