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 夏は寝袋の準備をした。遥の研究所がどんな場所なのか、情報規制がかかっていてうまく想像できなかったため、一晩くらいなら夜を過ごせるだけの荷物をあらかじめ用意してきたのだ。

 寝袋だけではなく、リックサックの中には銃も入っている。できれば使いたくはないが夏はいざとなれば人を撃つ覚悟をすでに決めていた。寝袋を用意しているとき、夏の白い指が冷たい銃の表面に触れる。

 夏は遥のベットに腰をかける。久しぶりに再会した遥はまったく変わっていなかった。相変わらず子供のままで、もしかしたら一生大人にならないのかもしれない。

 永遠に無垢で綺麗で美しいままなのかもしれない。汚れない。夏のいる地上まで遥は一生降りてこないのかもしれない。遥にとって大地とはただの風景に過ぎない。夏が空を見上げるように、遥は空から大地を見下ろしている。ただの風景としてそれを見ている。

 だからそこで生きる人たちの姿なんて空を飛んでいる遥には認識することができないのかもしれない。それでは存在していないのと同じことだ。

 遥は私の姿をちゃんと認識してくれているのだろうか? 私は遥の姿をちゃんと認識できているのだろうか? 

 わからない。……怖い。

 なんだかとても不安になる。

 遥はなにも変わらない。変わっていくのは私だ。遥じゃない。

 私はずっと子供のままで居られない。私は成熟しようとしている。自分の意思と反して、体が勝手に大人に変化しようとしているのだ。……私の心を置き去りにして。

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