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丸い形をしたテーブルの上には料理と一緒に、最初に遥の部屋に入ったときには置いていなかったミルクと角砂糖の入った二つの小さな瓶が置いてあった。それを見て夏はコーヒーに角砂糖を二つ入れる。それから夏はコーヒーを一口飲んだ。コーヒーはとても暖かい。
テーブルの上の料理は二人分用意されている。それは遥の分と夏の分だ。
「照子の食事はいいの? ご飯は食べなくても、薬は飲ませるんでしょ?」ちょっとだけ気になったので聞いてみた。遥はエプロンをとって席に着く。
「さっき飲ませてきた。部屋でいい子にしてたよ。誰かさんと違って勝手に出歩いたりしないんだ」遥は夏の顔を覗き込む。だんだんと夏は恥ずかしくなってくる。顔が赤くなっていくのが自分でもわかった。
「もう帰ってこないかと思った」
「私は黙っていなくなったりしないよ。誰かさんと違ってね」真っ赤な顔の夏は笑う。会心の笑みのつもりだったが、遥は含みのある表情をして微笑んでいるだけだった。
晩御飯の献立はご飯、お味噌汁、焼いたお魚、肉じゃが、卵焼き、サラダ、ほうれん草のおひたし、厚切りにした大根の煮物だった。飲み物は二人ともホットコーヒーだ。こうしていると学園で一緒にご飯を食べていたことを思い出す。あのころの私たちはいったいどこに消えてしまったんだろう?




