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429 流刑地 よいしょ、よいしょっと。

 流刑地


 よいしょ、よいしょっと。


 穴を掘る。穴を埋める。


「よいしょ、よいしょっと」

 その日、地下のずっと奥深くにある、太陽の日の光の届かない、真っ暗な地下の世界で、きらきらと輝く紫色の水晶の明かりを光源にして、いつものように、ぽっかりと空いた巨大な空間である流刑地で、死者たちを埋めるために、一生懸命になってスコップで穴を掘っていたホラーは、もうこんな仕事(あるいは、人生)は辞めたいとある日唐突にそう思った。

 確かに私は流刑地に生まれた存在であり、こうしてこのよくわからない地下のぽっかりと空いた巨大な空間の中の世界で、その地下の世界の硬い(まるで氷のようだった)地面の上にさらに死者たちを埋めるための穴を掘ったり埋めたりする仕事として人生の生業にしているわけだけど、そんなことは私が望んだことでは決してないのだ。

 ああ、もうこんな暮らしはたくさんだ。

 どこかに逃げ出したい。

 できれば、ずっと憧れている地上に行ってみたい。物語でしか聞いたことがない、まだ一度もみたこともない、太陽の光の輝く、あの眩しい、きらきらとあらゆる生命が光り輝く世界に行ってみたい。

 そんなことを、生まれて十五年の歳月がたった地下の流刑地に生まれた女の子、ホラーは思って、真っ暗な空を見上げた。

「なにさぼってんの。ホラー。さっさと穴掘らないと、お昼ご飯抜きになるよ」

 そう言って、一緒に隣で死者たちを埋める穴を掘っていた友達のメロディがホラーにそんなことを言った。

 性格は強気だけど、根は真面目はメロディは、ホラーと違ってせっせと(ノルマを達成するために)死者たちを埋めるための穴を掘り続けていた。

「メロディ。私と一緒にここから逃げよう」とホラーは言った。

「いやだよ。だって、ホラー絶対に途中で諦めるもん」とメロディはスコップを持つ手を動かしながら、にっこりと笑ってホラーに言った。

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