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さなぎが自分のお家の電話番号をのぞみさんに告げると、のぞみさんは電話をするために、のはらの部屋をあとにした。
それからのはらは、「ちょっときて、のはら」とのぞみさんに呼ばれて、自分の部屋から出て行った。
そうして、のはらの部屋の中にはさなぎと妖精さんの二人だけになった。(のぞみさんが来るとき、妖精さんはいつの間にかその姿をのはらの部屋のどこかの物陰にひっそりと隠していた。どうやら妖精さんはまだ自分のことがのぞみさんに見えるのか、自分の声がのぞみさんに聞こえるのか、その確信を得ていないようだった)
さなぎが妖精さんとお話をしながら、のはらの帰りを待っていると、少ししてふすまが開いて、そこからのはらが部屋の中に戻ってきた。
「さなぎちゃん。じゃあ、名残惜しいけど、今日はもう遅いから家に帰ろう。さなぎちゃんの家まで、私とお母さんで送っていくよ」とにっこりと笑ってのはらは言った。
そののはらの言葉を聞いて、さなぎは「わかりました」とのはらに言った。
それからさなぎはのはらと一緒にのはらの部屋を出て、最初にいた縁側のところまで戻ってきた。
そこで靴を履いて、のはらと一緒に外に出る。
すると、向こうからのぞみさんがやってきた。
のぞみさんはさなぎを見て、「家まで送っていくよ。さなぎちゃん」と言った。
さなぎはのぞみさんを見て、「ありがとうございます。のぞみさん」とその小さな頭をちょこんと下げた。
(その間、妖精さんはさなぎの服の中にその姿を隠していた)
それからさなぎはのはらとのぞみさんと手をつないで、(二人に挟まれるようにして)土色の道のうえを歩いて、自分の家まで帰ることになった。
その笑顔の三人の姿は、どこかとても仲の良い『本当の家族』のようにも見えた。




