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 ホラーは白い梯子の前にいつの間にかたっていた。消えてしまった白く輝く小さな鍵はホラーの手のひらの中にあった。

 白い梯子はおとぎ話の通り、ずっと上まで(見えなくなるまで)永遠と続いている。

 ……梯子は長い。どこまでも続いている。想像はしていたけど、実際に見てみると、本当に梯子はとても長かった。こんなに長い梯子を自分は地上まで、のぼりきることができるのだろうか? 不安になった。でも、ホラーの心に迷いはない。ホラーはゆっくりと歩き始めると白い梯子の前まで行って、その梯子にそっと自分の手をのばして、しっかりとその存在を確かめるようににぎった。

 ホラーは覚悟をきめると、白い梯子をのぼりはじめた。ゆっくりと。自分の今までの流刑地での十五年の人生を振り返るようにしながら。

 はじめはとても順調に白い梯子をのぼることができた。体力にも余裕があったし、はしごをのぼることは思っていたよりは大変ではなかった。それには一つ理由があって、それは白い梯子が少しだけ斜めにかたむいていてくれたからだった。(まっすぐ真上にのぼるよりもずいぶんと楽だった)

 白い梯子はホラーの体一人分くらいの幅の二本の縦棒と横棒のついているとても簡単なつくりをしているだけの梯子だったのだけど、とてもじょうぶで、ホラーの体重によって壊れたり、折れたりするような感覚はまったく感じなかった。

「よいしょ、よいしょっと」とまるで穴掘りをするように掛け声をだしながら、ホラーは梯子をのぼっていく。

 どれくらいの時間、のぼったのだろう? もう下を見ても流刑地の冷たい大地は見えない。でも、上を向いてもそこにはなにも見えない。ホラーに見えるのは視界の中に見えるだけの白い梯子だけだった。

 ……つかれたな。もう、やめたい。と手と足をとめて、ホラーは思った。

 やっぱりね。どうせホラーは途中であきらめると思ってたよ。疲れたんだよね。ほら、まだ間に合うからさ、そこから流刑地に戻っておいで。そんなところにいると危ないよ。と言っているメロディの声が聞こえた。

「大丈夫。あきらめないよ」とホラーはつぶやく。

 ホラーは目をつぶる。

 そして少しの間、じっとしている。力をためるように。白い梯子の上でじっと待つ。やがて、ホラーは目をあける。そしてまた終わりの見えない白い梯子をのぼりはじめた。

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