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444 光よ。私を導いて。

 光よ。私を導いて。


 ホラーは三か月まじめに穴掘りの仕事をしてお金をためて、お母さんの獣の頭蓋骨の骨を買った。(メロディには無駄遣いしすぎだと怒られたけど)

 テーブルの上に二つの大きさの違う獣の頭蓋骨の骨を並べて置いて、ホラーは「よかったね」とうれしそうな顔をして骨に向かってそう話しかけた。

 不思議な夢を見るようになったのは、その日の夜からだった。ホラーは夢の中で不思議な光景を見た。そこには空に向かってずっと、本当に見えなくなるまで続いている一つの白い梯子があった。場所はどこだろう? ほとんど風景の変わらない流刑地の紫色に光る水晶のある冷たい大地から白い梯子は空に向かって続いている。その白い梯子を見て、ホラーはもしかしたら『この白い梯子をのぼっていった先には地上がある』んじゃないのかな? と思った。

 そんなことをホラーが思ったのには理由があった。流刑地にはずっと昔からみんなが子供のころに聞かされるおとぎ話がある。そのおとぎ話の題名は『白い梯子』だ。流刑地のどこかには、地上にまで続いている白い梯子があって、その白い梯子を見つけた人は、その白い梯子をのぼっていくと、そのまま流刑地を抜け出して、地上にまでいくことができるというおとぎ話だった。

 ただし地上にいくためには一つだけ大切な条件があった。それは『鍵』をもっていることだ。白い梯子をのぼりきった先には一つの扉があるらしい。その扉は鍵がかかっていて固く閉ざされている。その扉をあけるために鍵が必要になる。もし鍵をもっていなかったら、白い梯子をまた降りるしかないのだけど、白い梯子は一度誰かがのぼってしまうと、だんだんと地上に近い場所から消えて行ってしまうのだそうだ。だから、鍵をもっていなければ、白い梯子をのぼった人はそのまま白い梯子が消えてしまってとても高いところから冷たい大地の上に落っこちてしまうことになるのだ。

 これが流刑地のおとぎ話、『白い梯子』のお話だった。

 さて、このおとぎ話を聞いて、みんなが疑問に思うことがある。それはこの白い梯子のおとぎ話は読む人、あるいは聞く人に白い梯子を『のぼれ』と言っているのか? それともそうではなくて、『のぼるな』言っているのか? そのどちらなのかということだった。

 起きる時間がきて、うっすらと目をあけたとき、その手の中に眠る前はもっていなかった『白く輝く小さな鍵』を自分が大切ににぎりしめているのを見つけて、ホラーはまだぼんやりとする頭の中で、その自分の手のひらの中にある鍵を見ながら、……子供のころの私はどっちだって思っていたんだっけ? とそんなことを懐かしい記憶を辿るようにして思った。

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