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しばらく歩いていくと森の中に変な建物が建っていた。小屋と表現するには少し大きい。その建物の目の前までたどり着いたとき、それが『駅』であることがわかった。看板などはなかったが、二両編成の古風な列車がそこに止まっていたからだ。大地の上には森の奥に向かって、線路もきちんと引かれている。
夏はあきれて声が出ない。確かに遥の趣味っぽくはある。その列車と駅の見た目は、まるで遊園地にあるアトラクションの乗り物のようだった。そのおもちゃのような造りをした駅と列車を見て、夏はさっきから感じていた違和感の正体がようやく理解できたような気がした。これではまるで遊園地だ。夏は自分が遥の秘密の研究所を探していて、いつの間にか全然見当違いの場所に迷い込んでしまったような不思議な気持ちになる。
……ここは間違いなく人工の世界だ。自然と似ているけど、まったく違う。自然を模倣しているだけの世界。細部に至るまで、あらゆるところに人の手が入っている。
夏は駅の中を一通り見て回る。
全体としては落ち着いた雰囲気のある綺麗で美しい造形をした駅だが、余計なものはなにも置いていない。自動販売機もゴミ箱も休憩用の椅子もない。説明書もないので使いかたもわからない。
じっとしていてもしょうがないので、とりあえず列車に乗ってみる。
線路は森の奥に向かって一方にしか伸びていないし、……運転席はこっちかな? 夏は列車の中を歩いて、先頭車両の一番前の場所まで移動する。