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448 メロディのこと

 メロディのこと


 その風景をみたとき、ホラーはそれが本当の風景だと最初は信じることができなかった。

 そこには白い梯子の終わりがあった。

 白い梯子のとぎれている先にはおとぎ話の通りに扉があった。真っ白な扉。その扉をみて、思わずホラーはまた、(白い梯子をのぼりはじめてから何度も何度も泣いてしまったけど)ぽろぽろと大粒の涙を流した。

 ホラーはなにも言葉を話すことができなくなった。

 ホラーは少しの間、体がちっとも動かせなくなって、白い梯子の上でじっとしていた。

 最後の最後までホラーの邪魔をしていた強い風もいつのまにか吹くことはなくなっていた。

 そこはとても穏やかなところだった。

 ホラーの体はもうぼろぼろだった。(体も心も、今まで生きてきた中で一番つかれきっていた)

 ホラーは最後の力を振り絞って白い梯子をのぼりはじめた。

 そして、ホラーは白い扉の前までたどりついた。

 ホラーの手のひらの中に白く輝く小さな鍵がいつの間にか握られていた。

 ホラーは涙をぬぐって、その鍵を扉の鍵穴の中にいれた。(しっかりと鍵は鍵穴にささった)

 ホラーはゆっくりと白く輝く鍵を回した。かちっ、という小さな音がした。(扉が開いたのだ)それから役目を終えたように、白く輝く鍵は白い羽根のような光になって、そのまま消えてしまった。

 白い梯子はホラーの見えるずっと下のほうで、もう消え始めている。

 ホラーはゆっくりと白い扉を開けてみる。

 その扉は本当に少しの力が開くことができた。

 その向こう側には、……光があった。

 ずっと求めていた光が。

 眩い光が、あった。

 目が眩んでしまうくらいの光。(もっと、よく見ていたいのに、光になれていないホラーはうまく目を開けることができなかった)

 ホラーは泣きながら、扉をくぐって、その光の中にはいっていく。

 ホラーはなにも見えないその眩しい光の中で、自分の足が新しい大地の上についたことを確かめた。

 その今まで感じたことのない新しい大地を踏みしめながら、ホラーは自分が祝福されていると思った。……神様に。……あるいは、大っ嫌いだった自分の運命に。

 おめでとう、ホラー。嘘じゃないよ。私はあなたのことを祝福する。だって私はあなたのことが大好きだから。

 ホラーの目の前でメロディが言った。

「……どうもありがとう、……メロディ」と泣きべそをかきながら、涙で震えるまるで小さな子供みたいな声で、ホラーは言った。

 ホラーはメロディに抱きしめてほしいと思った。

 ……でも、メロディは、……もうきっと二度と会うことのできないホラーの世界で一番の友達の今も流刑地にいるメロディは、ホラーがメロディの胸の中に飛び込むと、そのまま透明になって、ホラーの前からゆっくりと消えてしまった。

 ひとりぼっちになったホラーは夢にまで見た地上で、ずっと見たかった眩い光の中で、新しい冷たくない大地の上に力なくよろよろとしゃがみこんで、そこで思いっきり、……ただ、力いっぱい声の限りに泣き叫んだ。


 流刑地 終わり

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