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世界には真夏の太陽の照りつける明るい光が溢れていた。
みーん、みーん、という蝉の鳴き声も聞こえる。
二人はその額や頬に汗をかいている。
『本当に毎日、暑いですね。さなぎちゃん。そこにある木陰に移動しませんか?』と雪のような妖精さんが言う。(さなぎは妖精さんの言葉通りに木陰に移動をした)
それからしばらくして、約束の時間に少し遅れて、のはらが二人のところにやってきた。
「ごめんなさい。森の中でちょっとだけ迷ってしまって、少し遅れちゃった」
二人の前に来て、のはらは言った。
のはらは相変わらずとても綺麗な女の子だった。
その腰まである黒い髪の毛をストレートで流していて、シンプルな白いシャツに、緑色の(膝の見えるくらいの丈の)スカートを履いている。
足元は前と同じひまわりの絵柄の入った白いサンダルだった。
「のはらでも森の中で迷ったりするんだ。この森ってそんなに深いの?」
のはらのすぐ近くに立ってみらいがいう。
「うん。結構深い。私もそんなに森に詳しいわけじゃないから、暗い時間だったら、きっと森から出られなくなったりとか、しちゃうかもしれない」
のはらがいう。
「危ない森なんだ」
「まあ、それなりに子供は危ない森だと思う。大人なら、たぶん、大丈夫だとは思うけどね」
さなぎのことをちらっと見てから、のはらは言う。
さなぎはみらいとのはらと一緒に森を抜けて木原家までやってきた。
(途中のお花畑を見て、みらいは「すごい!!」と言って、とても感動していた)
のはらとみらいはその道中でずっとお話をしていた。
(二人はずっと昔からの親友のように仲が良かった)
さなぎはそんな二人のお話をみらいお姉ちゃんの隣を歩きながら、(いつものように)ずっと、じっと聞いていた。
「こんにちは。いらっしゃい。みらいちゃん。さなぎちゃん」
木原家にやってきた二人を見て、とても嬉しそうな顔をしてのぞみさんがそう言った。
のぞみさんはゆったりとした白い洋服の上に、料理用のエプロンをつけている。
(どうやらお昼ご飯を作っていた途中だったようだ)
さなぎとみらいは「おじゃまします」と言って、木原家に上がると、そのまま家の中を歩いてのはらの部屋まで移動をした。
そこで二人はのぞみさんが作ってくれたお昼ご飯をのはらと一緒に三人で食べた。
のぞみさんが作ってくれたお昼ご飯は、白いご飯にお味噌汁。卵焼きと唐揚げだった。
飲み物は麦茶で、それはどれもとてもおいしかった。(麦茶を飲んでみらいもさなぎと同じように、美味しい、と言って驚いていた)
その間も、ずっとお話をしているのはみらいとのはらの二人で、さなぎはほとんど口を閉じて、ただずっと黙っていた。(話しかけられれば答えるけど、自分からはお話をしなかった)




